作品タイトル不明
side――ゼネス4
腰元のナイフを抜き放ち、相対する3人と臨む。
さぁ、現状の確認だ。
1人は現冒険者ギルド本部のギルドマスター。
等級は個人S級。
暴虐の螺旋という名で知られ、愛称はヴィーちゃん。本名は不明。
齢30そこそこにして、無数にいる全冒険者達の頂点に君臨する女。
得意な戦闘方法は―――っと! 言ってたら来たな!
足元を風が駆け抜けるのに気付いて、さっさとその場を離れる。
「反応はいいが、そう大げさによけるものではない。初めから防ぐつもりがないとわかれば付け込まれるぞ? このようにな‼」
さっきまで立っていた場所に竜巻が発生し、さらには避けた俺を追いかけるように動き始める。
暴虐の螺旋。その名の通り。
こいつが得意とするのは風の魔法。
特に旋風、竜巻、大嵐などといった回転系統の風魔法だ。
若いころには凶悪なモンスターを一瞬ですり身にしたこともあるとか。
つっても、いくら冒険者家業が実力社会だとは言え、頂点=最強とはならねぇ。事務処理や外交、面倒見も必要になってくる。
なにより、締め切った部屋での風魔法は予兆がわかりやすい。
本来風通りなんざ存在しねぇんだから当然だ。
今も。斜め後ろに次が来ることはわかってる。
そういう意味でも間違いなく付け入る隙は存在するし、見たところ根っからの魔法使い。近距離に張り付けば、負けはねぇといえるだろう。
だが問題は・・・。
「久しぶりに君の実力。見せてもらおうかな!」
後ろに新しい竜巻が発生するのに合わせて、まるで風に乗って現れたかのように飛び込んでくる自称師匠。
簡単に通り抜けさせてくれねぇのは明白だ。
これが敵の2人目。
自称、俺のナイフ捌きの師匠。
等級は個人S級。しかも、それがいつからのものなのかも不明。
今が何歳で、何年活動してきたかすら誰にもわからねぇ真正エルフ。
未知の理という名で呼ばれ、本人は俺にヴァイパーと名乗っていたが、ここではミスティと名乗っていたらしい。どっちが本名かは不明。あるいはその両方が偽名か。
得意な戦闘方法は隠遁・強襲・遊撃・誘引を使ったナイフ戦。および、視認しづらい風魔法による妨害。
軍隊仕込みんぼ急所狙い一辺倒だった俺に、今のようないやらしい戦い方を教えたのがこのヴァイパーだ。
失血の危険性。痛みによる思考妨害。毒物などへの不安。死角への行動など。
その意味を盗まされたのがこの自称師匠だ。
そうなると必然的に、
「はは! いいね! 昔よりずっと鋭い‼ それに、卑怯なくらい防御が厚い‼」
狙うのは一撃必殺じゃなく、手足や足先といった薄皮一枚。
だが、俺の籠手はワンダーゴーレムの素材で作られている以上、生半可な刃は通らねぇ。靴だって覆うほどじゃねぇが、同じ素材を仕込んである。
俺の方が圧倒的に有利なはずだが、エルフらしからぬ狂相で笑う。
それこそを望み、楽しむように。
昔っからそうだった。だから油断はしねぇ。
出たり消えたり追いかけたりと、忙しない竜巻を避けつつ、ナイフの刃が交じり合った瞬間に膂力の差で弾き飛ばし、追撃にと蹴り飛ばす。
「うぐっ⁉」
という声を置き去りに、ギルドマスターへと駆け寄る。
「なにをしているミスティ‼ 情けないぞ‼」
自称師匠に激を飛ばす標的まであと一歩・・・っつーところで、
「私を忘れてもらっては困るな」
邪魔が入る。
3人目の敵。
自由騎士:フリーダム(2代目?)
等級は個人S級・・・らしいが、このパチモン騎士はちゃんとした試験を受けたのか? それどころか、中身が変わってることをこいつらは知ってるのか?
いや、あれだけわかりやすい違いがあるだ。知らねぇなんてことはねぇ。知ってて黙認してるんなら、なにが目的だって話になるんだが・・・その前に。
「俺とか私とかグダグダしやがって‼ 一人称ぐらい統一してから出直してこい‼ パチモン野郎が‼」
構えた盾を全力で殴りつける。
本物の自由騎士を知っていれば知っているほど、気持ちの悪い言動をするこのパチモン騎士の得意な戦闘方法だが。
本物と同じなら基本型は盾での防衛だ。
最前線で攻撃を受け、敵の足止めを担当する。
本物はさらに盾での殴打や風の魔法で幅広く戦っていた――。
「っ⁉ あぶねぇな!」
パチモン騎士を殴って押し込んだ瞬間に、反撃の如く風の刃が飛んでくる。
本物と比べるとデカすぎる盾に隠れたパチモンの攻撃か? それとも、他2人の?
奇しくもか、それとも狙ってなのか。
風の魔法を得意とする3人が揃ってるんじゃ判断がつかねぇ。
とりあえずは、慎重に警戒範囲を絞っていかねぇとな。