作品タイトル不明
訪れ2
『なにかあったのか? って聞いた方がいいか?』
《ああ。是非にでも聞いてくれ》
『なにがあった?』
《北の英雄ダンデ・L・グラーニン様がおいでなすった》
『・・・・・・・・・』
《なにか言うことはないか?》
『生憎。俺もそれを知ったのは向こうを出る時だ』
《お前が皇都から離れたから姿を現したのかと思ったぞ・・・》
『御父上が俺の存在なんぞ構うかよ。それで? なんの用件だったんだ?』
《軍の再編成をやらせろと言っていたようだ》
『再編成を? ってことは――』
《そうだ。盗難騒ぎが軍内部にも及んでいたのがバレていたみたいだ。しかも、内通者がいることも掴んでいるようだったぞ》
『だからって、皇都の配置を部外者が出来るわけねぇだろうに。なにより自分は北の総司令官。ただでさえ北の軍部を牛耳ってるのに皇都まで手中に入れちまったら、反逆すらもやりたい放題になるじゃねぇか』
《当然。そういう意見が出た。だが・・・》
『だが?』
《その権限は息子に譲渡してきた、とのことだ。自分にはもはや関係がないと》
『そんな言い訳。通じるわけが―――』
《それがな。同じように言った人がいたらしいんだが、”私の息子を操り人形だと愚弄する気か? それとも、この私を愚弄しているのか?”って黙らせたそうだ》
『・・・・・・はぁ』
《お前の親父さんは今でも間違いなく英雄なんだ。逆らえるわけがない。皇王陛下にしても、旧知の間柄。あの人の言葉は無視できない》
『っつーことは、再編成は御父上が担うってのか?』
《わからない。ただ、その可能性もなくはない》
『再編成後の御父上は・・・・・・』
《皇都軍の最高司令官になるんじゃないか?》
『勘弁してくれ・・・』
《そう思うならお前がなんとかするしかないんじゃないか?》
『軍属でもない俺になにが出来る?』
《それを考えるのもお前の仕事だと、俺は思うな》
『無茶言うなよ』
《一番無茶苦茶言ってるはどこぞの英雄様だ。文句ならそっちに頼む》
こんな歳になっても自分は子供なんだなと感じさせられる。
俺にも、ベルにも、御父上を止める手立てはない。
家督も無けりゃ立場も足りねぇ。勝ち筋が見えやしねぇ。
『一旦、その話はいい・・・聞きたいことがあるんだよ』
《本当にいいのか? 放っておくとかなり面倒なことになるぞ?》
『放っておかなくてもすでに十分面倒だろ。それより、内通者の目星はついたのか? あの時お前に命令していた奴は十中八九向こう側だったはずだ』
《消えたよ》
『なにっ⁉』
《あの後すぐに件の英雄様が来て一斉検挙を行ったんだが、影も形もなくなっていた》
『そんな馬鹿な話があるか‼ かなり上層部にまで潜り込んでたんじゃねぇのか? 何人消えた⁉』
《一兵卒まで入れると正確な人数はわからないが、士官以上だけでも30人は居なくなったな》
『・・・・・・・・・ッ‼ 再編成ってのはそれのせいか!』
《ああ。そのせいで、どこもかしこも天手古舞だ。下っ端だけじゃなくて、指揮する人間まで居なくなったんだからな。年末から年始にかけて、まさかこんなことになるなんて考えてもみなかった》
『そりゃぁそうだろうな。そういえば、あの盗難騒ぎ。こっちではどう決着したんだ?』
《お前な・・・まぁいい。お前の指示通り、主犯はゲーニルって男になった。とはいえ、裏に誰かが居たのは明白。唆されただけの小物という判断もされた》
『ま、そうなるよな。アイツは間違いなく下請けだったからな』
《それでその犯人確保の実績でカールとリートが昇進。おかげで隊内で調子に乗って困ってるんだぞ?》
『そいつは悪かったな。つっても、他に方法がなかったんでな』
《ったく。結局あのゲーニルとかいうのはどうなったんだ?》
『祭りで処刑した』
《呆れたな! 全部の責任を擦り付けたのか⁉》
『そうするしかなかったんだよ‼ こっちはこっちで立て込んでたんだ‼』
《なにがあったらそうなるんだ・・・?》
『帝国の姫様が虜囚になってたんだよ』
《本当に。なにがあったらそうなるんだ⁉》
『俺が知るかよ‼』