軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

乱高下機嫌激元気

「うん。まぁ・・・それはいいとして、だね? こっちの扉がどこに繫がっているのか、気にならないかい?」

「向こうにって言ってた時点で、もうわかりきってると思うがな」

「そ、それはそうかもしれないけれど! もう片方は⁉ そっちはまだわからないだろう⁉」

「当主になったんだったよな?」

「・・・・・・・・・」

ここでの沈黙は図星ってことでいいんだろう。

「どう、いうこと・・・?」

ジーナに憧れてはいても、私生活や活動内容まで詳しくは知らないだろうケイトが困惑している。

「こいつは曲がりなりにも冒険者として登録されてる。そして、その権利も存分に使ってるわけだ。だから、それなりの活動は示さなきゃならねぇ。そうなった時、一番効果的に実績を作るならどこになるかっていやぁ・・・」

「そっか。南の霊峰、アドレスの攻略」

「そういうことだ。つまり2カ所の内、片方はアドレスってことだな。さらに、こいつは実家だったマーラグ公爵家の爵位を継いで、今現在は当主らしい。っつーことは、マーラグ公爵として顔を出さなきゃならねぇ場面も少なからずあるわけだ。マーラグ公爵家は王家の血筋を継ぐ由緒正しい家系だが、領地は持たねぇ皇都の貴族で、その仕事は政。ここまで言えば、もうわかるよな?」

「もう片方は皇都?」

全てが俺の予想通りだったのか、ジーナはいじけたように指で壁をなぞる。

「そうだよな?」

「あぁそうだとも。全くもって、君の言う通りだよ」

反応がなかったんで改めて声をかけると背を向けたまま答える。

「・・・ズルい」

「はぁ?」

「ゼネスさんばっかり、ジーナ様のことを知ってる‼ 私の方が、ずっと! 憧れてたのに‼」

まさかそう来るかって反応に、頭を抱えそうになった瞬間。

「それは仕方がないことだよ‼ なんたって彼は、私のことが好き過ぎるんだからね‼」

なぜか元気100倍とでも言わんばかりの復活を見せるジーナ。

面と向かって憧れだなんて言われりゃぁ確かに、気を持ち直すこともあるかもしれねぇが、

「勝手なことをぬかすんじゃねぇよ‼」

誰がいつ、お前のことを好きになったって?

しばらく騒々しい時間が続いた後、

「そういえばケイト君はどうして、こんな時間のあんな場所にいたんだい?」

急に思い出して気になったのか、ジーナがそんなことを聞いた。

「えっ? あ、それは・・・」

ケイトは答えながら服の内側にしまっていた手記を取り出す。

その服。どんな構造だよ・・・。

「それは⁉ 私の手記じゃないか⁉ どうして⁉」

「あの・・・こ、ここに来る前。ゼネスさんから・・・」

「人から貰ったものを、さらに他の誰かへ――っていうのは、感心しないな?」

「あれは貰ったとは言わねぇ。押し付けられたっつーんだよ」

「なにを言う! あれだって君との研究の成果だよ? 私の手元にだけ残すのは悪いだろうと思って、わざわざ君の為に作ったというのに‼」

「実験の結果なんざ書き起こさなくとも忘れねぇよ」

「忘れない⁉ ッ! いや、そんなはずがない。どれだけ重要な事でも、記憶というのは薄れていくものだ! だから、キチンと記録に残しておくべきなんだ‼ それを君は・・・まさか、読んですらいないと言うのかい⁉」

「んなわけねぇだろ! 読んだ上で。内容も覚えてるし、忘れようもねぇから、もう俺には必要ねぇと。そう思ったから旅立ちの餞別として。お前に憧れてるっつーケイトに送っただけだ」

「なっ・・・んだ。ちゃんと目を通して、さらには決して忘れないというのならいいさ。知識は独占するものじゃないからね。教え、広めて、ようやく価値を得るものだ。君にもその考えがあったようで私は嬉しいよ。なに、忘れてしまっても大丈夫だよ。その時は私のところへ来たまえ。さっきも言ったように、原典は私が持っているからね。何度だって見せてあげよう」

「だから忘れねぇよ」

「んっ! そうか」

なんだ? 情緒が不安定な奴だな。急激に態度を変えやがって・・・と思ったが、昔からこんな感じだったな。

なんだかんだ久しぶりだから忘れてたのか。

記憶は薄れるもの、か。

「ああ! すまないね! それで? その手記に何か気になることでもあったかな?」

「それがこの・・・って、あれ?」

「どうかしたのかい?」

「す、すみません! もう1冊、本を持ってきていた・・・つもり、だったんですけど・・・・・・」

「忘れてしまったんだね?」

「は、はい。すみません・・・」

しゅんとするケイトにジーナは優しく微笑みかける。

「よく見ると酷いクマだ。研究続きの私より顔色が悪いじゃないか。少し休んだらどうだい? なんなら浴室も使ってくれて構わないよ?」

「いいいい、いえっ! それより、そのっ、本を取りに戻っても・・・?」

「別に止めたりはしないし、逃げたりもしないから安心するといい。だから、少しくらいは寝てきてもいいんだよ? 睡眠不足は脳の働きを阻害するからね」

す、直ぐに戻ってきます! と言い残し、ケイトは飛び出していった。

図らずも2人きりにされたわけだが・・・さて、どうするべきだろうな?