作品タイトル不明
目的地周辺で混雑が予想されます
「目的地ってあそこね?」
「そうだ」
領都セイルスルーの東の果て。これ以上行くと町の外ってところにそれはあった。高い壁が長く囲むそこが、俺の見ておかなければならなかった場所。
「軍人養成所・・・?」
少し遠めに立っているここから、エイラが出入口に張られている表札を読み上げる。
「あぁ、軍学校だな」
「皇都にあるのとはなにが違うのかしら?」
「階級が違う。あれは貴族が通うための士官学校だ。あそこを卒業すれば最低でも准尉からの出発だが、こっちは一兵卒を育てる機関。ここを卒業して軍に入っても二等兵・・・成績上位者でも兵長からだろうな」
他にも所属の違いなんかもあるが、一応の括りとしては皇国軍だ。辺境伯領は国境線警備の任を賜っているからな。領軍じゃなく皇国軍ってことになってる。指揮権は領主にあるが。
「にしても・・・アレはどういうことだと思う?」
「あなたにわからないことが私にわかるわけないじゃない。特に軍だとか、冒険者のことはね」
適当に質問したら俺にはない発想で答えてくれるんじゃねぇかと思って話を振ったが、エイラは素っ気ない返答しか寄こさなかった。
アレ―――っつーのは、出入口に出来た長蛇の列のことだ。
どいつもこいつもガタイはいいのに、どこか貧相で清潔感に欠け、暗い雰囲気・・・悲壮感のようなものを漂わせている。
こんな時期に入学希望がこれほど重なるか? いくら常時受け入れ可能っつっても、この数はおかしいだろ。
その理由について考えを巡らせていると、
「ここに来たのは皇都でのことが原因?」
予想外の言葉がエイラから飛び出した。
「ッ! 知ってるのか⁉」
「ええ、そうね。ゼネスさんは知らないかもしれないけれど、うちのお父様は宮内勤めなのよ。だから、あなたからなにか聞いてないかって聞かれたわ。皇都に来ていることは向こうで聞いたけど、それ以上はなにも・・・って伝えておいた」
「・・・そうか」
ただ知らねぇって答えるよりは信憑性もあるだろう。俺にまで話が来てねぇってことは娘の言葉を信じたってことだろうしな。
「誰かに話したか?」
「まさか! こんな面倒くさいこと、おいそれと話したりなんかしないわよ! ジェイド達にだって黙ってるのに・・・」
「そりゃぁ悪かったな・・・」
「それは・・・別にいいのだけれど・・・」
元々いい雰囲気ではなかったが、輪をかけて微妙な空気になる。
エイラの言う通り、ここへ来たのは御父上が皇都で巻き起こしている騒動の為。
なんの目的があって皇都の席巻なんざしようとしてるのか知らねぇが、その目的が翻意――つまり叛逆だった場合。それを止めるためには最悪でも南の戦力が必要になる。
自ら領主退き、地位を兄上に譲ったからと言って、その影響力は未だ強力無比。兄上だけじゃ止められねぇだろう。一声かければ間違いなく北の軍は動く。しかも、そこへ皇都の軍も・・・となれば、出来ないことなどないように思えるほどだ。
だからこそ、なにかあった時に対抗は可能か。すでに御父上にからめとられてないかを確かめに来たってわけだ。
だが、ここの軍の様子もおかしいのは一目瞭然。
外から見ただけじゃ内情まではわからねぇが、それにしたってあの行列は異常だ。
「とりあえず、ここから離れるぞ」
こうなっちまったら仕方がねぇ。面倒だが街中で情報を集めるべく、沈黙したままだったエイラに声をかけてその場を離れた。