作品タイトル不明
妄想のデート
「保管してるっつー私物は?」
「まったく。君はノリが悪いね? もうちょっと、その気になったような反応を見せてくれたって構わないじゃないか! 私だって傷付くんだよ?」
「だったら、やらなきゃいいだろうが」
「そうもいかないのが乙女心というものだよ。こっちへ来たまえ」
学園長室の中にあった扉から隣の部屋へ。
廊下側には扉がなかったはずなので、ここは外からは直接入れないようになっているんだろう。
「この積み上げられた荷物達が私物の山だ。好きに調べておくれよ」
「想像よりも大分多いな・・・」
「そりゃあ数十人の私物だからね。君が今使っている寮で暮らしていた人物も少なくなかったみたいでね。それも含めるともっとだよ?」
「そっちの荷物もここにあるんじゃねぇのか?」
「はは! あんなものが全部入るわけがないだろう? あの寮は今現在、君しか使用していない。ほとんどの部屋は失踪者が使っていた当時のままさ」
「っつーことは、帰ってもこれの続きが待ってんのか・・・」
「頑張りたまえよ?」
そう言い残して姿を消そうとするジーナの腕を掴む。
「どうして腕の掴むんだい?」
「どこへ行くつもりだ?」
「おかしなことを聞くじゃないか! 私は自分の仕事をするまでさ。これでも色々と忙しくてね・・・」
「ふざけろよ‼ ただでさえ迷惑な噂まで流されてんのに、面倒ごとまで全部押し付けるつもりか⁉」
「その面倒ごとは君の都合だろう⁉ 私には関係がないね‼ 生憎だけれど、私は神様を信仰してはいないのだよ‼ 愛されている自信はあるけどもね‼ この作業について、手伝う義理はないと言わせてもらうよ‼ 時間の無駄だからね‼」
「どうせ碌な仕事なんざしねぇんだから、がたがた言わずに付き合いやがれ‼ 時間の無駄にならねぇようにこき使ってやるからよ‼」
「付き合いの強制に、こき使うだなんて⁉ なにを言いだすんだい⁉ 君は‼ まさか本当にそういう趣味があっただなんてね⁉」
「わけわかんねぇこと言ってんのはお前の方だろうが‼ 嫌ってんならその石返せ‼ 迷惑な噂ごと返上してやるよ‼」
「なんてことを言うんだい⁉ これだけは渡さないよ‼ ドラゴン君とも約束しただろう⁉ なによりこんなに面白そうな研究物を‼ いや、それ以上に! これは君からの信頼の証‼ 私にはそれに答えなければならないという使命があるんだからね‼」
「なにが使命だ‼ 笑わせやがって‼ そんな気概があるんなら、こんなとこで学園長代理なんてごっこ遊びに興じてねぇだろうが‼」
「それは君のために―――いや、折角なら一緒に居たかった方がいいかななんて思っただけで別に・・・・・・ああっ! もうっ‼ わかったから手を離しておくれよ‼」
手首を掴んで壁に押し付けて睨んだ辺りで、ようやくジーナが白旗を振る。
顔が、とか。近い、とか。文句を言いながら押し退けようとしてきたが、研究が本職の奴に力負けするはずもない。
了解を得たところで手を放す。
「君は・・・なんというか油断ならないね? さっきはあんな風に言っておきながらその実、外から見えない部屋へ入るなり私を押さえつけ、あまつさえ自分の言いなりにしようだなんて・・・」
「もっとちゃんと言葉を選べよ。変態が」
「なにを言う! 外部から見ればこの状況は、日も高いうちから男女が2人密室で、汗だくになりながら押し合いへし合いをしているのだよ⁉ しかも噂になっている2人と来た。これはもうそうとしか見えないはずだ‼」
「外から見た場合について言ってねぇんだよ‼ この状況を楽しんでるように言ってんなって話だ‼ いまさら周りからどう見えてるかなんざ気にしてねぇんだよ‼」
「ほう? それつまり―――・・・」
「いいからさっさと手伝え‼ このやり取りが一番無駄だ‼」
「ふふ。やっぱり釣れないね? まぁでも仕方ない。しばらく2人きりだと思えば、そう悪くはないかもしれないしね」