作品タイトル不明
side――ケイト1
ハッ⁉ っと目を覚ましたのは朝になってから。
失敗した‼ 心に突き刺さるような鈍痛が胸にのしかかる。
私は急いで支度を済ませて宿の部屋を飛び出した。
大丈夫。
今度は目的の本も忘れてはいない。
まだ少しモヤのかかったような頭で、おぼろげな記憶を必死に手繰り寄せつつ、案内してもらった研究所へと走った。
少し迷ったけど、無事に研究所へ到着。
扉の鍵はかかってなかった。
私が宿に帰った時から、中の様子は変わってないと思う。
ロビーから奥へ。
勝手に入っているようで、ちょっとおっかなびっくりしているのは内緒。
細い通路の先にはあの扉が待っている。
けれど、装置を触るのは憚られた。
勇気の足りない私は仕方なく、あの扉をそのまま開けて、その奥に続く階段を登った。
ジーナ様の部屋は最上階たる4階だったはず。
昨日? 駆け下りた時の記憶だから自信はないけど・・・。
ここまで走り通しだったから、息が苦しい。
お腹の横が痛い。
でも、歩くなんて考えられない。
ジーナ様も。キューティーも。
休んだ方がいいといってくれたけど、私としてはもっと少しの予定だった。
こんなにきれいな青空が見れるほど、寝過ごすつもりじゃなかったのに!
階段を上って3つ目の扉。
転がるように押し開いて廊下へ飛び出すと、その先には見覚えのあるカーテンが。
「す、すみません‼ お言葉に、甘え過ぎて! 寝てしまって――ッ⁉」
シャッ‼ と開いた向こう側では、床に横たわる2人。
しかも、ジーナ様が押し倒されて・・・・・・‼
「おや? いいところに!」
「し、失礼しました⁉」
2人がそんな関係だったなんて⁉
動揺のあまり即座にカーテンを閉めてしまった。
でも、思い返してみれば・・・あの2人の、お互いの理解は度を越していた。
そうであるならば、ああいった関係であったとしても、なにもおかしくは――・・・。
「おーい。助けておくれよー。このままでは私が壊れてしまうー」
なんて、考えている場合ではなかった‼
急いで中へ入ってジーナ様の加勢をしなければ‼
しかし、私の考えは・・・そのものが杞憂だった。
「いやー助かったよ。意識を失った彼を支えようとしたところまでは良かったんだけどね。予想に反して、装備を付けたままの彼の身体が重くてね。どうにかそのまま倒れないように頑張ったのだけれど、まさか下敷きにされてしまうとは、我ながら自分の力を過信していたようだ」
ふっふっふ! と楽しそうに笑うジーナ様を前に、私は恥ずかしくて顔が見られない。
「す、すみません・・・その・・・勘違いを・・・」
「いやなに。あんな場面をいきなり見せられれば誤解もするだろう。もしあの時ここに来たのが君じゃなければ、既成事実にしていたかもしれないね」
「それで、いいんですか?」
「私の結婚相手としては理想的だね。家柄も悪くはないし、私の活動を邪魔はしないだろうし、冒険者としての経験もあるから、家事に料理に研究に、どれをとっても役に立ってくれるだろう」
「研究・・・はわかりますけど、家事や料理は使用人の仕事じゃ・・・?」
「研究所に使用人を連れてくることは出来ないだろう? だから、皆自炊しているよ。それが出来なければ外食だね。ただ、外食するならば時間を気にしなければならないからね。真夜中に野菜をかじっているものもいるよ?」
「大変、なんですね」
「ああ。大変だとも! 婚期を気にしていられないくらいね‼」
そこに力を入れる辺り、ジーナ様も婚期は気になっているのかもしれない。
「でも、その・・・ゼネスさんのこと、好き・・・なんですか?」
「私が? いやいや、好きなのは彼の方だ。ゼネスが私を好きなんだよ‼」
胸を張って答える姿を見てから、部屋の真ん中に寝かされているゼネスさんを見て思い出す。
そんな感じだったかな? むしろ・・・。
「どこで・・・そう、思ったんですか?」
「ん? 君も見ていただろう? ゼネスが私をどれほど理解しているか!」
「それは・・・確かに。でも、態度はその、嫌っているように・・・見えましたけど」
「ふふ。そうだね。けれど、嫌よ嫌よも好きのうちという言葉もある通り、表面的な態度が全てではないと、私は思うわけだ。なにより、本当に嫌いな人間と同じ空間に居ようと思うかい?」
「・・・思い、ません」
態度が考えと一致するとは限らない。
それはそうかもしれない。
けど、
「本気なら、態度を改めるんじゃ・・・?」
態度を偽り続けることに意味はあるのかな?
「ふむ。なにかあったのかい?」
「あっ! いえ、その・・・・・」
私は。どうしても気になったから、自身の過ちに触れつつ、ジーナ様に聞くことにした。
態度を偽らなければならない理由や、それを見抜く術を。
この人なら、答えをくれるんじゃないかなと思えたから。