作品タイトル不明
客間の失態
「ようやくですか・・・・・・」
そう言って振り返ったのはゴーリス。
どうやら誰かが部屋へ入って来たらしい。それに合わせて出迎えるように立ち上がる。
ここで俺は思い切って、広げていた魔力を納めてみる。
「様子はどう?」
「ふむ。そうですな。確認しておきましょう」
視界の端に外套の裾がチラつくものの、視線は動かせねぇ。
「いやはや、こうなってしまっては、どんな人物でもお終いというもの」
立ったまま体を倒して覗き込んでくるゴーリス。
俺の顔の前で手を左右に振ってなにかを確認しているようだ。
なにか、じゃねぇか。
確認してるのは恐らく、意識の有無。
さっき割れたのは精神操作を跳ね除ける魔法道具で違いねぇ。
だから俺は、気合いを入れて無視を決め込む。この瞳に虚空を映してまで。
それが正しい反応なのかはわからねぇが、下手に反応するよりはマシだと信じるしかねぇ。
「おかしい。反応がない・・・失敗した? ううん。魔力を展開してたから、掛かりが悪かっただけかもしれない」
「この御2人が特別耐性が高いのかもしれませんね。特にそちらのマーラグ公爵は天才で通っているので」
入ってきた方はジーナの確認をしてるのか。
天才って言葉でいい気になって表情が緩んでねぇだろうな? と疑ったが、
「魔力の膜だけでなく、本人の耐性も含めるならば、ありえる話か」
指摘されてねぇってことは大丈夫なんだろう。
「それにしてもよく看破されなかったな?」
「ははは。私も直前でその危険性に気付いてしまって焦りましたが、どうにか間に合いましたな。不用意に視線を合わせてしまい肝が冷えたほどです」
「そうならなくてよかった。もしそうなっていたら、私達の立場は危うかった」
「貴方でもそうなのですか?」
「私など単なる捨て駒だ。この力がなければ利用さえもされなかっただろう」
そういえば、音がする直前にゴーリスとは目があったな。
危険性? 看破? それに力―――。
ここで言ってる力ってのは精神魔法のことでいいはず・・・ってことは、見破られたくなかったのは目的かやり方。
目的はまだわかっちゃいねぇが、それを単に従わせることだと仮定すりゃ、知られたくなかったのはやり方か。
とすりゃぁ探知魔法の方向性は良かったってことだよな?
その中で得られた情報、しかも部屋の外から来た魔法使いがそれを言うってことは、この部屋以外の情報。
待てよ? あの魔法使いが入ってくるまでの探知状況はどうだった?
思い出せ。
両隣に3人と1人。
コイツは多分1人の方から動いてきた・・・はずだ。
くだらねぇことで迷ってたせいで正確な情報が取れなかったのが痛い。
だがもし、そうであったなら――・・・なるほど。感応型か。
遠隔で魔法を発動させる方法の1つで、特に身体へ影響を与える魔法で使われる手法。それが感応だ。
やり方はいくつかあるが、今回の場合は、同じ状況を用意して対象・・・つまり俺達を挟み込むことで効果をズラして落とし込んだんだろう。
右の部屋から左の部屋へ掛けられるはずだった魔法を、その中間で発動させた。
にしても、いつ俺達の人数や座り位置を共有した?
事務局でそんな怪しい素振りはなかったし、道中も・・・なら部屋に入ってから? いや、それは流石にありえねぇか。だったらそれにこそ気付いたはずだ。
残るは部屋へ入る瞬間か。部屋の中に意識を取られ過ぎたってわけだ。
この部屋は突き当り。廊下は左右に続いていたし、なんなら部屋の前に立ってる奴もいたな・・・そういえば。
そこで俺達の人数を教えて、座り位置は誘導されたんだ。
ここまで綺麗に嵌められると認めるしかねぇな。
俺はこの准将を舐めすぎてた。
見た目や態度から、勝手に無能だと決めつけてたんだ。
けどまぁ、それほど敵の思惑通り進んだんなら、逆に好機と見るべきか。
乗れるとこまで乗ってやる。
その上で、こっちの目的を果たすまでだ。
ベルの捜索と不正の証拠を見つけてやる。