軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たなる旅たちへ

「あんな別れ方でよかったのかよ?」

皇都へと戻る馬車の中、対面へ座ったジェイドがぶっきらぼうに話しかけてきた。

「なんのことだ?」

「兄貴とのことだよ! もっとちゃんと話さなくてよかったのかよ? その、色々あったんだし、まだ解決したわけでもねぇんだろ?」

「いいんだよ。明確にしない方が都合がいいこともあるんだ。俺もいい大人だからな。なんでも白黒つけりゃぁいいってもんじゃねぇことは承知の上だ」

「なんだよそれ! 俺様が子供だって言いたいのか⁉」

「俺の言葉をどうとるかはお前次第だ。だがお前らも、もう個人B級になったんだ。落ち着きや大人らしさってのが求められることもある。そのことは自覚しておけよ」

「そんなこと言われるまでもねぇんだよ! 俺様達は全員貴族だぞ⁉ むしろそっちの方が得意なん

だよ‼」

言い分はわかるが、そうは見えない。

だってお前、絶対社交界とか苦手じゃねぇかよ。

「本当か?」

「見てのとおりよ。伯爵家の息子だから見逃されていたってとこかしらね」

「私はなにも問題ないと思うのですが、ジェイド様のお兄様方には叱られていた記憶があるのは事実ですわ!」

「だから、あんまり目立たないように・・・してた」

「だ、そうだが?」

「問題になってねぇってことは問題ねぇってことだろうが! だからいいんだよ‼」

それは本当にそういう問題だろうか?

「それにしても、お前がそんなことを気にするとはな?」

「兄弟のことはハッキリしとくべきだと俺様は思う。じゃないと、迷惑をかけることになるからな」

「冒険者であればなおさらな。つっても、そんなもんはとっくの昔に一悶着あっての今だから、それこそ今さらって話だな」

「それでも、なにかあってからじゃ遅いからな・・・」

蟻の時によっぽど絞られたのか? 随分と健気というか。

「っつーかよ! そういうのを教えるために今回ここまで連れて来たんじゃねぇのか⁉」

「誰がつまんねぇ家族のゴタゴタを見せたがるかよ! あの祭りでお前らに見せたかったのは命に対する態度と責任だ! 殺すことの意味ってやつをしっかりと理解させるため以外にあるかよ!」

「なんだよ。そんなことの為に、わざわざあんな悪趣味な祭りに付き合わされたっていうのかよ。それこそ今さらって話じゃねぇか」

「なに?」

呆れたようにジェイドが返す。

これ見よがしな『はぁ~』ってため息やめろ。ムカつくから。

「アンタが言ったんだぜ? 命の価値を知れって」

「そうですよ! それに、それが冒険者たるものの務めだ。とも言ってましたよ?」

続いてヨハンが付け加える。

「自分と相手。両方の命を天秤にかけて、なにが出来るのか考えろ。だったかしら?」

「あの時はそこまで言っていなかったはずなので、それは意訳のしすぎでしょう。ですが、つまるところ。命の対価になるものは、同じく命だということはあの時に理解しました。その覚悟がなければ、相手に死を望んではならない」

次いでエイラ、リミアが笑って話す。

「そういう意味で、あの場で叫んでいた観衆は覚悟が足りなかったということ! 国境を守る領地の民としては些か残念でしたわね! 正義や誇りを命の対価とするのならば、その心と共に死ぬ覚悟も欲しいですものね‼」

「騎士道精神・・・だったっけ? キューティーはそういうの好きだよね。でも、皇国は魔法寄り。だから、あんまり・・・そういう考えは浸透してないのかも。そうはいっても、あの態度は流石にひどすぎると思うけど」

終いにはキューティーとケイトまでもが、苦言を呈す。

ただ、それは俺に対してってよりは、あの場にいた領民共に対して・・・になってるけどな。

「他にも、モンスターの解体の仕方とか、その後処理とか――」

「生態調査報告書について知ったのも、あの時だったわね」

「冒険者が南を目指す理由も聞きましたね」

「冒険者の質の違い、なんて話もありましてよ」

とか、楽しげに話している。

どう思い出してみても、こいつらのこんな顔は思い浮かばないし、ついでに内容もほとんど出てこない。

「そんなことも忘れてたのか? まだ半年ちょっとしかたってねぇってのに、大丈夫かよ?」

「悪かったな! 覚えてなくて! 引退したってぇのに、冒険者やってた頃より忙しかったんでな」

たった半年とは思えないほど、色んなことがあった。

それはもう面倒という一言で片付けられないほど、連続して大事ばかり。

「けど、ま。それも一段落だ。お前らが一人前の冒険者になったからな。そんだけのことがわかってりゃ、俺から教えることはもうねぇよ。こっから先どうするか、ちゃんと自分達で選ぶんだ。後悔がねぇようにな」

そういうと、さっきまでの空気はどこへやら。

――シン。と静まり返ってしまった。