作品タイトル不明
私物のノート
ジーナと詰まらねぇやり取りをしながら、残された私物をあさってしばらく・・・扉の向こうから気配がするようになった。
「この件の関係者だと思うかい?」
「そんなわけねぇ・・・とは思うがな」
外に聞こえないよう絞った声量で話す。
「折角の2人切りだというのにね」
「収穫はあっただろ」
「そうだね。君が意外にも強引だということが――」
「ほざけ。こっちのことだ」
俺はふざけるジーナに手に持ったノートを突き付ける。
中身はとある教師の日誌。
しかもこれは1人の手で書かれたものじゃなかった。
今ではとっくに辞めさせられ、この学園を去った教師の書き残した内容も記されていたのだ。
その記録は途中で一度途絶え、しかしこのノートを見た別人によって書き足されており、多少なりとも学園の変化について触れた内容となっていた。
まぁ、その書き足しも途中で途絶えているのが気になるが・・・。
それでも、決して長いとは言えない探索時間で手に入れた情報としちゃぁ十分だ。
ノートを背中とベルトの間にしっかりと挟んで扉と向き合う。
「開けるぞ?」
そう言ってジーナに視線をやれば、どうぞと手を差し出して見せる。
なにが出てくるか、わかったもんじゃないが。
戦闘なら俺が、言い訳ならジーナがやればいい。
1人や2人相手に手こずることもないだろうと、意を決して扉を開く。
そこにいたのは――。
「お前ら、こんなところでなにやってんだ?」
変な姿勢で固まったライザードとバロンだった。
「「―――・・・・・・」」
2人は言い訳でも考えているのか、姿勢は変なままに視線だけを泳がせる。
「ふむ。変わった姿勢をしているね? なにか意味でもあるのかな?」
後ろからひょっこりと顔を出すように覗き見るジーナが可笑しそうに尋ねると、2人はお互いに見つめ合い・・・ゆっくりと姿勢を正す。
「・・・いえ、先程は感情に任せて飛び出し、些か不格好な姿をさらしましたが、やはり気になることがあり話をしようと――先生を尋ねに戻ったにも関わらず、そこに姿はなく。しかして、その姿を見かけたが故、後を追い、声をかけるべきかを悩んでいたまでで。特別に、これといった事情はありませんよ。ええ、まったくありません。先程の姿勢も、思い悩んだ時に自然とそうなってしまっていただけのこと。意味を問われても答えかねると言うものでしょう」
長々と早口で捲し立てるように言うライザードとは対照的に。
「・・・叔父様! そっちの部屋を、見てもいいかな?」
おっかなびっくりといった調子で申し立てるバロン。
なんだ? と思いながらも。
大丈夫か? とジーナを見ると、構わないよと身振りで返す。
「別に構わねぇが、荷物が積み上げられてるからって触るなよ? 崩れてきたら怪我するからな」
「う、うん・・・」
するとバロンは壁を盾にするように怖がりながらもソーっと中を覗き込む。
そして、しばらく中を見てから、
「・・・・・・良かった。なにもないや」
ホっと一息に胸を撫でおろした。
いったいなにが? と疑問は消えねぇが、時として子供の想像は及びもつかないことがある。
だから、考えるだけ無駄なのかもしれねぇな。
「で? 話ってのはなんだ?」
「――ッ!」
僅かに数秒ライザードは困惑したように硬直し、
「・・・急に声をかけられたせいで忘れてしまいました」
などとボケたことを言う。
そうなのか? とバロンに視線で聞いても、
「僕は、その・・・ただの付き添い――だから・・・!」
シラを切られるだけだった。
ただ、後ろで声を殺しながら腹を抱えて笑っているジーナだけが鬱陶しく。
「今日のところは引き上げます。君! 行きますよ‼」
「待ってよ! 殿下ぁ‼」
2人連れだって部屋を出ていく子供達を見送る。
殿下呼びなのが気になるものの、仲良くはなれたようでなによりだ。
それが成長に繋がってくれりゃぁ言うとこはないんだが――なんて、思っていたところへ。
「ですがこれだけは言っておきます! 時と場所は選んで貰いますから‼」
部屋を出て言ったはずのライザードが体半分を乗り出し、指を差しながらそれだけ言い残していった。
同時に。
なにかの限界を迎えたのか、ジーナが噴出して崩れ落ちた。