軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦闘の経験値

時間制限付きの超強化。

ジーナが超越と名付けた魔力過多状態を利用しての戦闘は、自分でも驚くほどの出力が可能だった。

例えば、

「人間の拳なんざ避けるまでもねぇってか⁉」

《ほう、よくわかっているではないか。小さきものの拳など――ぐぬぅ‼》

油断しきったドラゴンの前足だかを引かせるぐらいには強力な一撃を。

それでいて、ワンダーゴーレムの時のような反射ダメージを受けることもない。

確実に人の強度を超え。かつ、ドラゴンにも痛みを与えるだけの存在へと変貌していた。

それはある意味恐ろしくもあった。

少しでもなにかを掛け違えれば、その力がすべて自分に返ってくるんじゃねぇかとも思ったからだ。

だが、今はそんなことを考える余裕すらもったいねぇ。

己の幸運にかけて責め立てる他にやるべきことはない。

《小癪な‼》

痛みによって振り上げられた左の前足に体重が乗せられ返ってくる。

本来ならばどうしようもねぇ攻撃だったろうが、

「そんなもんで俺を殺せると思ってるのか?」

今の俺には児戯に等しい。

ついさっき殴り上げた右腕を傘のように差し込み、その重さを籠手の表面で滑らせ、少しばかり腕を下した位置で外へと弾く。

《ぐぉおっ⁉》

そのまま踏みつぶすつもりだったのか。

体重をかけた前足を振り払われたドラゴンは態勢を制御できず体が泳ぐ。

言ってしまえば、斜め前へとつんのめった。

当たり前の話だが、それは隙を晒したわけであり・・・なにより、

「どうした? 弱すぎるんじゃねぇか?」

見逃す通りもないわけで。

俺はよろめいたドラゴンの左胸を穿つが如く、全力で叩き上げた。

《がはぁっ――⁉⁉》

長い首が空に波打ち、汚れた雨をまき散らす。

その後も幾何かの攻防を経るも、全てが似たような結果に収まる。

俺の攻撃は通り、ドラゴンの攻撃はいなし続けた。

ああ。

正しく奇妙な光景といえるだろう。

なんだ? これは?

どうしてこんな一方的に俺の攻撃だけが通る?

ドラゴンは属性のいずれかを司るって話だろう? なんでアイツは得意な魔法を使わねぇ?

それに、確かに俺は大量の魔力を消費しながら攻撃しているとはいえ、だからって効きすぎだろ。

ふと、さっきの自分の言葉に疑問を覚えてドラゴンを詳細に観察してみる。

そう、いくらなんでも弱すぎる。

ドラゴンの表情など伺い知る由もねぇが、歯を食いしばるからには痛みに耐えてるらしいのは間違いない。

動きにキレがないのは・・・俺が魔力を奪ったから?

耐久が紙に等しいのもそれが原因か?

よくよく観察してみれば。ドラゴンも俺と同じように、周囲から魔力を吸収しようとしているようだった。

ただ、俺が魔法道具から吸収するのとは違い、ドラゴンは周りに散らばる瓦礫から魔力を得ているようだ。

それが完了してねぇからこその弱さなのか?

だとすりゃぁ速攻を仕掛けるだけだが、それだけにしてはあまりにお粗末な動きが引っかかる。

魔力が不足すれば動きが鈍くなるのはわかる。

強化できなければ体表がやわらかいのも、まぁわかる。

だが、理に適わないような動きをする理由にはならねぇはずだ。

痛みを感じたから反射的に動いてしまった、まではわかるが・・・そのままその部位を使って反撃なんかするか?

あの前足は人間でいえば腕になるのか? いや、それにしたってだよな。

まずは庇うなり、立て直すなりするもんじゃねぇか?

もし真っ先に顔をぶん殴ってたら、顔で反撃してたのか?

喧嘩も碌にしたことねぇガキでもあるまいしそんな――――・・・・・・そこまで考えて、俺が疑問に感じていたことがなんなのか、腑に落ちた。

ドラゴンは史上最強の生物と言っても過言じゃない。

つまり、天敵なんざ存在してねぇんだ。

そして、こいつはその中でも生まれながらに才能を認められ、王の座を与えられてきた。

だから、

「お前・・・今までなにかと戦ったことねぇだろ?」

戦闘の経験など、今の今までなかったんだ。