軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

蓄積する軌跡

《・・・我は世界の一端を担う龍王だ。ただその事実だけで、我に歯向かうものなど――‼》

「そうだろうな。だからお前は弱いんだ」

《弱くなどない‼ 我は‼ 生まれたその瞬間から――》

「いや、お前は弱い。その証拠にお前は成龍であることにこだわった。それは強さ故じゃない。ただ、若さだけは。体力だけはあると、自分に言い聞かせるためだ」

経験や知識を得たからといって弱くなることはない。

しかし若さはどうか?

衰えるということはすなわち、弱くなることに違いない。

こいつはそのことを知らずのうちに恐れていたんだ。

だから、成龍であることにこだわった。

対等以上の存在が居なければ、戦うになるようなことはない。

だったら自分の弱さなど知る由もないと思うかもしれないが、こいつは腐っても龍王。賢いと呼ばれる竜種の最上位に位置付く存在。なにかちょっとしたことで気付いちまったんだろう。己の弱さに。心のどこかで。

「現に、お前は俺1人すら殺せちゃいない。一度帰って修行でもしてきたらどうだ? 俺には弱者をいたぶる趣味はねぇからな」

《さえずるでない・・・人間。汝こそ我を恐れているのであろう? でなければ、この竜王を討ち取るという名誉をみすみす逃すはずもない》

「俺が恐れてるのは報復だ。お前じゃねぇよ。俺達は人間だからな。お前が棲む場所も知らなけりゃ、たどり着く手段もありゃしねぇ。けど、お前らはどうだ? 俺のいる場所なんざ知らなくとも、誘い出す手段を知ってるだろう? つまり、無暗にお前を殺すと関係のない連中を巻き込む可能性がある。そんな状況を恐れるのは当然なんじゃねぇか? だから、俺が下手を撃ってお前を殺しちまう前に。俺の前から姿を消してくれねぇかと頼んでるのさ」

《それこそ要らぬ心配ではないか? 汝こそ。我に攻撃が通る今を置いて、勝ちの目があると思っているのか? であるのに、その手を休めるのはなにゆえだ? 死ぬ気はないと息巻いて見せたところで、我を殺せぬのであればそれはただ儚き人の夢に過ぎぬぞ‼》

不毛な言い争いが続くが、仕方がねぇ。

なんせお互い手詰まりだからな。

俺には決定打がない。

こいつから奪った魔力があっても、こいつを殺せるほどじゃねぇ。

一か八かに賭けようもんなら、確実に死が待っている。

こいつが言ってたからな。

世界の理にとやらに反するものは消すと。それが龍王の務めであると。

だからさっき言ったように、こいつをここで殺そうとも、後任が俺の下へやってくるだけだ。

ドラゴンには魔力がない。

今は必死に周りに転がる建造物の残骸から魔力を吸い上げているが、回復には程遠い。

なによりこいつにしてみれば、回復しきったところでまた俺がその魔力を奪ってしまう恐れもある。

安易に仕掛けてその愚行を繰り返せば、最悪殴り倒されるかもしれないと考えてるはずだ。

そういう思考の結果が、この小賢しい牽制合戦。

「魔力を補充できるんならそんな木っ端から集めず、もっと旺盛にやったらどうだ?」

《これだから理に反するものは許せぬのだ! そのような世界の均衡を崩す行為を良しとするはずがなかろう‼ それとも、それを奪わねば我に止めもさせぬか?》

「言っただろ? 雑魚をいたぶる趣味はねぇ」

《ぬかせ・・・》

そんなどうしようもなくつまらねぇやり取りの間に、

「言ってくれるな・・・」

聞き慣れた親友の声が挟まる。

「俺達が手も足も出なかったドラゴンを雑魚と呼ばれちゃ立つ瀬がないぞ? ゼネス」

「世の中には相性って言葉がある。気にすることはねぇよ。クライフ」

顔を向けるまでもない。

俺の隣には長く連れ添った親友が立つ。

そして、

「君は私にお礼の1つでもあるべきなんじゃないかな? 面倒な怪我人を押し付けて・・・というわけで、君のその異様な魔力がなんなのか、解説してもらってもいいかい?」

「・・・今がそんな状況に見えるか?」

「余裕ならあるように見えるけれどね?」

「そりゃぁそうだが・・・締まらねぇな」

「万事そういうものだよ」

その間には、介抱を任せたジーナが挟まっていた。