軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

落とし得たもの

「頼んだよ! エリック君‼」

「ボルカニックバレッジ‼‼」

俺達がドラゴンの正面から離れた瞬間に、エリックによる強力な魔法攻撃が降り注ぐ。

熱く燃え滾る岩の弾丸が雨の如く、絶え間なく猛烈に降り注ぐ。

だが、いずれもドラゴンへ着弾することはなかった。

全ての弾丸が空間を歪める幕に阻まれている。

「エリック君‼ 魔法を左右へ散らしてみてくれないかい?」

ジーナの指示でエリックは魔法を正面集中から広く、特に左右への攻撃を意識した形へと変化させる。

もちろん正面への攻撃もやめるわけじゃない。

それでも。その全てさえをも光の膜が防いで見せる。

まるで虹に包まれいるようなその姿は、卵の殻に籠っているようにも見えた。

中のドラゴンが身をすくめ、羽で体を覆っているせいもあるだろう。

「なにかわかったか?」

ドラゴンのそばを離れた俺達は、ジッとドラゴンの様子を窺うジーナのもとへと自然と集まる。

「まだなんとも言えないね。そっちはどうだい?」

「あの膜を維持したまま攻撃はできなさそうだってことぐらいだな」

「それだけじゃ足りないね・・・」

「十分じゃない? カウンターならこっちの攻撃が通るのよ? 悔しいけど、私達だけじゃそんなこともわからなかったんだから・・・・・・」

「それには魔力量が関係してるだろうから、そう悲観することじゃねぇよ」

「そうだよ? それに、カウンターは相手便りの戦法だ。さっきみたいに動かない選択を取られたら打つ手がなくなってしまう」

「そこは・・・得意の挑発でどうにかならないかしら? アタシがやってもダメだったのよね」

「あのドラゴンはついさっきまで痛みを知らなかった。それで痛みを知って臆病になってるんだよ。だから難しいだろうな。それにアイツは今も魔力を回復してる最中だ。無理に物理的な攻撃を仕掛けてくる必要がねぇ」

「そういえば、君の体は大丈夫なのかい? それだけの魔力量を保持するのは危険かもしれないよ?」

「まぁ大丈夫だろ。これでもかなり消耗しちまった後だしな。長時間続くとまずいかもしれねぇが、どっちにしろあれだけの質量とやりあうなら長くはもたねぇさ」

「そうなるとやっぱり時間が問題になるね。あの堅牢すぎる膜の護りをどうにかしなければ・・・」

エリックの魔法攻撃を背景に密談を交わしていたが、

「はぁ・・・はぁ・・・ダメだ、硬すぎる・・・」

エリックが息切れを起こすことで魔法が止む。

《どうした? もう終わりか? その程度では我が護りを貫くことはかなわぬぞ? 我の護りすら貫けぬ汝らが、我を弱いと評するのはあまりに滑稽ではないか? 訂正するならば今の内だぞ?》

「赤ん坊みてぇに殻に籠って勝ち誇ってるところ悪いがな。文句があるなら力で証明して見せろよ。そのデカい図体は飾りか?」

《我がっ⁉ 赤子だと・・・⁉ なんたる屈辱っ‼ し、しかしそのような戯言を真に受けては、それこそ真実だと言っているようなもの・・・‼‼》

アンナの言う通り挑発してみたが、今一つ効果に欠ける。

《・・・焦る必要はない。そうだ。焦らなくても良いのだ。汝らに、いや! 散々我のことを小馬鹿にしてくれた汝には、我が怒りの息吹をくれてやる‼ 我が力が見たいのであろう? 今しばらく大人しくそこで待つがいい‼》

竜の息吹。さっきは不発だったが、こんなところでぶっぱなされたら巻き添えが⁉

もう一度、吸収できるか?

さっきのはたまたまだったが、今度はより強く意識すれば可能か?

だが成功したとして、魔力酔いはどうなる?

すでに吸収した魔力の量は俺の回復許容量を大幅に超えている。

その後の戦闘は―――‼

「もう一回・・・いくよ‼」

考えがまとまらねぇうちに、エリックが魔力回復用の丸薬を噛み砕いて無理やり魔力を回復。再度攻撃へ移るらしい。

さっきの言葉。ドラゴンの脅しが効いたか。

「今度は君達も攻撃に参加してくれるかい? できるだけ攻撃面を増やすことを意識して広く、それでいて十分な威力での攻撃を頼むよ。その間、私の魔眼でその様子を観察させてもらう。それで運よく弱点が見つかることを願っててくれたまえ」

それらを見ていたドラゴンが、

《その必要はない。もう、すぐだ》

自信に満ちた声で言って俺達を止める。

微々たる量でしか魔力を回復できないくせに、とんだ負け惜しみを・・・と思ったが、違う。

「ゼネス・・・。君は、とんでもないミスをしてしまったようだね?」

「ああ、人生で最大かもな?」

《我とて学ぶのだ。それが例え、人間の浅知恵であろうともだ》

魔眼を持つジーナも気付いたらしい。

大量の魔力がドラゴンへと流れ込んでいた。

自然に、世界にその力を向け、魔力を回復することは世界の理に反する故できないが、壊された建造物の瓦礫からは魔力を集めていた。

つまり、人工的に生み出されたものへ――ならば、世界の理に反することはなくその力を存分に発揮できるというわけだ。

そう、俺が初手で取り落した魔力回復用の丸薬からでも・・・だ。

「俺達が護る! 皆は後ろへ‼」

盾を構えて前へ飛び出すクライフとフェリシア。

「バカなこと言ってんじゃないわよ‼ 逃げるわよ‼」

「いいところがないまま逃げるなんてできるはずがありません。それに、私は自分の命よりもゼネスさんの命の方が大事ですので」

「そういう考えは捨てろっつっただろうが‼ クライフ‼ お前も! 自分の立場わかってんのか⁉」

「もちろんさ。俺はクライフ! ただの冒険者だ‼」

「そんな言い訳が通じるか‼」

後のことはいい‼

アイツからもう一度魔力を抜き取る‼

そう思って魔力を繋げようとするが、繋がらねぇ⁉

なにか防衛策でも施したか⁉

かくなる上は――‼

「まさかとは思うけれど、撃ち合って力比べでもするつもりかい?」

「他に方法でもあるのか?」

驚くジーナへ切り返しても答えはない。

あの口ぶりから察するに、ドラゴンの狙いは間違いなく俺だ。

俺はクライフやフェリシアから離れるように走り出し、アドレスへの道を背負う形で振り返る。

ここは1本道。

多少焼け焦げようと被害は少ない。

龍の息吹も、俺の大砲も。

原理は同じ。

純粋な魔力の衝突。

覚悟を決めて、腕を突き出す。

それを認めたように、ドラゴンも俺へと向き直り――。

次の瞬間。

「今です‼」

「言われるまでもねぇってんだよ‼‼」

聞き慣れた2つの声がドラゴンの鼻先に突如現れ、瞬く間に開かれていたその口を塞ぎ、地面へと縫い付けた。