作品タイトル不明
side――栄光ある騎士団2
きっとたった数人でドラゴンに抗おうとするクライフ達に感化されたのだろう。
サルベージの住人のほとんどが退避した後ということもなり、そんな物好き達を止められる人もおらず、数多の夢見る冒険者がドラゴンへ群がる。
これなら――、わかるかもしれない。
ドラゴンの弱点でも!
エイラはそう考えたし、その場にいた全員がそう思って彼ら、彼女らの背中を見ていた。
けれど、それは浅はかな妄想であったと・・・すぐに気付かされる。
理由は単純明快。
挑んでいった先で立っているものが居なくなったからである。
皆が一様に闘志を燃やし、一矢報いようと士気は戦ったにもかかわらず。
誰1人として結果を残せず、ただ雑に薙ぎ払われ続けた。
その光景に生物としての格の違いを見た。
人が何十、何百と集まろうと無駄なのだ。
ドラゴンはそれを歯牙にもかけない。
それでいて手の内の全てを知っているかのように、全員を見渡していた。
誰かが、どこかで、なにかをする度に。
その人へと視線を向け、体を向け、まるで効いていないと見せつけた。
その間に取り付こうとする者たちを尻尾で払いのけ、逆上し飛び掛かる者は羽ばたきで吹き飛ばす。
それらは必要最小限の動きなんだということさえ、理解できてしまった。
それ以上の価値はないと。言外に示されているのだと。
初めの内は立ち上がる人もいた。
しかし、2度。3度と。
繰り返されては心も折れる。
2度目以降は目を向けることもなく、ひたすらぞんざいに払われた。
3度目に至ってはもうなにかの余波だけで。
瓦礫だらけの地面を転がれば、人の体は酷く傷付く。
そこへ輪をかけ心まで。
もはや立ち上がるだけの理由は、原動力は・・・残されていなかった。
そして、そうなるまでの時間――およそ10分。
いや、むしろよく保った方なのかもしれない。
もしドラゴンが本気であったなら、すでにこの場所は更地になっていても不思議じゃなかったはず。
そうなっていないのは慈悲か、それとも気まぐれか。わかりはしないが、そうはならなかったということだけが事実。
懸命に掛け合っていた声もなくなり、立ち上がろうという気概を持つものも消え、いよいよ決着かという時になってなお、立ち続けていたのはクライフ率いる”進歩する歯車”のみ。
見ていられるのもここまでか・・・。
今更になって逃げる選択肢は取り得ない。
休むにしては短い時間だったきがするが、万全ではなくとも十分だ。
なんの情報も得られなかったけど、それでも。
泣き言なんて言ってはいられない。
エイラが立ち上がり、皆に覚悟を決めよう! と声をかけようとしたところで、
「流石におかしくねぇか?」
ジェイドが変な顔で指摘する。
「なにがおかしいって?」
「色々だ! 色々!」
「そんなんじゃ誰にもわからないでしょ‼」
ジェイドは頭の中身を整理しきれていないのか、エイラの質問に細かく答えられない。
「では1つずつ言葉にしてはどうでしょう? 的確でなくともわかる範囲でいいと思いますが・・・」
そんなジェイドを見てリミアが提案する。
これは旅の中でリミアが、ケイトと会話することで得た知恵だ。
ケイトは常になにかを考えていて、知識も人並み以上だからこそ、言葉や感情をもてあまし、今のジェイドのように混乱あるいは混線することが多い。
そういう時は1つずつを強調することで落ち着かせると上手くいった。
だから今回もそうしようというのだ。
「あーそうだな・・・まずはあれだ。ヨハンのことだ」
「僕ですか?」
「ああ。お前はドラゴンの後ろを取ったんだよな?」
「え? えぇ。はい。そうですけど・・・?」
「まずはそれがおかしい」
「どういうことですの?」
改めてヨハンへ確認するジェイドの様子にキューティーが聞く。
「さっきまでの戦闘で、ドラゴンの後ろへ回った奴はいたか?」
「いない、気がする・・・うん。長時間いた人はいない。尻尾を振る一瞬ならいたけど」
ケイトはジェイドの言葉を頼りにさっきまでの戦闘を思い出してみたが、ドラゴンの後ろへ回った者は居なかったはずだ。
後ろへ回り込もうとした人影はあったが、そのどれもが失敗していた。
「そうだろ? なのにヨハンは後ろに回って攻撃までしたのに、無傷で帰ってきてるんだぞ! おかしいだろ⁉」
「僕! 嘘なんかついてないですよ⁉」
「誰も嘘などと思っておりませんわよ! 真実だからこそ、なにか条件があるのではないかと考えているのですわ‼ もしそれがわかれば―――」
「――不意打ちができるわね」
キューティーの話にエイラが乗る。
「でも、僕の攻撃は・・・」
「それもだ。俺達の攻撃だけじゃねぇ。ほぼ全員の攻撃はあの光る壁みたいなので防がれた。お前のもそうだったのか?」
「いえ、そういう感じではなくて。どちらかといえば鱗に弾かれたっていうか」
振り返ればそこにいるのは山のように大きなドラゴン。
その鱗が岩肌より硬くても驚きはしない。
「そう! しかもだ‼ その時、気付かれなかったんだろ?」
「その時って攻撃の時ですか? それともその後ですか? まぁ、どっちにしても見向きもされませんでしたけど・・・」
「攻撃の時だ。それもおかしいんだよ! だってあのドラゴン・・・全部の攻撃に反応してたよな?」
「確かにそのように見えましたね。少なくとも魔法にはすべて反応しているはずですが・・・ヨハンは魔法も使ったのでしたよね?」
「うん。この籠手で強化して撃ったんだけど・・・」
リミアの疑問にヨハンはゼネスからもらった籠手を見せながら答え、結果はさっき言ったとおりだよと続けた。
「それにだ!」
今のところなんの情報も出てない以上、時間の無駄でしかない確認作業のはず。
だが、ジェイドには尤も気になっていることがあった。
「なんで誰も俺達に声を掛けねぇ⁉」
そう、誰も動こうとせず、立っている方が珍しいこの状況の中で。
無駄話をしているはずのジェイド達をなぜか誰も気にしていない。
普通ならもっと注目を集めているはずだ。
これは俺様気質のジェイドが目立ちたがりだからそう思うのではない。
なぜなら、
「グルルァ?」
この場で唯一、人間以外でドラゴンへ挑む異質なワイバーンの姿がすぐそばにあるのだから‼