作品タイトル不明
手練・修練・試練2
「要するに。どういうことだ?」
「こいつはここの門番? だと門がねぇし、番人だと人じゃねぇから・・・番竜? とでも言うべき存在だ。出入りする人間を値踏みしてんのさ」
「グルルァ!」
そうだ! とでも言っているのか、腕を上げ、翼を広げて答える。
まるで威嚇でもしているみたいだな。
「値踏み・・・ってことは結局戦うのかよ?」
「まぁそうだな。霊峰へ踏み入るための最後の試練とでも思え」
「なら一々止めるなよ! 気が抜けるだろうが‼」
ジェイドはそう言うが、
「殺し合いじゃねぇからな。それに、お前らだけの問題でもねぇだろ?」
俺は隊商へと視線を送る。
「本当の遭遇戦だったら、お前らはアレ全部を守りながら戦わなきゃならなかったんだぞ?」
「それは・・・いや! でもあんたが言ったんじゃねぇか‼ 今の俺様達ならワイバーンにだって勝てるって‼ あれは嘘だったのか⁉」
「そりゃ普通の推奨討伐等級B級の翼竜が相手ならな。アイツは見ての通り歴戦の猛者だ。個人A級でも1人じゃ手に余る相手だぞ。噂じゃぁドラゴンにも喧嘩を売ったことがあるとか言われてる。そんな相手にまで勝てる自信があるのか? 隊商を護衛したまま?」
ぐっ⁉ と言葉を詰まらせるジェイド。
「最後の見送りなんだ。せめて安心して送り出させてほしいもんだがな?」
「そういうのであれば、このように大事なことは前もって教えておいて欲しかったのですが?」
「そうですよ先生! それにその値踏み? に失敗したらどうなるんですか?」
リミアとヨハンがここぞとばかりに抗議して来る。
「例えどんな状況であっても備えだけは万全にっつーのは教えてきたはずだ。だったら、先に知ってようが知らなかろうが違いはねぇよな? もしアイツの眼鏡にかなわなくても死にゃぁしねぇんだ。踵を返して麓の町で腕を磨け。もちろん。それなりの金がかかることは、さっき説明したとおりだ」
これを厳しいと取る奴もいるが、どっちかっつーとこれは番竜の優しさだ。
アイツも本気で攻撃してくるわけじゃねぇ。あくまでも腕試し。
相応の実力があるかどうかを測るだけだ。
それがないままアドレスへ踏み入れば、待っているのは確実な死の未来。
だから冒険者各位はこの試練を拒否しないし、させもしない。
やめさせようなどとするはずもない。
「その試練とかいうのを受けなきゃいけないことはわかったわ。けど、その前に。気になったことがあるのだけれど、聞いてもいいかしら?」
「なんだ?」
「あのワイバーンはゼネスさんが呼んだの? まさか馬車が通るたびに現れるわけじゃないんでしょ? もしそうなら、商会の馬車が通るたびに現れるはずだもの。だったら、あの人達があんな反応を見せるわけがないわ」
「流石にアイツもそこまで暇じゃねぇだろうからな。半分はお前の言う通り、俺が魔力を使って呼んだ・・・が、それだけじゃねぇ」
エイラが本当は試練なんか受けなくても通れるんじゃないのかと訝しんで鋭い質問を投げてくるが、
「見ろ。先頭の馬車に2つの旗が立ってるだろ」
「それが?」
「片方は商会を示す旗。もう片方が試練の挑戦を伝える旗だ」
この翼竜による値踏みは今では冒険者ギルド御用達となっている。
サルベージに出入りする商会もそれを了承しており、麓の町に支店を構えているところにはこの旗が常備され、アドレスを登る時には各種旗が取り付けられる。
それを見て、翼竜は現れる。
現れない場合、現れるまでここで休憩することもあるらしい。
「つまり、ワイバーンは旗を見分けられ、意味も理解できる・・・ということですの⁉」
「竜種は基本的に賢いからな。俺達の言葉も理解は出来てる。声帯の都合上、人の言葉は話せねぇみてぇだけどな」
うんうん。と首を振る翼竜。
「そうなんですの⁉ 戦闘になっても、余計なことを言ってしまわないように気を付けないといけませんわね!」
問題はそこだろうか?
だが、声に出した作戦や連携は実行までが遅ければ遅いだけ対応されるわけだし、間違っちゃいねぇか。
「わかったら準備しろ。そろそろお待ちかねのようだからな」
「ッ! 言われなくても! 俺様達の実力・・・認めさせてやる‼ アンタはそこで黙ってみてろ‼」
そう宣言して前に出るジェイド。
言われなくとも、キッチリ目に焼き付けて、胸に刻んでいってやるよ。
だから―――是非とも。期待させてくれ。