作品タイトル不明
side――ゼネス3
「と、いうわけでだ・・・貴様には個人S級冒険者として働いてもらう。所属はここ、ギルド本部。配置はいずれ、実力を見てから決めることとする。異論ないな?」
さんざん自称師匠の頭を締め付けてから、ギルドマスターが宣告する。
いったいどういうわけなのか、さっぱりわからねぇが。
「断ると言ったら?」
「命令だと言った」
つまりは力づくか。
どおりで他に誰もいねぇわけだ。
巻き込まれたらたまったもんじゃねぇだろうからな。
それにしても、個人S級が3人。
俺1人を相手するには多すぎやしねぇか?
「うんうん。君が複雑な気分なのはわかるよ・・・1回引退って言っちゃったから、なーんか恰好つかないよなぁ。とかそういう気持ちもね! でも、これは正当な評価なんだよ! 君が強くなったってこと! 僕はうれしい! 君だってそうだろ? 強くなりたいって言ってたもんね! それが認められたんだ!」
両腕を組んで頷きながらわかったようなことを言う自称師匠。
いや、確かにそういう気持ちがないとはいわねぇが・・・正直。
「あと1年で30になるんだ。別に引退したっておかしくねぇ年齢だろ? それを引き留めるどころか、もう一回引っ張り上げようってのは野暮じゃねぇか?」
「そんなことを言ったら僕はその10倍は生きてるよ?」
「そ、そうだぞ。30歳はまだ若い!」
「あぁ、そういえば年齢の話は禁止だったか」
「そんなことはない! ない・・・が! 抵抗するつもりならば覚悟しろ」
怒気をはらんだ声ですごむなよ。大人げない。
ギルドマスターも婚期とか気にしてるのかもしれねぇな。
それとついでに気になったことを聞いておく。
「それにしても手の込んだ招待だな? もしかして、俺が来るまで活動も取りやめてここで待ってたのか? だとすりゃぁ随分と暇を持て余してたことになるが・・・」
「まさか。非公開だが特別な移動法がある。貴様の来訪を聞きつけて集まっただけだ」
なるほど。
やっぱりこの感覚はジーナの転移扉か。
「それを3人分も? そこまでして3人もそろえる必要があるのか?」
「ワンダーゴーレムの単独討伐者ともなれば警戒はするだろう。そのような所業は私にもできんぞ? というか、やらん。アレは魔法だけで倒すには少々手間がかかりすぎるからな」
「僕も無理だね。あの外装に傷をつける方法がない。君みたいに同じ素材で作った武器でもあれば違うかもしれないけど・・・たらればはいっても仕方ないしね?」
ギルドマスターに続いて自称師匠までもが首を振る。
「俺は・・・やってみないことにはわからないな」
それを見て、自分も答えるべきなのかとパチモン騎士が続く。
これまた本物の自由騎士が言わなそうなことを。
あのおっさんであれば、聞かれるまでは答えねぇし、答えは『知らん』の一言だ。
「それでも3人がかりっつーのはどうかと思うぜ?」
「そうだな。私もそう思っていた。貴様の師匠を名乗るそこのがそうしろと言うから手配しただけだったのだが・・・どうやら正解だったようだな?」
ゆっくりと、構える俺を見てギルドマスター・ヴィーちゃんが立ち塞がる。
「本気で勝てるとでも思っているのか?」
最後通告とでも言わんばかりに、威圧するような気配を纏って聞いてくる。
しかし、
「さぁな? 試してみりゃわかんだろ」
ここで言いなりになるつもりはねぇ。
ジェイド達には、いつでも皇都に居てやるって言っちまったし、教官からの頼まれごともあるしな。
なにも、無駄にだらだらと会話を引き延ばしていたわけではない。
ここは命懸けで浪漫を求める冒険者達の総本山。
大小様々な魔法道具が遍在している。
普段使いされてるらしいものから、封印されているのかってぐらい押し込められているものまで。
どれと繋げば、どれぐらいの魔力になるのかをずっと考えていた。
欠片も知らない個人S級冒険者3人が相手だったなら難しかったかもしれねぇ。
だが、3人の内1人はよく知る人物。
捉えどころがなかろうと、いつかその影を追った師匠を名乗る存在。
さらに、もう1人はよく調べた人物。
例え本人じゃなかろうと、いつか憧れ超えると誓った指標たる存在。
そして、最後の1人はよく聞く人物。
実力こそ知らなかろうと、いつか噂され恐れられ頂点へと座る存在。
推し測ることは不可能じゃねぇはず。
だからだろうか?
不思議と負ける気はしなかった。