作品タイトル不明
長々とした確認
休みが開けて、領都セイルスルーから北西へ馬車で丸1日の移動。
翌昼過ぎには目的の村へ到着した。
「気分の悪い奴は居ねぇな? 居たら申告しろよ。後になって、実は・・・とか言いだしても、どうにもできねぇぞ。大丈夫だろうな?」
少しざわつくが申告はなし、チラホラ大丈夫という報告が聞こえた。
一応。横目に女教師の方も確認するが、特に異常はなさそうだ。
「これからこの村で世話になる人のところへ挨拶に行く。わかってるな? 初対面時の印象は重要だ。貴族らしく面子は大事に。品格を被っていくぞ」
「らしくない台詞ですね。似合いませんよ?」
「態度なんてのは使い分けてなんぼだ。お前が俺の態度を悪いと感じるなら、お前にその価値がねぇってだけだよ」
「・・・本当に、そういうところが気に食わないんですよ」
「そりゃぁ結構だ」
茶々を入れるライザードを黙らせつつ、村長の下へ。
正直、ここが一番の正念場だ。
俺達みたいな子供連れがモンスターの討伐に来た・・・なんてのは、相手にとっちゃ悪い冗談だからな。
説得できなけりゃぁ門前払いもあるかもしれねぇ。
学園から話がいってるっつっても、まさかこんなのが来るとは思ってねぇだろうしな。
村の裏口側から村長宅へ。
あまり人気のない道とは言え、これだけぞろぞろ並んで歩いてりゃ注目の的だ。
そんでもって、こういう田舎は伝達が速い。
俺達が村長宅に付くころには、
「あなた方が、モンスター討伐のために来た学生・・・ということで間違いありませんかな?」
村長らしき人物にも面は割れていた。
「その通りだが、そちらは?」
「失礼。私はこの村の村長をやっております。名前は――まあいいでしょう。何か用があれば村長とお呼びください。しかし・・・」
俺の後ろを見る目が予想通りが過ぎる反応を示す。
っつーか、予想外だったのは村の様子だ。
思ったりもゴブリンの被害に手間取ってるのか? あまり活気を感じられなかった。
「そうか。では話が早いな。ゴブリンの討伐だが、奴らの情報はどれぐらいある?」
「まだ住処を見つけたところです。規模についてはなにも・・・」
「ならば村の被害は?」
「家畜と作物。後は子供が何人か行方不明になっていまして・・・」
行方不明。この村の雰囲気はそれが原因か。
「最初の被害はいつだ?」
「確実なものでしたら半年ほど前でしょうか。それ以前にも家畜や畑が荒らされてはいましたが、そっちは獣の可能性も・・・」
「この辺りにはそんな獣が居るのか?」
「ええまあ、なにせ片田舎ですから。何種類かのモンスターは村の近くにも現れます」
そっちについては後で調べるか。
ゴブリンと共生されていると横槍が入るかもしれねぇ。
「この村にハンターは?」
「今は居りませんで」
「怪我か?」
「年齢によるものです」
「それは仕方あるまいな。後任は来ないのか?」
「領主様にお願いしてはおるんですが、やはりすぐには・・・」
ハンターが居るなら周囲の地形やモンスターの分布も知ってるだろうし、確認するとして。
気になるのは・・・、
「ゴブリンの被害が半年も続いているのにか?」
「いえ、引退自体はつい先々月の話でして。ゴブリンの住処を見つけたのも、その村付きなのですが。根絶やしにできるほどの気力はもうないとのことで。村への被害については今も、抑えるよう協力してくれては居るんです」
「なるほど。最後の仕事にするつもりだったが、手に負えないと判断したか」
「そんなところになります」
大体の状況はわかったな。
他のところがどうなってるかは知らねぇが、少なくともこの村の問題は昨日今日のもんじゃねぇ。都合よく作られた話じゃなさそうだ。
かといって、長年放置されてたってわけでもねぇ。
精々半年――・・・さらに言えば、本来なら領主が領軍でも動かせばいいだけの話。
南の辺境伯か、あるいは辺境伯を動かせるほどの人物が裏で噛んでれば、誰かの思惑って線も残る。
だが、その線は薄い。
なぜなら、ここの領主は帰属意識が高いからだ。
皇王陛下への忠義に厚いと言ってもいい。
抱き込むのは難しいだろう。
まぁ、これだけわかれば一先ずは置いておこう。
さしあたっての目標はやはり、俺達の存在を納得させることになる。