軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

無職、倒迷

南の霊峰:アドレスでのドラゴン襲撃事件。

それによって発生したあれやこれやといった雑事の後始末を終え、俺は皇都へと帰ってきていた。

行きも帰りも慌ただしく急いでしまったため、春というにはまだ少し肌寒さを感じる時期。

なにもなければ布団で温もっていたいところだが、

「お兄ちゃん‼ 朝だよ‼」

甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる存在の手前、そうもいってはいられない。

「早く仕事先見つけなよ? それじゃあね‼」

冒険者ギルド。ガルバリオ皇国、皇都支部2階にある自室にて、ギルド職員ミリーの呼びかけで俺は起床する。

そう。俺はまだギルドに住んでいた。

っつーのも・・・。

『――ってことがありまして、冒険者ギルドと縁を切ることになりました』

『なにをしとるんだ‼‼ お前さんはぁ‼‼』

『いやまぁ? 教官には悪いとは思ってますよ。ただ、ほら。あるじゃないですか? 見栄というか』

『わからんとは言わん‼ 言わんがな‼ どうするつもりだ⁉ 圧力の件、忘れたわけじゃあるめぇな?』

『それなんですがね。最近も続いてますか?』

『ん・・・? いや、そう言われりゃあ最近は・・・・・・』

『ここんとこ皇都も大分荒れてますからね。向こうもそんな余裕がねぇ――なんてわけじゃなく、多分。軍部大量失踪事件と繋がってるんだと思いますよ』

『お前さんが出かける前に起きたアレか。しっかし、それらになんの繋がりがあるってんだ?』

『それをこれから調べるんでしょうよ。ただ、縁を切ったからには住居を変えなきゃならないんで、時間はかかるかもしれないですけどね。どっかいい物件知りません?』

『はぁ~・・・仕方あるまい。全部お前さんに任せるのも気が引けてはおったんだ。こっちもその線で調べてみる・・・が、住居に関しては知らん‼ てめぇで張った見栄だろぉ? 自分でなんとかせぇ‼ けど、しばらくはまだここに住んでりゃぁいいさ。どうせ誰かにバレたところで、なにも言われはせんのだからな』

という皇都支部のギルドマスター:ブロンソン教官の慈悲の下、俺はまだギルドにある自室で寝泊まりしている。

ただし、自室以外のギルド内部への侵入は禁じられた。

温情とはいえ、当然の対処だろう。

それにしても。

「仕事か・・・」

いきなりそんなことを言われても、なにも思いつかない。

なにせこっちは学園卒業後すぐ冒険者になっている。

売買の交渉やら競売やらに参加したことはあっても、それを生業に出来るほどの知識も技術も伝手もねぇ。

家系で言えば軍人だが、これは論外。

1年前であればまだしも。兄上が領主になった今となっては、戻ったところであらぬうわさが流れたり、要らぬ詮索を受けたりと迷惑をかけるだけだ。

しかも現在、皇都には御父上が居る。

大人しくその配下に加わることは出来ねぇ。

それができたなら、端から冒険者になんざなっちゃいねぇからな。

まぁ・・・だからと言って、自室に籠っていてもなにも始まりはしない。

適当に身だしなみを整え、俺は外へと踏み出した。

そして。

意味もなく広場で腰を下ろし、周囲を見渡していた。

「働くって・・・どうすりゃいいんだ?」

こんなところで自分がお貴族様として育ったのだと自覚させられるとは、難儀なもんだ。

冷静に自分の特徴をあげつらってみれば。

元冒険者。30手前。男。貴族。

こんな面倒そうなやつ雇う奴がいるか?

元冒険者は粗暴だと思われがちで、世間的によくは思われねぇ。それ故か、そのほとんどが引退しても冒険者にまつわる仕事に就く。

ギルド職員を筆頭に。鍛冶師。輸送隊。解体業。倉庫番。資材流通など。変わったところでいえば、地方へ赴いてそこで根付く狩人や罠師ぐらいか。

どれも皇都には必要ないな。

職員は免職。鍛冶はそれなりの腕を持っているバルシムでも苦労してる。輸送隊は商会があるし、解体の手伝いが必要なほどの大物も近場にはいねぇ。倉庫番は窃盗騒ぎで増えただろうし、資材流通も輸送隊に同じくだ。

残るは地方への移住だが・・・約束もあることだし却下だな。

30手前の男は力仕事にも不安が残る。

っつーか、10代20代と比べて雇う上で特別利益がない。

給料が安いならまだ考えただろうが、俺は腐ってもお貴族様。しかも上級貴族様の家系だ。

それが低賃金で? 冗談だろ。

いざそれで探してみても、罠と思われて無視されるのが落ちだ。

さて、本格的にマズいな?

「もっと簡単なことだと思ってたんだがな・・・」

この広場にはいつものサイコロ串肉サラダパンの屋台がある。

帰りに買っていけばミリーの機嫌はとれるだろうが、いつまでもってわけじゃない。

根本的な解決をしなけりゃ、いつかは煙たがられるだけだ。

迷いを振り払うように俺は頭を振って顔を上げる。

最悪の場合には、教会へ身を寄せることも視野に入れておくかと。

考えながら、しかし。

俺は周囲に兵隊の姿が多いことに気付いた。