作品タイトル不明
気付かぬは我か、彼か
間違いなく、そのことを知らなかった全員の顔が驚愕の表情で固定されていた。
それはクライフ達だけではなく、工房主アルガムや直近にゼネスと合っていたはずのジーナまで。
「そ、そうか・・・・・・そうかっ!」
確かな静寂を切り裂いたのはクライフの息の詰まったような言葉。
その声と表情は一致しない。
喜んではいる。
思わず泣きそうになってしまうほどに。
けれど、そこには明確な悔しさが滲んでいた。
そして、それはアンナ・エリック・フェリシアも同様だった。
「良かったって言っちまっていいのかはわからんが、どうやら。おめぇさんらの言ってた通りになったみてぇだな」
「どういうことだよ?」
「言ってただろ? 耐えられなくなったのはこいつらの方だった。つまり、こいつらは自分達こそが奴の、ゼネスの成長の足枷になってたんじゃねぇかって・・・そう思うようになってたんだ。そんで、その予想通り。奴はここを離れて1年も立たないうちに、ずっと上がらなかったはずのレベルが上がり、よくわからん事象までも引き起こせるようになった」
「そういうことか」
アルガムの言葉にジェイドも納得する。
要は、ゼネスの成長こそ喜ばしいが、自分達が足枷になっていたという事実が確定したことで、罪悪感にさいなまれていると。
「けどよ。本当にそうだったかはわからねぇんじゃねぇのか?」
「そうだな。たまたまの可能性だって捨てきれねぇだろう。だが、それを本人達がどう思うかが問題だからな」
ジェイドの疑問にアルガムも同意する。
単にゼネスが晩成型だっただけかもしれない。
だが、
「気休めはいいんだ。薄々、俺達も気付いてはいたんだ。ゼネスのレベルだけが頭打ちになっている原因は俺達にあるんじゃないかって。じゃないとおかしいだろ? 10年以上。レベルが上がらないだなんて」
一番長い付き合いだというクライフがそれを否定する。
「鍛えて強くなるには所謂、壁を破る。殻を破るという行為が必要になりますけれど、ゼネスさんの場合はそれが上手く行かなかっただけ・・・という可能性はございませんの? 武に身を置く者からするとよく聞く話ですわ」
そんな中で唯一、武道にあって自己を研鑽してきたキューティーが聞く。
「いや。これはレベル100に到達しないとわからないことだと思うんだけど、99から100の間にはそういう鍛錬の時に感じるような壁みたいなものはないんだ。代わりに、なんというか・・・ちょっとしたコツみたいな、自分だけの気付きが必要になる」
「気付き・・・ですの?」
「ああ。俺の場合は魔力の流れというか、自分の体と着用している物とで、魔力を流した時の抵抗の差を理解した瞬間だったと思う。そういうほんの少しの違和感が消えた時。あるいは現れた時にレベルが100になるんだ」
クライフの説明にエリックとフェリシアがレベル100を迎えた時のことを思い出しながら続く。
「僕も似たような感じで、魔法を発動する瞬間の周囲への影響の違いが気になりだした辺りでレベルが100になった気がします」
「私は祝福による効果を実感した時でしょうか? 特に結界や領域を作ることで明確に線引きされた感覚がありましたね。時期的にも符合するはずです」
「アタシは・・・どうだったかしら?」
2人とは違ってアンナは当時のことに心当たりが見いだせなかったが、
「私はギフトが進化した時だね。そう! あの時もゼネスと研究をしていたはずなんだが・・・どうして彼はレベルアップなんて言う重大なことを私に黙っていたんだ? それがわかっていれば、超越現象の研究はもっと進んでいたというのに‼」
「ああ! じゃあアタシもあの時だったんだ!」
ジーナの言ったギフトの進化が自分にもあったことでなんとなく思い出せた。
ジェイド達にしてみても、今後自分達にも起こり得る話に興味は深々だ。
しかし、そうなると気になるのが、
「私としてはそれも殻を破るなどの例に入るかとは思いますが、それより。もしそれが本当であるならば、そのようなことが起こる要因というか、条件のようなものがあるのではございませんの? ゼネスさんはそういう機会に恵まれなかったのでは?」
どのような状況なら、そういった感覚が湧いて出るのか・・・だ。
日常的な瞬間であれば、それこそ才能の有無が大きくかかわってくるのだろうが、聞いている限りでは、戦闘や研究といった非日常的な場面での話だと見受けられる。
だとすれば、そういった場面に立ち会う回数が少ないほどレベル100への道は遠くなるということであり。逆に、回数だけ多くしても条件が整わなければ意味がないのであれば、その条件とはなんなのか? を知ることが自分達の成長にとって大事になってくる。