軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

民間を賑わす噂

重要な仕込みのために1日を費やし、その翌日に。

「さぁ、中を案内してもらおうか?」

俺は縄で縛ったジーナを引き連れて、軍の施設の前で交渉していた。

「ですから、無関係な人間の立ち入りは禁止されております。なので我々は、学徒集団失踪の関係者として嫌疑にかけられているマーラグ公爵の引き渡しを要求しています」

「だから! 何日経っても、コイツを捕まえられなかったお前らを信用できねぇっつってんだろ? そもそもコイツがどこに隠れてたか知ってんのか? 屋敷の地下だぞ? 舐められてんだよ。お前らは‼ その程度でも捕まりゃしねぇってな‼」

ここではハッタリを効かせてまで大きく前に出る。

ジーナが居たのは研究所だが、マーラグ邸の地下にはそこへ繋がる転移扉がある。だから、半分は嘘だが半分は本当っつー状態になり・・・実に使いやすいハッタリと化す。

そしてそれを突き付けることで、相手に自分達の無能さを自覚させつつ、それを理由に譲歩させようっていう交渉を仕掛ける。

注意点としては、相手に反論の機会を与えないように大きく前に出ること。

特に、この場にいる番兵はその場での決断権を持たないからな。

話と態度を大きく見せることで、上役を呼ばせるのが目的だ。

なにせ、今の軍は士官のほとんどが出払ってる状態だ。

この程度の対応ですら、大物が出てくる可能性が高い。

そいつの状態を見ることで、精神操作がどこまで及んでるかの指標にもなる。

「こちらは捜索へは参加していませんので、そのように言われる筋合いはありません。それに、拘束している対象に逃げられるようなこともありませんので、ご安心を!」

「ほう? 拘束してりゃ安心ってか? それはコイツが魔眼持ちだって知ってて言ってんのか?」

「なッ⁉ 魔眼ッ⁉ でしたら、目隠しをしていただかなければ‼ この程度の拘束では、拘束とは言えないでしょう‼」

「俺にとってはこれでも十分拘束になるんだよ。それに、そんな見た目の奴を連れてここまで来いって? 余計な噂になったらどうしてくれるんだ? 生憎、そんな趣味は持ち合わせちゃいねぇぞ?」

「拘束されたまま目隠しで散歩だなんて・・・酷く倒錯的だねぇ。いや、君が望むなら私は受け入れてみせるけれど、やってみるかい?」

「余計な口を挟むな」

「なんだい。連れないねぇ・・・」

「本当にその趣味はないのか? どうにも乗り気なように見えるのだが?」

「捕まってる奴からの、せめてもの嫌がらせに決まってんだろ。くだらねぇ噂が広がったら迷惑するってのはお前らにも良くわかるだろ? 絶賛、この施設への侵入者が噂として出回ってるんだからな」

そう、今現在は昼過ぎ。

動くならもっと早く朝一番で――と思うのは誰でもで。

俺達が今こうして昼に交渉してるのは、朝に別の騒ぎがあったからだ。

「冒険者ギルドの方でもその話で持ち切りだったぜ? 軍の再編成は失敗した。施設への侵入にも気付けず、しかも侵入者を取り逃がすどころか、その正体すら掴めなかったってな。ご自慢の警報装置に至っては誤作動まで起こして、信じるに値しないと朝から大変なこった」

「そ、それは・・・―――ッ⁉」

「おかげで、こうして下手人を届けるのも昼になっちまったってのに、その迷惑を個人へ押し付けるつもりか? えぇ?」

「い、いいや! その話は全くの出鱈目だ‼ 貴様こそ! そのようなくだらん噂をどこで聞いた‼ 誰から聞いた‼ 風説の流布は国家転覆を計画した罪で厳罰になるぞ‼ 元凶を知っているのなら早めに白状することだ‼ そうすれば罪も軽くなるだろう‼」

「聞いた場所は冒険者ギルドだが、誰からかなんざ覚えてねぇな。さっきも言った通り、その話で持ち切りだったんでな。言うなれば全員だな。それもギルドの中だけじゃねぇ。皇都中で大騒ぎだ。で? 誰を罪に問うって?」

「私もいい加減この格好のままなのは困るのだがね? その気がないなら帰らせてもらいたいんだが?」

「そのようなことが許されるわけがないだろう‼ わかった、もうしばらく待て‼ 上官に確認する」

そう言って、近くに居たもう1人に応援を頼み、上官を直接連れてきてもらうようだ。

「早くしろよ」

「そうだね。私にも予定というものがあるんだ。つまらない尋問に付き合うために時間を浪費されてはたまったものじゃないからね」

俺達はその背中を見送りながら、大物がかかってくれることを願っていた。