作品タイトル不明
迷いある道
俺としては、いざという時の備えが欲しい。
そして、その数は多ければ多い方がいい。
だから、ここの連中を助けることにも意味はある。
移民とはいえ人手に変わりはねぇ。兵隊が増えるってことは、軍の力が増すってことだからな。
それに、あの連中。痩せてはいたがガタイはよかった。鍛えればそれなりの戦力になるだろう。
ついでに、貧民街からの協力も見込めるって考えりゃ、領主だけに恩を売るより対価を得られる。
放置して逆恨みされんのも馬鹿らしいしな。
だが、どうやって助ける?
一斉摘発を止めるだけじゃ意味がねぇ。
あの連中の不満が解消されねぇんじゃ、いつか同じようなことを起こすだけだ。
「移民の連中は男だけで来たのか?」
「いいや。移民、というより難民だからね。女子供だって居て当然じゃないかい? そっちもウチで預かってるけど・・・・・・まさか!」
「別になにもしねぇよ。ただ確認しただけだ。そいつらも含めて生活できるようになるまで、どのぐらいの見通しだった?」
「男共全員を軍に入れるまでだから、1年か2年を想定してたよ。女子供なら、それぞれ別の役割があるからね」
「男共は元から全部、軍へ入れるつもりだったのか?」
「ここじゃ他になれるのは盗人ぐらいさ。でも・・・」
「よそ者にゃ向かねぇわな」
地の利を持たない盗賊なんざ、羽のもがれた羽虫みたいな存在だ。
あっという間に牢屋にぶち込まれて終わりだろう。
「まるで、盗みを仕事と認めるような言い草ね? そういうのはどうかと思うのだけれど」
「良し悪しは問題じゃねぇからな。生きるためだと言われりゃ、覚悟はしてたんだろうな? としか言えねぇよ」
実際、一発あてるのを夢見て冒険者になっても、上手く行かずに東西に流れて盗賊崩れみたいな連中は多い。失うものがねぇ貧民街上がりなら尚更だ。
「子供はいいとして。女の方はどうなんだ? 仕事にはあり付けるのか?」
「そっちは問題ないよ。商人のところに預けりゃ店番くらいさせてもらえる。受付、給仕、呼び込み。どれも女の方が客受けがいいからね」
っつーことは、最初から男の食い扶持が問題だったわけだ。
色々ときな臭ぇとはいえ、現状の皇国は乱れてるってほどじゃねぇ。だから、男手を欲しがるところがなかったのか。
この、南で一番栄えている領都セイルスルーまで流れてきたのは、そういう背景もあったってことだな。
だとすりゃぁ、どっちにしても軍以外の受け入れ先がねぇ。
どうにかして領主様に受け入れてもらうしかねぇが・・・。
「今まで軍に入れたのは何人だ?」
「8人。今回で12人になる予定だったんだけどね」
「男共の数は?」
「全部で44人」
「女子供を含めりゃ100人近くか。そりゃ受け入れらんねぇわけだ。ここはよく受け入れられたな?」
「ウチだって限界ギリギリさ。でも、あの連中は純粋なここ生まれより、働けそうな体をしてたからね。1年以上ここで過ごせば、多少なりと郷心もつくんじゃないか・・・とも思ったからね」
貧民街生まれ、貧民街育ちとなると、健康状態がいい方のが珍しいからな。
「領主が受け入れを断った理由は?」
「金と、食料と、それに・・・まぁ、言ってしまえば全部ってことになるね。軍学校には元から入ってる奴もいるし、全員は入りきらないんだと。そうじゃなくても、44人は現実的じゃないらしい。教官をはじめ、関係者達の生活まで考えると、一気に人を増やすのは無理だってさ」
練度の問題か。
ゴルドラッセなら精鋭と呼ばれる連中を100人から指導してやがるし、500人以上を同時に指揮もできる。
だが、それは軍団長に至るまでの実力と経験があってこそ。帝国との戦争でも活躍した筋金入りだからな。
こっちの生え抜き部隊じゃそこまで面倒を見るのは厳しいか。
人にものを教えるってのは、思ってたよりよっぽど難しいしな。
「どうかしたのかしら?」
ついエイラへ向けちまった視線に気付かれた。
「一方的な施しを受けた後、これで移民を受け入れろ。なんざ言われたら、お前ならどうする?」
「無視するか、その移民を徹底的に排除するでしょうね」
だよな。
怪しすぎる。
後からなにを言われるか、わかったもんじゃねぇからな。
なにより、面子もある。
自分より立場が上の相手ならまだしも、どこの誰かもわからねぇなら検討にすら値しない。威厳を失うだけだ。
そもそも、それを気にしねぇなら一斉摘発なんて話にもなってねぇはずだしな。
あと残ってる手と言えば―――。