作品タイトル不明
我が儘だったのは2
ジェイドにはクライフとは違う、重鉄鋼に合った戦い方を教える。
それこそ、自由騎士のような戦い方を。
「イメージとして、基本は鎧だけに魔力を集めておく。そんで、防御の瞬間だけ魔力を盾にも伸ばす。この時、魔力の分配量は同じにする。そうすりゃ鎧が軽くなりすぎることもねぇし、盾にも重さが出る」
「なるほどな。それなら扱う魔力の総量が変わらねぇから、鎧だけで管理するより楽なのか」
そう。1部位だと出力を上げ下げしなきゃならねぇが、他にも重鉄鋼の装備があるなら魔力を移動させるだけで重量の調整が出来る。
自由騎士がそのための加工を盾にしていたと聞いて作ったのがそれだからな。同じことが出来ないはずがねぇ。
「注意するのは攻撃の時だ。あらかじめ振り上げてから、もっと言うなら敵にあてる瞬間にだけ魔力を流し込め。先走って魔力を流しちまうと振り上げられずに攻撃どころじゃなくなるからな」
問題はここだ。
自由騎士は盾を使っても剣は使っちゃいなかった。もっぱら謎魔法(風)を使ってたからな。
「攻撃の時は魔力の分配どうすんだよ? 剣だけに集めるのはバランス悪いか?」
「場合による。振り下ろすんなら全魔力を注いでもいいし、突き込んだり、払うだけなら剣に魔力は要らねぇ。重くしたって意味ねぇからな。魔力を込めたら重くなるって性質を十分に考慮して判断しろ」
これには相当な慣れが必要になるだろう。
頭がこんがらがったとしても仕方がねぇと言える。
「そうか・・・いや、待てよ? だったら、全身同じだけの魔力を込めるのはどうなんだ? 一番無難で使いやすいはずだろ?」
だから、そういう発想に辿り着くのもわからなくはねぇんだ。あまりにも面倒だからな。
だが、
「重鉄鋼は長く使うと魔力を覚えて効率が上がるって言っただろ? 同じ魔力量で使い続けても重さはどんどん変わっていくぞ。その度に丁度いい重さになるように出力調整できるのか? それに、魔力操作無しで使うってことは瞬間的な強化っつー最大の利点を捨てることにもなる。宝の持ち腐れだと笑われるだろうな」
そうは問屋が卸さねぇ。
「クッソ・・・そんな都合よくはいかねぇか」
全部が全部、楽できるようにはなってねぇってことだ。
「まぁ、どうしても使いにくいってんなら使わなくてもいい。あの自由騎士も魔法で戦ってたしな。最悪、売りに出せはそこそこの値段にはなるはずだ。使わなくなったら売っちまえ。下手にこだわる必要はねぇ。その武器はあくまでも”ついで”だからな」
「なんだよ、いきなり・・・・・・いいのかよ?」
「構わねぇよ。どうせ他に使い道なんてねぇからな。それでも売るのはアレだってんなら返しに来い。そん時に、自分が納得できる姿って奴を見せてみろ」
「――っ! 帰って・・・来てもいいのか?」
ハッ! っと顔をあげてまで。なに馬鹿なことを言ってんだか。
「当たり前だろ? 冒険者にとって一番重要なことは、強敵を倒すことでも、宝を手に入れることでも、ましてや危険を冒すことでもねぇ。生きて帰ることだ。出来るなら、仲間と」
失った自信は自らの手で取り戻す他ない。
怖気付いた心を躾け、勇気をもって踏み出し、乗り越えるしかない。
俺に出来るのは精々、こうやって言葉を贈ることぐらい。
ならばせめて、
「いつでも。いつまででも。ここ、皇都で待っててやるよ」
帰る場所として、目印にでもなってやろう。
あてどない旅の終点へと。