作品タイトル不明
仲間行方
声がデカかったか⁉ と周りを見たが反応はない。
外套の男は周囲の感謝の声で聞こえてなさそうだから分かるが、近くの連中はもうちょっとなにかしらの反応があって然るべきなんじゃねぇのか?
そんな疑問もよそに、
「この空間はなんだ?」
「助けに来てくれたんだな⁉」
急いで壁沿いに移動しながら話す。
「これは望福教の集会か? あの光景は前からああなのか?」
「監視室を見つけて来てくれたんだな。監視は無力化した後か?」
「あの前に陣取ってる連中はなにをあんなに感謝してるんだ? ここで、そんなに大層なことが起こったのか?」
「ここを出るなら急いだほうがいい。奴ら、なにかを始めるつもりらしい。しかも、今日がその実行日かもしれないんだ!」
「まずは落ち着いて会話をしたらどうだい? 焦ってもいいことはないと思うけれどね?」
壁際まで到着したところで背中をもたれさせたジーナが言う。
「まぁ・・・」
「・・・そうだな」
久々の再会に顔を見合わせる余裕すらねぇとは。
「それで、なんだったか・・・今日がどうとか言ってたな?」
「それだ! あの外套を纏った連中が話してるのを聞いたんだ。多分昨日のこと。明日実行に移すとかなんとか」
「まず、多分昨日ってのはなんだ? 正確じゃねぇ理由は?」
「ここには時計がないんだ。外の景色も見えないし、偶発的にこの集会で呼び出されるせいで時間の感覚がおかしくなる。俺にはもう今日が何日なのかもわからないくらいだ」
「それでか・・・周りの反応が薄いのも」
「神経がおかしくなってるせいもあるだろう。まぁ、なにかしらの魔法も使ってるんだろうけれど」
「あの集会の目的はなんだ?」
「勧誘だ。望福教へ入信すれば願いが叶う」
「前列の連中は入信した結果、ああなったと?」
「そのはずだ。こんな隔絶された空間で欲求が溜まれば、靡いてしまっても無理はないさ。望めば外出も許可されていたみたいだから。妻子持ちは特にだろう」
「家庭があれば、1人引っ張れりゃ残りも芋蔓式だろうからな。その様を見せつけて友釣り狙いってわけか」
「実際、居住空間の快適性も向こう側に近い方がよくなっていくみたいだ。食事なんかも変わるんじゃないか? 匂いだけでは判断しきれないが」
「匂いってのがまたきついな」
「ああ、想像だけで腹が減ったよ。だが、お前が来てくれたんだ。そんな生活ともおさらばできる。監視室の様子はどうだった? さっきも言ったが、ここから出るのは急いだほうがいいぞ。表でなにが起きるかわかったものじゃないからな」
「それなんだが、監視室は素通りしてきた。つーか、ここまで忍び込んできたようなもんだ」
「なんでそんな⁉ この空間は監視されてるんだぞ⁉ このままじゃ――」
「こっちも色々あったんだよ! お前の書置きは監視室としか書いてねぇし、手帳は役にたねぇし‼ 軍の宿舎へ忍び込むために、いけ好かねぇ軍服にまで袖を通したっつーのに、半端な情報だけ残しやがって‼」
「どうしてだ‼ ダンデ将軍の様子の変化やその時期、暗号の手紙なんかについても書いてあっただろ‼」
「全部内容が薄いんだよ‼ 核心部分を書いておけよ‼ それが無理でも、せめて日付ぐらい書いておけ‼ 春の気配だとか風だとか花だとか、しゃらくせぇんだよ‼ 細かく知るか‼ そんなもん‼‼」
「なっ⁉ べ、別にいいだろ‼ 手紙にだって使うんだから‼」
「お前は自分の手帳で誰に挨拶するつもりなんだ‼ 帰ったら手帳を見てきっちり日付を当ててもらうからな‼ 1日でもズレててみろ! ぶん殴ってやるぞ‼」
「楽しそうな約束をするのはいいんだけどねぇ? そろそろ私にも関係のある話をしてくれてもいいんだよ? もう暇で暇で・・・」
やれやれと肩をすくめるジーナが鬱陶しいが、言い争ってる場合じゃねぇのは確かだった。