軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法実技の授業:実践1

取り敢えず迫り上げた地面を戻し、的を浮かせてから実践開始だ。

「まずあの魔法道具の吸収機能についてだが、魔力障壁のことは知ってるな?」

ほとんどの生徒達が頷く中で、数人が俯いたり視線を逸らす。

「・・・一応説明しておくと、魔力そのものを壁のように展開する技術のことで、練度を上げればその形は自由自在。布のように薄くたなびかせることもできれば、教室のような空間全部を埋め尽くすこともできる。誰にでも使える魔法の一種だ」

属性を付与しねぇ魔法は基本的に誰にでも使えるとされる。

まぁ、魔力量の少ない俺みたいなやつには空間を埋め尽くすような使い方は出来ねぇがな。

「障壁の名の通り、効果は主に防御だ。魔法に対してぶつけることで、威力の減衰・消失を可能にする。あの魔法道具にはこの魔力障壁を発動させる機能と、同時に魔法が消えた時に出る残留魔力を吸収する機能が搭載されてる。だから、弱い魔法が吸収されるんだ。それを突破するには、魔力障壁を貫通させるか、飽和させるか、無視するかが手っ取り早い。さっき見せた方法は無視した場合になる」

「2つ! 質問があるんだけど、いい?」

人差し指と中指をビッ‼ と突き立てながら手を挙げるエイラス。

「1つ! 残留魔力? を吸収する機能はどうやってるの? 2つ! 魔力障壁は物理的にも干渉できるよね?」

「魔力の吸収は魔法道具の中にそういう特性を持つモンスターの素材を入れることで可能にしている。それを使えば人間でも近いことはできるが、道具と比べて効率は落ちる。魔力障壁の物理干渉には強く意識する必要がある。道具には不可能といっていい」

「効率が落ちる理由と、それがあんまり知られてないのはどうして?」

「俺は研究者じゃねぇから詳しくは知らねぇが、本来生物は他者からの侵食を嫌う性質を持ってるらしい。魔力の吸収はそれに該当するようで、それが邪魔になるとか、そういう話だったはずだ。周知されてないのは道具にしても吸収量がそれほど多くねぇからだな。そこから効率まで落ちるとなれば、実用に向かねぇだろ?」

「じゃあじゃあ魔力障壁の方は?」

「道具に想像力があると思うか? 干渉する素材、形、勢いまで計算できるか? ましてや、それが間に合うとでも?」

「でも魔法盾があるよ?」

「あれは装備してる人間の魔力を使って魔力障壁を発動・強化する道具だ。内蔵した魔力を使うあの的には出来ねぇよ。それに、魔法盾には装備してる人間の意識も反映されるしな」

「あー・・・そっか、ありがと‼」

話が腑に落ちたのだろうエイラスは、うんうんと頷いて退く。

「じゃぁ続きだな。なんでわざわざ魔力障壁の説明なんぞをしたかっつーと、この貫通って手段を取るには、魔力障壁の性質をよく理解しておく必要があったからだ」

「なぜ、そのような必要があるのか――ご説明いただきたいですわ!」

今度はビューディーが手を挙げる。

そういえばいたな。ここまで存在感が薄かったのは遠慮しでもしてたからか?

「すでに説明したように魔力障壁は変幻自在だ。今回こそあの的を使うが、実際の戦闘では人間かモンスターが相手になる。その辺りを理解してねぇと、いざって時に間違える。それが最悪、死に繋がることだってよくあることだ。だからこそ、前提知識として理解と認識をさせておきたいんだよ」

「・・・・・・? よくわかりませんわ。あの道具とそれ以外とでは、どれほどの差があるのでしょう?」

「例えばだ。飛んでくる石ころを防ぐ時、布と板ならどっちを使う?」

「石・・・ですの? それは当然‼ 板ですわ‼」

「なぜ?」

「布より板の方が堅いからですわ‼」

「そうだな。飛んでくる石に対して、布を垂れ下げただけじゃ防げねぇかもしれない。だが、石がとてつもなく硬かったらどうだ? 同じ勢いでも板は割れるが、張り詰めた布なら受けられる」

「そ、そんなのは屁理屈ですわ‼ 後からなら幾らでも付け足せるではありませんの‼ それこそ‼ 石が尖っていれば布は破けますわ‼」

「それができるのが魔力障壁だ。相手の攻撃を見てから、なにでどうやって受けるのかを決められる。拳なら壁で、大砲なら砂山で、魔法を切り裂き、飲み込むことだってできる。攻撃する側は、それをどうやって出し抜くかを考えなきゃならねぇ。その結果が現代の魔法戦だ」

「より強大に、より複雑に、より精密に・・・ですわね。そう言われれば、納得もいきますわ。ですが、ちょっと待ってくださいまし? だとすれば、その貫通というのは・・・」

「時代に逆行した思想。あるいは前時代の遺物、だな」

「そんなものが本当に使えますの?」

「もちろん、場合によってな。見てろ」

人差し指と中指を揃えて伸ばし、的に狙いを定める。

指先には初級魔法。

属性は火。大きさは10分の1。

しかし威力は3倍以上。

煌々と輝く火種は俺の意思に従い、的へと奔る。

それを生徒達が興味深く、固唾を吞んで見守る中。

「―――ッ‼⁉」

不意に魔法は形を崩し、炎が尾を引き空を割った。

間もなくして、小さな火種は空と的へと突き刺さり、消える。

失敗かと思われただろう矢先に、空中に浮いていた的はこと切れたように地面へと落下。ガシャン! という断末魔を残して沈黙する。

ふぅ・・・と内心の焦りを隠してビューティーへと向き合う。

「どうだ? 使えるだろ?」

「美しいほどの魔法ではありましたが・・・尾を引く意味がありまして?」

その質問に俺はドキリとしながら、

「・・・壁まで壊すわけにはいかねぇだろ?」

焦って無理に魔法を崩した理由を教えた。