軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法実技の授業:急

俺の問いに困窮したのだろう。

ライザードは次の言葉を発せずにいた。

そこへ、

「でも、なんで叔父さ――先生の魔法は消されなかったの?」

バロンが助け舟を出すように聞く。

「見てろ」

その謎をわかりやすく可視化させるため、適当な小石を拾い上げて投げる。

狙ったのはさっきの的ではなく、その隣にある起動しっぱなしになっていた的。

俺が投げた小石は寸分違わず狙いの的へと吸い込まれ――・・・けれど、吸収されることなくコツンと当たる。

ただし、小石を軽く投げたに過ぎねぇ以上、的が落ちることはない。

「なにをしたか・・・わかるか?」

「・・・誘導の魔法」

呟いたのは、真隣にいたライザードの方だった。

「そうだ。外れたらなんの意味もねぇからな。魔法の力で誘導した」

「そっか。魔法は吸収されるけど、石は吸収されなかったってことは、魔力で作ったものにしか反応しないんだ・・・!」

それらを見ていたバロンが確証を得る。

「そういうことだ。あの石に掛けた魔法も、的に中たる前には吸収されてた。ただ、それだけで勢いまで消えるわけじゃねぇから、石は中たったんだ」

「つまり、さっきの魔法も・・・」

「ああ、ここからじゃ見えねぇだろうが、あの盛り上がった地面の後ろは抉れてる」

もう少しわかりやすいように前か左右の土を移動させれば良かったのかもしれねぇが、癖で種が割れ辛い方法を選んじまった。

教師をするなら、この辺は修正していった方がいいのかもな。

「それなら、初めからそうやって説明してくれればーー‼ そうすれば殿下だって・・・・・・‼」

バロンの言いたいことはわかる。

だが、

「そんなことを敵がわざわざ教えてくれるのか?」

「ッ⁉⁉」

幾ら授業といえど、なにからなにまで。与えるだけじゃ成長しねぇってのは実証済みだ。

それは俺だけのことじゃなくて、ブロンソン教官やグレアム教皇、先達の冒険者達。もしかするなら、ゴルドラッセや御父上だって、そうだったのかもしれない。

自分の知り得る知識や経験を教えるだけで、押し付けるだけで十分だと。そう思っての結果が、決して思い通りにならなかったことなど。数えるほどで足りるだろうか?

少なくとも俺はそれを失敗と呼ぶし、その数も数えきれねぇほどにはある。

だから、相手に考えさせることをやめはしない。

「人間にしろ、モンスターにしろ、その特徴や特性を敵に教える奴なんざ、そうは居ねぇ。ならどうするか? っつーと、自分で観察して、予測して、試して、確かめる。そうやって道筋を作るんだ」

「でも! 軍でも敵勢力の兵装や、その性能は調べるし、その内容も伝達するよね⁉」

「それをやらなかったのはお前ら自身だろ? 魔法実技とはどういった授業なのか、なにを使うのか、その道具の特徴や性能はどうなっているか。一つでも俺に聞いてみたか?」

「それは・・・聞いてない、けど・・・」

「軍の作戦会議でも参加者からの質問には答える。それが一兵卒であってもだ。時間がない場合や強行作戦でもなければ、だけどな。それで? 今回はそんな切羽詰まってたのか?」

「そんなことは、ないです・・・」

「そうだよな? 特にバロン。お前とライザードに至っては、俺より早くこの魔法実技場に来ていたはずだ。その間にあの魔法道具について調べられるだけの時間はあった。準備をしている俺に質問する余裕もだ。そうでなくとも、事前に知る方法ぐらい思いつくだろう。怠ったのは俺じゃない。面倒なことをやりたくはねぇが、意味のねぇこともやりゃしねぇんだ。自分になにができるのか。そう考えることをやめるな。どんな時もだ」

「・・・はい」

そう言うとバロンは落ち込んでしまうが、最後の言葉はなんの皮肉か。俺がゴルドラッセに言われ続けた言葉でもある。

バロンにはそんな経験がないようだが、ここで同じ思いをするなら一緒だったな。

「あのー・・・だったら、他にもあの的を落とす方法ってあるんだよね?」

おずおずと手を挙げて発現するのはエイラス。

「当然な」

「それなら、その方法を教えて欲しいなぁーって・・・思うんだけど、ダメなのかな?」

「それを考える授業だって、言ったつもりなんだがな?」

「でもでも! さっきの話だと、俺に聞け! って言ってるような気がしたんだけど‼」

そうだったか? と、振り返ってみるが・・・、

”一つでも俺に聞いてみたか?”

”軍の作戦会議でも参加者からの質問には答える”

”怠ったのは俺じゃない”

確かに、そう取られても無理はないのかもしれねぇ。

「それで? なにが聞きたい?」

「えーっと・・・全部‼ です‼ 先生が思いつく方法‼ 全部教えて‼」

少しだけでも譲歩したのは間違いだったか・・・まさか、そこまで顔の面を厚く、業突く張りになるとは――流石は商会関係者の娘ってところか?

とはいえ、この満面の笑みで迫られて、やっぱ無しってのも非常にダセェ。

「はぁ・・・仕方ねぇな。今回だけだぞ」

ここは折れる他にない。

魔法を自由に使うための想像力を養わせたかったんだが・・・やっぱそう上手くはいかねぇか。つくづく子供の相手は苦手だと思い知らされる。