作品タイトル不明
side――栄光ある騎士団
「なんで会話に入って来なかった! そのせいで解散の流れになったじゃねぇか‼」
「嫌よ! あそこで話しかけたら、それはそれで文句言うじゃない。あなたの言いそうなことなんてわかってるんだから!」
「エイラ! ジェイド様が理由もなしにそのようなことをするはずがありませんわ‼」
「そう? だったら、いつもそうしてる理由とやらを本人の口から聞かせて貰おうかしら? もちろん。そんなものがあるのなら・・・だけど?」
「ちょっと! わざとやっているみたいな言い方はやめなさい‼ ねぇ? ジェイド様‼」
「・・・・・・・・・・・・」
「ジェイド様?」
「あら? 心当たりがないのかしら? それとも、いつもそんなことをしていることにこそ、心当たりがあったりするんじゃない?」
一転攻勢を仕掛けられたジェイドは黙るしかなく、それを見てキューティーが慌て、エイラは遠慮なく締め上げる。
それらを見ながら一言。
「羨ましいね」
ヨハンがリミアに話しかける。
「そうは思わないのですが・・・」
しかしそう言われても、リミアは頷けない。
「楽しそうじゃない?」
「それは否定しませんが、代わりたいかと言われると疑問でしょう。エイラさんの役は面倒が過ぎるかと」
「確かに。私も、あの3人を羨ましいと思うことはある・・・けど、代わりたくはないかも」
「え⁉ ケイトさんもですか⁉」
ヨハンは反対側から現れたケイトに驚愕の質問を返す。
「キューティーに聞いても、エイラの代わりはちょっと・・・って言うんじゃないかな? 大変だと思うよ。あの2人は一番付き合いが長いから」
「つまり、あれは甘えてると?」
「そう・・・だと思う。寂しいんだよ。ゼネスさんは待ってるって言ってたけど、半ば強引に送り出されたことに変わりはないからどうしても、ね」
かくいうケイトも渡された書記を胸に抱いたままだ。
「ですが、先生の立場で考えてみれば仕方がなかったのかもしれません」
「どういうこと?」
ただ1人。リミアだけは今回のことを必然だと受け止めていた。
その理由をヨハンが問う。
「曲がりなりにも私達は個人B級にまで至ったのは事実。にもかかわらず、教育係がついていたらどう思うでしょうか?」
「どう・・・って? なにかおかしいかな?」
「おかしいよ? 普通、駆け出しの卒業はC級って言われてる。だから、C級パーティーを組んでれば個人ではD級でも教育係には頼らない。というか、頼れない」
「はい。なのに、私達がB級になっても先生と一緒に居れば―――」
「私達か、ゼネスさん。あるいは両方の評判が悪くなる」
リミアの言葉に続くようにケイトが答え、それを肯定するべくリミアはしっかりと頷いた。
「え? どうしてそうなるの⁉」
ヨハンは他人からどう見えるかなど、そういうことには鈍感である。自分のことで精一杯になりがちだからだ。
故に、理解が及ばず説明を求めた。
「考えてみて。C級で1人立ちしているパーティーがあるのに、B級になっても1人立ちできないパーティー・・・周りからはどう見えるかな?」
「それは・・・! 頼りない、ですかね?」
「ええ。そして、その次はこう考えるでしょうね。どうしてあのパーティーはB級に上がれたのか?」
「ッ‼ そっか! 周りからは贔屓してるように見えちゃんだ‼」
「それだけじゃないよ? ゼネスさんは不正の他にも、その指導力が疑われることになるだろうし、正当性だって・・・証明できるとは限らない」
「仮にそれを証明して見せたとしても、それを万人が信じるわけでは無いというのは、先生の故郷で見て来たでしょう? だから、先生は初めからそのつもりだったのでは、と。私達の昇格で時期が早まった可能性はありますが」
そこまで言われればヨハンでも納得できた。
ケイトにだってその理屈はわかる。
であれば、当然の疑問が浮かび上がる。
「どっちが良かったのかな?」
ヨハンが口にした疑問の意味はこうだ。
B級に昇格した今と、B級に上がらずにゼネスと一緒にいた方。どちらがより自分達の為だったのか。
B級の昇格自体は嬉しい。けど、本当にそれでよかったのか? そう思うのは昇格の際に使った裏技のせいかもしれない。現地での好意もあった。
しかし、それと引き換えにしたものはもう戻らない。
だから―――、
「それほどの違いはないでしょう。仮にあの時、B級に上がれなかったとしても。C級の時点で駆け出しの卒業を理由に、南の霊峰ではない別の地域に旅してみたらどうだとでも言われたでしょうから」
冒険者らしく”もし”なんてものに意味はないと言ってのける。