作品タイトル不明
相見える2
敵の隊列が間延びした辺りでエイラが突っ込む。
初めは小言も多いが、理知的で思い切りがいいのがあいつのいいところだな。だからこそパーティーの鉈振り役にも適任なんだが、今回は槍働きだ。
立場や役割なんては、自分がやらなきゃわからんねぇことも多いからな。
武器として槍を持つ兵士と肉薄するエイラは素手。リーチは不利だが、懐に潜り込めば立場は逆転する。内に入る動きが重要となるが、問題はなさそうだ。
エイラ自身が強化魔法を使うからか、強化との相性がいい。身体を動かす時、動かした後どうなるのかが想像できるんだろう。俺からすれば動きすぎだが、余裕を持った接近と回避を行えている。
なによりエイラを有利にしているのは、その見た目か。
エイラは華奢な女の子―――と言えなくもない体格だ。肉付きはいい方だと思うが。それでも、その女子特有の見た目からは、速さや力強さは感じ辛い。それが故に兵士も目の前の光景とで混乱を起こし、対応が後手に回っているように見える。
当たっても大したことがなさそうな拳が実は・・・・・・防御もそうだ。耐えられるはずがないとおもって振り払った一撃が、平気な顔で止められれば驚きもする。
その硬直の隙があれば1発当てるなんざ簡単だしな。
みるみるうちにエイラは兵士共を薙ぎ倒していく。
「なにをしているのですか‼ 中隊で対応できないならば小隊に編隊しなさい‼ 敵との距離で前後の比率を3対2で構成! 近くに誰がいるのかを確認し、役割を決めるのです‼」
その体たらくを見かねたのかゴルドラッセから激が飛ぶ。
中途半端にただ広がっていただけの集団が小分けになり、それぞれの部隊で構成されていく。
意味もなく出来ていた空間は間合いとなり、通路となり、それぞれの小隊を識別する壁になる。
まずいな・・・。
今までは面を喰らって軍隊として正常に機能していなかったから少人数でも押し勝ててたんだが・・・冷静に対処されるとなると地力、訓練してきた時間の差が出る。
あいつらも十二分に強くなった。とはいえ、それはここ1年の話。それにあいつらの攻撃は効いち
ゃいるが決定打には足りねぇ。戦意が折れなきゃ、いくら吹っ飛ばされようが、薙ぎ倒されようが兵士共は軍団長の手前、また起き上がらざるを得ない。
精鋭と呼ばれてるこの連中は少なくとも何年か軍に在籍してる。長く戦えば、その対応力が―――って、言ってる側から!
上手く行きすぎたんだろうな。相手の変化を見落として、エイラが突っ込み過ぎた。
2つの小隊に挟まれる位置に誘い込まれた。
ゴルドラッセの激が利いたか⁉
なら、こっちも!
「ヨ―――」
――ハン。と、名前を呼ぼうとした瞬間に。
ドパッ‼‼ っと戦場に闇が吹き出す。
いきなりの出来事に浮足立つ兵士たちを尻目に、2度。3度と黒が飛び出し、広がり、はじけ飛ぶ。
上官の指示で落ち着きを取り戻そうとした矢先、生まれる動揺は波紋を呼ぶ。
驚愕、困惑、混沌とする軍団に閃きが走る。
一筋の熱線が地上と平行に駆け抜けた。影を強く、増長せるように。闇に飲まれた者達の目を焼くかの如く。
だが、それはただの合図だ。
押し寄せる情報にあっけにとられる連中を嘲笑うように、盾が前線を押し上げる。誘い込まれたネズミの下には、焦げ付いた火種の姿が有った。
種は今一度燃え上ることはなく、しかし敵は逃げるように散らばっていく。まるで見えねぇ壁にでも押し出されているみたいだ。
暗雲が立ち込め、降り濯ぐは雷雨。
降る雷は拡散性を持ち、濯ぐ水は指向性を持っていた。
逃げる場すらも与えられず、チカチカと。瞬く間に痺れて切らす。
絶叫の合唱を背景に、袋のネズミは揺らめく炎と影に踊った。