作品タイトル不明
side――栄光ある騎士団1
「グギャァゥ‼」
「こら‼ 暴れないで‼ 治療してるところなんだから‼」
クライフ達を追いかけてドラゴンが居座る広場へ到着してすぐ、エイラはワイバーンの治療を任された。
そのことを安堵したのと同時に、エイラは自分が悔しいとも感じていることに気づいた。
なぜならそれは戦力にならないと言われたも同じことだったからだ。
しかし、仕方がないことだということもわかっている。
現に。
「うぐぁっ⁉⁉」
「きゃぁああああぁぁぁぁぁ‼‼‼」
ドラゴンへと向かっていったはずのジェイドとキューティーが早々にはじき返されてきたからだ。
「2人共、大丈夫⁉」
エイラは2人へ駆け寄りたかったが、治療途中のワイバーンも手が離せない。中途半端にここを離れたら、このワイバーンはまたドラゴンへ突撃するだろうから。
「無理はするな‼ 怪我をしたなら治療を優先するんだ‼」
濛々と漂う砂埃の向こう側から、吹き飛ばされた2人を気遣うクライフの声が届く。
流石はS級パーティーといったところか? 彼ら”進歩する歯車”の面々は未だに大きなダメージは受けておらず、まだ戦闘の続行が可能なようだ。
ドラゴンを相手にしても、それができることこそがS級の証左なのだろう。
比べて、私達はどうだろうか?
「くそっ‼ なんて威力してやがんだ‼」
「それにとても速いですわ・・・・・・避けることすらできまないとは思いませんでしたわ・・・」
倒れ伏していた2人はどうにか体を起こせるみたいだが、やはり体が痛むのか、すぐには立ち上がろうとしない。
そして、
「お2人共、大丈夫ですか?」
姿が見えなかった残るもう1人の前衛であるヨハンも帰ってくる。
「そっちは無事みたいだな」
「無事というか・・・」
「もしや、あなたも怪我を?」
「いえ! そうじゃなくてですね・・・僕はお2人と違って相手にもされませんでした」
心配するキューティーに首を振ってヨハンは力なく答えた。
攻撃を仕掛けようとも相手にされず、意識を引こうにも見向きもされなかったという不甲斐なさを。
「俺様より先に攻撃を当てたのかよ⁉」
「当てたというか、当たったというか・・・避けられなかっただけですよ。だって、当たっても効果がないんじゃ意味がないですもん」
「それはそうですけれど・・・いったいどんな攻撃をしたんですの?」
「えっと。普通に短剣で突いたり、闇魔法を撃ってみたりしたんですけど」
「どちらも効果がなかったと。そういうことですのね?」
「はい・・・後ろから攻撃して・・・でも、振り向かれもしなかったです」
「後ろを取ったのか⁉」
「そうですけど、なにか変でしたか?」
首をかしげるヨハンにジェイドが顎で示す。
「あれを見る限り、ドラゴンは後ろを取らせたくないように見えたんだ」
それは、今まさに繰り広げられているクライフ達とドラゴンとの戦闘。
身の丈よりも大きく見える大剣を振り回しながら、凄い速度で飛び回るアンナ。ドラゴンはそれを絶対に正面から受け止めていた。
それに合わせて、ドラゴンの足元でクライフもなにかをしているのだが、それも背後というにはまだ遠い。
だからジェイドはあのドラゴンが背後を取らせたくないものだと思っていたのだが、
「気にしすぎだったか・・・?」
ヨハンが背後を取って攻撃まで出来たというのなら気のせいかもしれない。
一応はヨハンが嘘をついているという可能性もなくはないが、少なくともこんな場面でそんな噓を吐くような奴だとはジェイドも思ってはいない。
前衛3人に手応えはなさそうだ。
まだ後衛を担当する魔法組が2人残ってはいるものの・・・・・・。
「ガイザージェット‼‼‼」
「ルーイングブリッツ‼‼‼」
見ている限りで有効打は入っていない。
水からの雷による効果的な運用でさえ、全てキューティーが使っている魔法盾のような膜に阻まれて消える。
しかもその防御も小範囲を短時間だけ。
そのあとに現れた炎の津波はドラゴンを体ごと飲み込み、それなりの時間を防御に徹させることができていた。
その差は口に出すまでもない。
「ダメ、だね・・・」
「そのようですね。あの守りを貫通させるには威力が足りないのは明白でしょう・・・これ以上は魔力の無駄になります」
当然、そんなことは本人達もわかっていた。
で・・・あれば、どうするのか?
「作戦を立てる必要がありそうね」
いつの間にか全員が近くに集まっていたのを確認したエイラが告げる。
どうにかしてドラゴンへの対抗策を出さねば・・・ここに残った意味がない。
それはこの場にいる全員が同じ考えだった。
とはいえ、なにができるかの洗い出しは今やったところで成果は見込めないだろう。その程度で威力が抜群に上がる方法があったなら、今までがあまりも怠慢だったことを意味するからだ。
となると手っ取り早いのはドラゴンの弱点を突く方法だが、それには情報がなさすぎる。
なにより、情報を引き出す手段も乏しい。
この場で戦っているのは自分達とクライフ達だけ。
ワイバーンを合わせたとしも、その数は少ないと言わざるを得ない。
ジェイドとキューティーの体の調子が戻るまでになにか―――。
そう思っていたところ。
「俺達も戦うぞ‼」
「お前らだけにいい恰好なんかさせられるかよ‼」
避難するはずの冒険者達が狼煙を上げた。