作品タイトル不明
いつか憧れた場所で
「ここが、サルベージ・・・・・・」
「思ったより人がおりますのね?」
「そうね。活気があるのはいいことだけれど、少し拍子抜けしちゃうわね」
「皆さん冒険者なんですかね?」
「半分は商人。買取をやってるみたい」
「販売も行っているようです。売れるのでしょうか?」
それぞれが好き勝手に、見たままの感想を述べる。
見渡す限りの目新しさに、どうすればいいのか? という疑問が浮かび上がる一行だが、事前に教育係であったゼネスから言われていたことを思い出す。
「そうだ! ギルドに行かねぇと・・・」
「そういえば、活動拠点の登録を更新しておけって言われてたわね」
しかし。
「どれが、冒険者ギルド・・・?」
ケイトの声に全員が当たりを見るが、その甲斐も空しく答えは出ない。
”栄光ある騎士団”の一行にとって、サルベージは今日が初めての土地。
数ある建造物から、目的のものを見出すのが容易であるとは言えない。
本来なら、その苦労を軽減するために、各村や町で冒険者ギルドを見分けやすいよう、ギルドの印が描かれた板などが取り付けられているのだが。
ここサルベージではそのギルドの印が描かれた板があまりにも多すぎた。
右から左まで。ズラリと並ぶ建物のほとんどにそれが掲げられ、その下には別の板が連なる。
別の板にも記号として印が描かれ、中には鍛冶屋・宿屋のようなわかりやすいものもある。
けれど元の印以外に、ギルドを示す記号に心当たりがない。
わかるものを弾いていっても、まだ余りある選択肢の中から適当に選ぶのは、流石に博打と言わざるを得ない。
「どういたしましょう? ジェイド様」
隣に侍るキューティーが冒険者パーティー”栄光ある騎士団”のリーダーであるジェイドに決定を仰ぐ。
「そうだな・・・」
ジェイドは少しだけ悩んだ素振りを見せてから、
「あそこで聞きゃわかるだろ」
一つの大きな建物を指差す。
「酒場、ですか?」
その先を見たヨハンが呟く。
そこにはジャグが簡易に描かれた板が取り付けられていた。
『なんでも人に聞きゃぁいいってもんじゃねぇが、考えてもわからねぇことは考えるだけ無駄だ。そん時は自分の立場をちゃんとわきまえておけよ? 国境を越えた以上、こっから先じゃぁ貴族の身分は使えねぇからな』
ジェイドは途中、ゼネスに言われたことを思い出しながら、どうやって聞いたものか知恵を巡らせていたが、
「それはいいのですが、お酒は飲まないでくださいね」
最年少のリミアに釘を刺されたことで、体面を取り繕うのが馬鹿馬鹿しく感じられた。
この間のゼネスもそうだったが、酒の失敗は何度でも擦られるものらしい。
それを知っていればあんなこと・・・とジェイドは頭を抱えたくなったが、ここで抱えてしまえば、かえって二日酔いではないかと揶揄されそうだったので、どうにか堪えた。
そうして。頭と心に若干の痛みを抱えながら、一行を連れてジェイドは酒場へと踏み入る。
素直に今の自分達の状況を打ち明け、協力を得られるようにしよう。
そう心に誓って。