作品タイトル不明
実験か事件か人権か
「それで? 実験を続けるにしても、なにをするつもりだ?」
「それが問題なんだよ! とりあえずは超越現象について調べてみようと思うんだが・・・さっきも言った通り、状態維持の可否や解消の条件を試す場合、どうしても時間がかかってしまうだろう? だが、そうしている間にも、気になることは山積みなわけだ‼ これはどうしたものだろうね⁉」
「俺が知るか。っつーか、維持はしねぇ方がいいだろ」
「どうしてだい?」
ジーナはなんの気無しに首を傾げるが、わかってねぇのか?
「なにが起こるかわからねぇのはもちろんだが、解消方法は今のところ魔法の使用だけだ。さっき試して無理だったように、俺が魔力を吸い出すことも出来ねぇ。そんな状態でお前が意識を失うようなことになれば、最悪そのまま死ぬことになる」
今のお前はパンパンな風船の類似品だぞ。
「なるほど、確かにその通りだね。けれど、気付けの魔法ぐらい君も使えるだろう? それに、体調を回復させる魔法だって」
「そりゃそうだが、意識を戻したところで、魔法の発動まで間に合うかはわからねぇだろうが。そのまま体が魔力に耐えかねて爆散・・・なんつーことになるかもしれねぇ」
「恐ろしいことを言うね! 想像しちゃったじゃないか‼」
身震いをしながら抗議して来るが知ったことじゃねぇ。
もし仮にそうなった場合、それをもろに喰らうのは俺で、しかも後始末までやらされかねないからな。
「だとしたら、なにか魔法を使う方向で考えるけれど、時にゼネス?」
「なんだよ」
「君の魔力はまだ残っているね?」
「・・・・・・残ってるが、それがどうした?」
「ふっふっふ! わかっている癖に。折角だからね? その残りの魔力も、渡してもらおうか?」
つまり、今以上に魔力を保持できるかを確認したい・・・っつーことだな。
ふざけやがって。
なにかあっても、俺に介護させればいいと思ってんだろ。狂気の変態め!
つっても、ここでなにか言ったところで止まるわけでもねぇ。
「せめて、なんの魔法を使うかは先に決めやがれ。それによっては拒否するからな」
「む、仕方がないね」
顎に手をやってほんの数秒。
「やはり攻撃魔法がいいと思うんだが、どうだろう?」
とんでもねぇことを言いやがる。
「却下だ馬鹿が! この研究所を消しとばす気か⁉」
「ここで使うわけないだろう⁉ 馬鹿なんじゃないのか⁉ 屋上に出て、山の麓に向かって撃つさ‼」
「だから馬鹿なのはお前だ‼ それも大概だろうが‼ 今何時だと思ってやがる‼ しかも、山の麓なんかにぶっ放したらモンスターが荒れるだろうが‼ こっちはこの後、移動なんだよ‼ ふざけるなよ‼」
「音と光は仕方ないだろう‼ 攻撃魔法が一番威力の違いが分かりやすいんだから‼ なにより、ここは天下の私がいる魔法研究所だよ! 多少のことなら皆許容してくれるさ‼ それに、移動の行先はどうせサルベージなんだろう⁉ だったら、あの扉で送ってあげると言ったじゃないか⁉」
研究や実験の為に思考を曇らせて非常識なことをいうのはまだいい。
だが、
「あいつらは、初めてアドレスを登るんだよ‼」
こいつは! 一応は今でも冒険者の癖に、忘れてやがんのか⁉
その言葉を聞いて、ジーナも流石に思い出したのか、ハッとしたような表情を見せる。
「そうか、あれは大事な儀式だったね。私にはあまり関係がなかったから、すっかり忘れていたよ」
どうやら放った言葉の意味は思い出せたようで、ついでに過熱していた脳も正常に戻ったらしい。
「うーん、しかしそうなると困ったものだね? この狭い空間じゃあ大した魔法は使えない。君の魔力も無いとなると、いよいよ検証の方法が・・・」
「はぁ・・・」
正直、面倒だからやりたくはなかったんだが、ここでこいつの欲求が発散されねぇと後々に響きそうだ。
「お前に魔力を渡した後に、俺が魔力を回復すりゃぁいいんだろ。精神系の魔法なら解除までの時間で、ある程度威力を推し測れるはずだ」
「そうか! その手があったね! でも待ってくれ? 魔力の回復はどうするんだい? 残念だけど、私には持ち合わせがないよ?」
「俺の常備してる分がある。足りなかった時は―――そこの魔法道具から頂くが、構わねぇよな?」
「いいだろう! 魔道具から使った分は明日にでも私が補充しておこう! 駄目になるほど忘れることは・・・たぶん、ないよ」
「ま、そこはどうでもいいさ。最悪使い物にならなくなっても、俺は困らねぇからな」
危険があるかもしれねぇ魔法道具であっても、魔力を充填した状態で保存するのは、魔力が空の状態で長年放置すると機能を失うからだ。
今回はその魔力が役に立った・・・つーより、使いどころがあったってところか。
だから魔力を奪い、結果として道具の機能が失われようとも、問題はない。
むしろ問題なのは、どんな魔法が使われるかだ。
「下手な魔法は使うなよ?」
「私が魔法を使うんだ! 下手にはなり得ないに決まっているだろう!」
「そういうことじゃねぇよ!」
「大丈夫だ! 安心したまえ! 私が君のことを、とても気持ちよくしてあげよう‼ なに、遠慮することは――って痛いよ⁉」
「普通のにしろ。普通のに」
「普通の快楽魔法じゃないか! あ痛ぁっ⁉ わかった! じゃあ誘惑――痛い⁉ なら幻惑――っ⁉ 無言で叩くのはやめてくれないかい⁉ 世界的にみても大切な頭なんだよ⁉」
実験自体がまだこれからだってのに、俺はすでに疲れ始めていた。