作品タイトル不明
加護と教会
加護とは神の愛、その印。
持たざる者は人ではない、とまで言われた代物。
これを持つものは知らずのうちに不思議と会合する。
危機的状況に 陥(おちい) っても、怪我すらなく脱することが出来た。
死を覚悟したにもかかわらず、何事もなかった。
ありえないような幸運に助けられた。
人はそれを奇跡と呼んで 崇(あが) めた。
そして、その原因を加護に求めた。
実際に、加護レベルの高いものほどそういった奇跡と鉢合う機会が多かったからだろう。
教会はそれを触れ回り、神の存在を広く知らしめることで大きくなった。
言葉では言い表せないものだ。
”神のおかげ”とすることなど 容易(たやす) かったはずだ。
そうして力を持った教会は加護を基準に役職を決めるようになった。
「と、まぁそんな感じだ」
「あれ? だったら加護のレベルが上がるのは僕らにとっても重要なんじゃないですか? 怪我をするといえば冒険者じゃないですか」
「昨日言っただろ? 冒険者は理想を体現してこそだ。そこに万が一なんざないんだよ」
「あ! そっか!」
「まぁ、理想は理想でしかないんだけどな。とはいえ、初めから奇跡に頼ってる奴を冒険者とは呼べねぇしな。あるに越したことはない程度だと思ってればいいさ」
「なんだか難しいですね?」
「要はおまけだ」
「なるほど!」
わからなくなりそうだったヨハンに適当に答える。
本当は、思うようにいかない現実に対抗する最後の手段だったりする。
中身は神頼みでしかないんだがな。
「それでは私への回答にはならないでしょう?」
加護と教会について説明している俺に、リミアが吠える。
「遠回りで大雑把に、だが・・・十分回答足りえると思うがな?」
「そうやって、ごまかしておけば子供は納得するとでも⁉」
その目は強く、痛い。
これは・・・親がこうだったのか?
「あなたには多くの人を救える力があるのに、それをしなかった‼ そのことについて! 説明する義務があるとは思わないのでしょうか⁉」
「そうなんですか?」
「いや? 俺のギフトについては説明したとおりだ。人を救ったりなんざ出来ねぇよ」
「とぼけないでください‼ あなたなら知っているでしょう‼ ポーションの性能差のことを‼」
ポーションの多くは教会で作られる。
それらには性能差があり、なぜか加護レベルの高い人間が作ったポーションの方がより良いものになる。
「それになんの関係がある?」
「だから! あなたが教会にいれば! それだけで多くの人が救えたでしょう‼ ポーション一つで! 助かる命が‼」
その必死さを見れば、過去になにかあったんだろうことは分かるが、
「お前は優秀かもしれねぇが、想像力は足りねぇな? 魔法使いには致命的だ」
それだけで正しいとはならない。
「それこそ今関係ないでしょう⁉ 私は! あなたが―――」
「――俺のギフトだが」
悪いが感情論をぶつけ合うつもりはない。
なにより過去を持ち出しての話だ。
不毛すぎる。
「簡単に言えば他者に加護を与える能力だ。そんな奴が加護 信奉(しんぽう) とも言える教会に入ったら、どうなると思う?」
「当然! 加護レベルの高い人が増え、救われる人が―――」
「それは教会のことだろ?」
「そうですよね? 問題は・・・」
「俺はどうなる?」
「・・・・・・・・・」
俺の言いたいことを先に理解したのはヨハンだ。
神の存在を掲げ、加護を絶対として存続する教会。
そこに加護を与える人間が現れたとしたら・・・?
「現教皇は就任当時レベル4だった。俺の元パーティーメンバーは全員が5だ。今でこそ教皇も5だが、当時に公表してれば立場が違ったかもな?」
俺達が皇都を完全に離れる頃に教皇は加護レベル5に到達した。
しかし、それ以前に親友の加護レベルは5になっていた。
「教会ってのはそういうところだ。そこに加護を与える人間が来たら?」
考えるまでもない。
「間違いなく神として 祀(まつ) り上げるだろうよ。そうなれば、俺に自由はない。名前も尊厳も奪われて、神にされるんだ」
何の努力もなしに、加護のレベルだけで甘い汁を 啜(すす) ってきた奴らだ。
喜び勇んで持て 囃(はや) すだろう。
その現状に嘆くのは現教皇で、どうにかしようとしているらしいが、その地位を盤石にしたのも加護レベルだというのだから、どうしようもない。
「俺が俺であることを選んだ・・・って言うのは格好つけすぎだが、自由を選んで何が悪い?」
「それは・・・」
すでにさっきまでの勢いはなく、考えてもみなかったというリミア。
自分の思う正義を持つのは悪い事じゃない。
だが、それを絶対だとするのはよくない。
そして、それを導くのは・・・。
やはり、安請け合いはするべきじゃないな。