作品タイトル不明
粉飾、台頭
皇都防衛鎮圧部隊・・・通称”おもり隊”だろうか?
以前も目についたが、それにも増して存在感があるというか・・・。
「ここでの営業の許可は得たのか?」
「ただの喧嘩だというなら周りを巻き込むな‼」
「迷子? どこから来たのかもわからないのか? 困ったな」
職務を全うしている――とでも言えばいいのか。
怠慢、散漫、緩慢の三倍満だった以前とは随分と趣が違って見える。
それらが軍のやるべきことかと聞かれれば、肯定し辛い部分が残るものの、その姿勢は素直に褒められるべきものだ。
なにより気になるのは、これが御父上の功績なのかってところでもある。
まとめ役が変わったぐらいで、腐っていた組織がこれほど健全なモノになるだろうか?
いや、原因となっていた連中が全員消えたのなら可能なのか。
それとも・・・目を疑うべきなのだろうか?
「ではなにかあれば我らを頼るがいい。この皇都防衛鎮圧部隊長である私、カール伍長をな‼」
なんらかの問題を解決したのか、高らかに名乗りを上げる人物。
そいつの見た目と名前と役職には覚えがある。
だが、そのほとんどが俺の記憶と食い違っているのだ。
夢か幻の可能性について、真剣に考慮してもおかしくはねぇと思う。
「おい」
「おいとはなんだ‼ 失礼であろう‼ 私は皇都防衛鎮圧部隊長カール伍長だぞ‼」
「そんなことはどうでもいいんだよ」
「―――っ⁉」
やや後ろから、見覚えのあるド派手なマントを身に着けたカールへ話しかけると、振り返るまでは偉そうな態度で、その後は俺の顔を見て硬直しやがった。
「どうやら俺のことは覚えてるらしいな?」
「忘れるわけがありません‼ その節はお世話になりました‼」
だがしかし、予想に反してカールは俺に恭しい態度をとる。
踵を鳴らし、姿勢を正し、腕をたたんで心臓の前へ。
それは胸を叩くような勢いでの敬礼。
残る腕と足は目一杯に伸ばされ、胸を張るその姿は大きく、誇らしげでもあった。
「その節・・・?」
「お忘れでありますか? 窃盗騒ぎの件であります‼」
怪訝に聞いたが、カールは率直に答える。
「ここじゃ目立つ。場所を変えるぞ」
「了解いたしました‼」
カールは一も二もなく頷くと、軽く指示を飛ばして俺を誘導した。
「ここであれば、いかがでありましょうか?」
そう言って連れられたのは、いつぞやのあの店のすぐ近くにある路地裏。
教会側が望福教へ入ろうとするものを唆すために使っている店。
俺がカールともう1人から盗み聞きをした場所だ。
「どこまで行くのかと思えば・・・」
「我らにとっては思い出の場所でありますので」
「それは残念でありますな」
コイツはなんでこんなに気安いのか。
「それで? なんでお前がおもり隊の隊長になってるんだ?」
「? それはゼネス様のせいでありましょう?」
「俺のせい? どういうことだ?」
「いえ、言葉を間違えてしまいました! あなた様のおかげであります‼」
「その態度の理由も合わせて説明しろ」
「ええと・・・では、こちらが理由であります‼」
カールはド派手なマントを見せつけながら話す。
「まずお伝えしたいのは、我らが感謝をしているということであります! 私とリート副隊長はゼネス様より頂いた功績により、昇進いたしました! そして、その後の大量失踪事件と相まって、我らは皇都防衛鎮圧部隊を任されることになったのであります‼」
「功績ってのは窃盗犯の? あれだけでか?」
「もちろんそれであります‼ その結果がグラーニン辺境伯領での処刑に繋がったことを英雄様から直々の評価をいただき、運と偶然にも後押しされてのことであります‼」
御父上が?
「どうされたのでありましょうか?」
「いや、それだけで一部隊の隊長になれるもんかと思ってな」
恐らく御父上の話題が出たことで俺の表情が険しく歪んだんだろう。
カールの心配に咄嗟の反応をする。
「私も同じことを考えたでありますが、先ほども言わせていただいた通り、運や偶然の力が大きいかと」
「運と偶然か・・・そういえば大量失踪についてはなにか分かったのか?」
「誘拐ではない。ということぐらいでありましょうか。軍内部でも困惑しているようでありました。皆が一様に、己の意思で姿のを消したのですから当然ではありましょうが・・・」
「それがわかった理由は?」
「失踪した者達の部屋や仕事場を調査した結果であります。抵抗の跡や戦闘の痕跡が見つからなかったことから、英雄様がそう判断をなされたであります」
「そうだ! 結局軍の再編成を行ったのは――⁉」
「ゼネス様のお父上。英雄様ことダンデ様であります」
まさか本当にそうなるとはな。
これで御父上は皇都でも多大な権力を手に入れちまったわけだ。
いったい何のために・・・?
「それで、ゼネス様はあのような場所でなにをやっていたでありますか?」
「ん? あぁ、ちょっとな・・・」
ここで仕事を探してた。なんて言っちまったら、『ならば、ぜひ軍へ‼』なんぞと言われかねない。
コイツは俺と御父上の関係も知らねぇだろうし、こういう時はベルに――。
といったところで思い出した。
「ベル――前隊長はどうした⁉」
皇都防衛鎮圧部隊の隊長は元々ベルが就いていた役職だ。
目の前にいるコイツが現隊長ならば、ベルはどうなった⁉
「ベルザフォン前隊長は現在。なぜか英雄様の右腕をしているであります‼ まったく、羨ましい限りでありますな‼」
その答えを聞いて納得した。
帰ってすぐの連絡に、なぜ返信が来なかったのかを。