作品タイトル不明
side――ゴーリス2
まずは事務へと赴き、談話室の使用許可を得ます。
これだけでやることは周りへ・・・いえ、上層部へ伝わります。
そう、談話室の使用というのは一種の暗号。
不都合な事実を隠蔽したり、不祥事をもみ消すための処理を指します。
今朝方詰めかけてきた報道陣へも同じ対応をしました。
その方法とは精神魔法による短期的な記憶の消去・・・らしいのですが、詳しくは聞いていません。
それを知っているということ、それこそが不都合になってしまうかもしれないと考えたからです。
身を護る一番の方法は情報の取捨選択。
必要な情報を得、不必要な情報を遮断する。
自分の意志ではなく、誰かの意思に沿うのなら、余分なものは捨ててしまい従順な駒として責務を全うする。
そうして捨てられてしまった場合には、なにも知らずに利用された哀れな人間を演じればよいのです。
そうあれば無罪とまではならなくとも、減刑ぐらいは見込めるでしょうし、戦局さえ見極められたならば、情報を持って勝ち馬への乗り換えも視野に入れてしまえばいい。
責任だけは被らないように、要領よくやっていればいいのです。
この腹積もりを悟らせなければ、私は常に安全圏にいられる。
だから、誤魔化すことだけは得意になりました。
今も。
なにも悟られないよう、道中にある部屋の解説や、ちょっとした小話で意識を霧散させてもらいましょう。
各部屋の使用例など、部屋の名前を聞けばわかるようなことばかりですが、実例を出せば多少は興味も引けるでしょう。
軍は閉鎖された空間ですからな。
その中で珍事でもあれば笑いの種です。
おかげで、マーラグ公爵の方は男同士の友情話に引っかかってくれました。
ですが、もう1人の方は変わらず探知魔法を広げたまま。範囲も流動的で、移動にも合わせられるとは本当に手の込んだ魔法が使えますね。
こちらはそう簡単にはいかない様子。
マーラグ公爵の気を引けただけでも良しとしましょう。
どうにか談話室までの誘導を完了。
2人を中へ案内すると同時に。隣の部屋の前に待機していた魔法使いへ、3人で部屋へ入るという合図を送る。
対象の2人に気取られないよう、扉を閉めるために残った僅かな時間でだ。
配置も完璧。
私が扉側に1人。2人は並んで置く側に。
対面に座る男の圧力は辛いものがありましたが、察せられてはいけません。
ただ面白い話をするだけの、目的のない人物にならなくては。
私の目線、周囲の気配、部屋の壁や床、置物へ至るまで。
視線や魔法、あるいは魔力をもってして調べ尽くすその姿勢。
今朝の報道陣以上に。軍へ、もしくはこの施設への疑いを感じます。
それどころか、なにか――確証さえもを握っているかのような。
まずい!
もし、そうだとしたら!
両隣の部屋の気配まで読めるかもしれないのでは⁉
そのことに気付いた瞬間、急に身の凍るような怖気が襲う。
詳しくは知らないと言いましたが、この部屋の仕掛けは両隣の部屋が関係しています。
それに気付かれては私の演技など‼
話の途中、なんの関係もない瞬間に。
つい視線を男へと向けてしまう。
あまりにも不自然だったに違いない。
バレたか⁉ と思った丁度その時、背後からなんらかの音が‼