作品タイトル不明
手練・修練・試練5
「よくやった」
拍手をしながらジェイド達に近付く。
すると、遠巻きに見ていた隊商員達からも拍手と称賛の声が飛ぶ。
「凄かったぞー‼」
「強いな! 君達は!」
「まさか無傷で勝なんてなぁ・・・」
そんな声を聞いて、観客がいたことを思い出したのか、気恥ずかしそうにしながらも誇らしげなその顔は、きっと一生涯忘れられねぇだろう。
「見てたかよ?」
「ああ。しっかりとな」
「ハッ‼ ならいい」
それだけ聞いて、ジェイドは満足したのか歓迎の雰囲気高まる隊商の方へと歩いて行った。
その先で大勢に囲まれているが、盛況なようで問題なさそうだ。
俺は視線を戻し、
「お疲れさん」
「グルゥァ‼」
まずは翼竜を労う。
それが終われば大きく翼を広げ、
「うわっ――⁉」
バサッ! と一気に空へと駆け上がる。
その時に発生した突風に驚きながらも。
空を見上げ、翼竜を確認したヨハンが問う。
「もう行っちゃうんですか?」
「アイツにも、やらなきゃならねぇことが出来たんだろう」
「それって・・・・・・?」
「強くなることだ。お前らに負けねぇぐらいにな」
そう言って頭を撫でると嬉しそうに笑うヨハン。
そこに。あの時に泣いていた、弱い子供の顔はない。
もう心配はない。
俺はこいつらの未来に、不安を抱かずに送り出してやれる。
「けど、その前に。さっきの戦闘について、確認しておいてもいいか?」
「ええ。構わないわよ? なにが聞きたいかしら?」
戦闘指揮を取っていたエイラに視線を移して話す。
「そうだな。あれは全て予定通りだったのか?」
「そうね。大筋は最初に決めた作戦通りよ」
「そんな素振りは見えなかったが?」
「あなたが言ったんじゃなかったかしら? あらかじめ、どう戦うのか決めておくのも手だって」
「つまり、翼竜との戦闘を想定してた・・・ってことか?」
「そういうことになるわね。まぁそれも、ゼネスさんがB級の指標としてワイバーンの名前を出したからっていうのが大きいかしら。まさかこんなに早く戦うことになるとは、思ってもみなかったけれど・・・」
「だが勝った。しかも先に考えておいた対策通りに。十分じゃねぇか?」
そう聞くがエイラは首を振る。
「手加減されていたのは私達もわかってる。手放しで喜ぶほどじゃないわ。万が一を考えて私の回復魔法は温存しておいたのだけど、ワイバーンはそれを必要としないどころか、元気に飛んで行っちゃうんだもの」
「アイツはタフだからな。普通のならあれで倒せてただろう」
「そこは、その普通のと出会った時にでも確かめることにするわ」
「そうだな。それがいい」
随分と冒険者らしいことを言うのが似合うようなった。
「じゃぁ、ヨハンが焦ったように仕掛けたのも作戦だったってことだな?」
「それは・・・本人から聞けばいいんじゃない?」
一瞬だけ視線を逸らして、思い出したようにヨハンを指差しすエイラ。
「あれは! その、緊張で・・・・・・ご、ごめんなさい‼」
しどろもどろな態度から、堰を切ったような謝罪。
深く下げられた頭からは、折角褒めてもらったのに! という思いがひしひしと伝わってくる。
「くっくっく。そうか。張り切った結果か」
「はい・・・そうです・・・」
「そんな顔するな。次からは冷静になれるよう努めればいい。今回は失敗しなかったことを喜んでいいんだ」
「は、はい!」
恥じ入るような顔をしていたヨハンは、目元を拭った後、無理やりにでも胸を張る。
「わかってて、止めなかった理由は?」
「なんていうのかしら・・・感覚? 的な話になるのだけど。下手に止めると調子が狂いそうだったから。それに、仕掛ける瞬間を気取られたくなかったのよ。いけなかったかしら?」
「いや、それに関しては結果が全てだ。仲間の状態を一番知っている自分の感覚を信じるのは、別に悪いことじゃねぇよ」
それ故に重い責任が付きまとうが、そのことについては今さら言うべきこともない。
「それにしても、あんな罠の使い方・・・よく知ってたな?」
顔をヨハンへ向け直して言うが、
「あ、いえ! あれはケイトさんが・・・」
「ケイトが?」
その返答を受けて今度はケイトの方へ。
「あの使い方はジーナ様に教わったの。その、ゼネスさんが寝てた間に」
ああ、なるほどな。
ジーナは魔法道具の開発もやっている。
罠もその一部なんだから、そういう知識もあるだろう。
「きっかけは大魔法の制御について、だったけど。魔法道具があれば、上手く行くかもしれないって」
「だからって。ぶっつけで魔法を収束させる道具にするとは思い切ったな」
「雷魔法なら簡単だってジーナ様が言ってたから」
「つーことは・・・リミア。お前の魔法も?」
「はい。水には雷を引き寄せる性質があることは知っていました。なので、威力ではなく相手を濡れさせることを重視した結果です」
淡々と答えているが、大したやつだよ。
自分の得意とする魔法を、仲間の為に踏み台のように使う。
ちゃんと仲間だと思えてなけりゃぁ、変な自我が邪魔してそういうことは出来ねぇもんだ。
ヨハンとリミアは後からパーティーに加わった。それも、なし崩し的に。
だから、馴染めているのか不安もあった。
だが、機械的にただ指示を聞いていだけじゃなく、自分で考えて協力してるってんなら、そこには確かな信頼と尊重がある。
それは立派な仲間の証だ。
最早、疑う余地もねぇ。
「雷と水の特性を理解し作戦を立て。条件を整えるために、誰に言われるでもなく、それぞれが自分で考えて役目をこなす。いいパーティーになったな」
笑い合う俺達の中で、
「あら? 私の活躍がございませんわよ?」
キューティーだけが納得いかないと声を上げ、
「ジェイド様! 戻ってきて頂きけませんこと⁉ 私達の活躍だけが評価されておりませんわ‼」
さぁ早く‼ と呼び戻されたジェイドと管を巻く。
それを見て、まだ酔っぱらってんじゃねぇのかと揶揄されたりと、くだらない時間を過ごした後。
俺は1人。
南の霊峰:アドレスを降りた。