作品タイトル不明
情報のソート
「どうだい? 初めて中等部に足を踏み入れた感想は?」
「別に大した違いなんざねぇだろ」
幼少部の校舎から、運動場、武道場、魔法実技場、室内水練場と超えた先にあった中等部の校舎。
通ってた当時には意識したことがなかったが、こうしてみると。それなりに隔絶されていたことに気が付く。
今がどうだか知らねぇが、当時の俺達は中等部からの干渉もよく受けた。
しかし、アイツらはこの道程を毎度歩いて抜けてきてたのかと思うと、しなくてもいい苦労をしてまで詰まんねぇことをしてたんだなと感心する。
「それにしても静かだな?」
「こっちはまだ授業中だからね。あんまり騒ぐと人が来るよ」
「騒がねぇよ」
代り映えしねぇ廊下を歩き、角を曲がり、階段を上って、学園長室へ。
「・・・こっちの教師は補充してないんだったか?」
「こっちも人員は足りなかったけれど、幼少部からの補充で間に合わせた、と聞いているね。そのあおりを受けて幼少部はそのほとんどが未経験者だ。多少なりとも教師の経験さえあれば、役職付きで採用されているはずだね。資料で確認したに留まるけれど、部長と副長は教師経験者だったよ」
それがどうかしたのかい? という顔でこっちを見てくるが・・・。
「さっき通り過ぎた教員室の机。隙間から見ただけだが、幼少部にあったのと同じだったなと思ってな」
「そりゃあ学園の備品だから同じものでもおかしくはないだろう?」
「ああ、だから違和感があったんだ」
「違和感?」
「俺達はついさっき確認したはずだ。机の裏に刻まれた印を」
「そうだね・・・って! そういうことか‼」
「そうだ。俺達は結論付けたはずだ。全員が同じ信仰心を持ち合わせていたと。つまり―――」
「こっちに残っている教師達も望福教の信者だということだ」
「その通りだ。だが、だとするとおかしいよな?」
「なるほど、確かにね。なぜ彼らだけがここに残っているのか・・・」
失踪事件には恐らく望福教が大きく関わっている。
軍部から消えた連中も、町から失せた連中も、人物像を追っていくと。それらしい証言が出てきてる。
それはこの学園でも同じ。
にもかかわらず、同じ信仰者でも失踪の時期がズレるのはなんでだ?
っつーか、失踪自体は今も続いてるんだよな?
もしかしすると・・・。
「狙われているのかもしれないね?」
「お前もそう思うか?」
「可能性の話だけれどね」
俺達は失踪事件について、望福教を理由に失踪者達が自らの意思で姿を消したんだと思っていた。
その理由はいくつかあるが、一度に纏めて失踪したことや、不正の記録など。都合の悪い情報が持ち逃げされていたことから、そう考えていた。
しかし、そうじゃねぇとしたら?
別の組織が望福教を狙って事を起こしていたとしたら・・・・・・。
いや、それはそれでおかしいな。
望福教の信者かどうかの判断が的確過ぎる。
そんなことをどうやって知り得たのかって話になるな。
俺達でさえ、軍や貴族としての力を使ってやっと集めた情報だ。
仕事や趣味ならまだしも、信仰を調べるなんざ簡単にはいかねぇだろう。
だったら?
「望福教は一枚岩じゃねぇとか?」
「それは・・・ないんじゃないかな? 望福教自体がいつから存在しているのか、私にはわからないけれど。その名を聞くようになったのはここ数年だ。それほど巨大な宗教だとも思えない」
「狙われた結果じゃねぇとすれば・・・」
「そういう計画なのかも知れないね」
学園の、それも中等部に限って利用する計画?
ない――とは言い切れねぇが、同じ敷地内にある幼少部を切り捨てる旨みがあるか? 不確定要素を増やすだけだろう。
それになにより、
「・・・・・・」
「なんだい? そんなに私を見つめて。あっ‼ 個室で2人きりだからって意識してしまったのかな⁉ そんな気を起こされると私も困ってしまうね‼ いやなに、私としては悪い気はしないよ? でもほら! まだ授業中じゃないか‼ ここで大声を出してしまうと人が来てしまうじゃないか! まぁ? そういうのが君の趣味だというのなら、私はそれでも構わないけれど‼」
「はぁ・・・うるせぇよ」
学園長の椅子という最大の利点まで明け渡すだろうか?
どうにも腑に落ちねぇんだよな・・・。