軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

上昇奇行

「ほぉら、これで証明されただろう? 私達の関係に他人という言葉がふさわしくないということがね!」

「いいか? ケイト。物事には理由がある。意図せず起こることだってあるが、物作りにおいてはそうじゃねぇ。利用目的や意図を明確にしたうえで設計図を作るからだ。当然、試作もする。それらの結果があって――」

「言い訳は見苦しいよ? それに、彼女は君の話を聞きたくてここへ来たわけじゃない。さあ! 私の部屋へ案内しよう!」

人様の言葉をぶった切って、勝ち誇ったようにジーナが笑い、ケイトは誘われるままに扉を潜る。

仕方がねぇから俺もその後に続く。

当たり前だが、扉の向こうに見えていた部屋へ到着する。

さっきの話を聞く限り、ここはあいつの部屋らしいが・・・俺が部屋へ入ったことを確認してから、ジーナは扉を閉める。

すると、扉はサッ! と姿を消し、扉のない、門だけの入り口が目に入る。

「さっきの扉はあのままでいいのか? 装置をいじらねぇと、誰かが入ってくるじゃねぇか?」

「こんな時間には誰も来ないさ。それに心配しなくとも、あの装置は時限式なんだ。君の魔法に習ってね」

「言葉の意味がちげぇだろ」

「細かいことを気にしすぎると、その白髪がまた増えることになるんじゃないのかな?」

「ほっとけ。それより、あの申し訳程度の布はなんだ?」

「一応、ここは私の部屋なんだ。乙女として、入り口が開きっぱなしと言いうのはどうかと思ってね? 少々不格好だが、部屋の外側に視線を遮る布が付けてあるのさ。適当なカーテンを流用したものだから、丈が足りずに足元は見えてしまうけれどね」

他にも。人影なんかも映すだろうから、中にいるのが丸わかりで、恥ずかしさを抑えられているのかは疑問だが。

「こっちが下りの扉ですか?」

ケイトは同じ壁の少し離れた隣に設置されている扉の前に立って聞く。

「そうだとも。同じ装置があるだろう? それに、扉の構造も、色も形も、全く同じものだ。それをまさか、見もせずに当てられるとは・・・私も予想外だったよ」

「だから――ッ‼」

「おっと! そうだったね。この部屋の説明がまだだった! ああッ‼ 見るのは構わないけれど、触るのはやめておくれよ? 中には危険なものもあるからね!」

「そんなもん部屋に置くなよ」

「仕方がないだろう? 研究室に置いておくと、彼女よりも好奇心旺盛なうちの研究員がバラそうとするんだからね。私の部屋に保管しておくのが一番安全なのさ」

目を輝かせながら本棚やら、硝子棚やら、よくわからん棚やらを見て回るケイトを見守るようにへばりつき、1つ1つを丁寧に説明しつつ自慢するジーナ。

しつこい勧誘もなさそうだし、俺と話す気もなさそうだし、やっぱり暇なことに変わりはねぇな。

手持無沙汰に部屋を眺めていると、

「おい! まだ似たような扉があるじゃねぇか!」

今の今まで見ていた扉と酷似した別の扉が、違う方角の壁に取り付けられているのを発見した。

「おや? もう見つけてしまったのかい?」

ジーナは半分だけ振り返るようにして、こちらを見る。

「入り口からは角度的に棚で隠れてようが、部屋の中にはいりゃ気付くだろ。普通」

「まぁそうだろうね。といっても、この部屋へ招待したのは君が初めてだから、その扉が私以外に見つかったのは初めてだよ?」

あくまで目の前のものに興味が吸われているケイトを引っ張って、またしても扉の前に集合だ。

なんなんだよこれは! どういう状況だよ! と叫びたくなるのを我慢して付き合う。

「見ての通り、転移扉だね。ただし! これは改良版だ。一方通行なのは変わらないけれど・・・なんと‼ 2カ所以上の場所に繫げることが可能なんだ!」

どうだ! 凄いだろう?

言葉でなく表情がそう告げている。

「凄い‼」

言葉で答えるのはケイトの役目のようだ。

「2カ所以上とは言うが、3カ所には繋がるのか?」

「・・・・・・」

一瞬の間。

「なんと! 2カ所に繋げることが可能なんだ‼」

「凄い‼」

とんだ茶番だ。

「あっちも同じく帰りようだな?」

「もちろんそうだとも。けれど、あっちは見せないからね?」

「どうしてですか⁉」

「ああ、ケイト君なら大丈夫さ。あっちは浴室なんだ。・・・・・・見たいかい?」

「冗談はよせ」

「本気だとも! 浴室に扉がないのは私も辛いのだけれど、研究が行き詰まると、どうしても汗を流したくなる瞬間があるんだ‼ 向こうに浴室を作ろうかとも考えたが、水の値段や安全面でこちらの方が優れているという結果だった! 一応あそこにもカーテンは付けてあるとはいえ、もし使用中に近付こうものなら―――」

「興味ねぇんだよ、そんな話。っつーか、直通が嫌なら脱衣所を作ればよかっただけだろ」

あっ。という顔に、やはりとんだ茶番だなと、思わずにはいられなかった。