作品タイトル不明
相立つ
途中まで上手く行きそうな雰囲気だったんだけどな。
そこは軍団長。
流れってもんをよくわかってやがる。
明確に”敵”って言葉を出されたせいで、消えかかってた戦意が燻りだしてるな。
これじゃぁ派手に立ち回って印象付けした意味がねぇ。
転がるように後退ってた連中が、再度立ち上がり列を成す。
折角半分は減らしたのに振り出しか・・・いや、武器を奪っただけ多少はマシか?
つっても、状況は同じじゃねぇ。
「――よくやった」
「当たり前だろ? それより、こっちはどうなってんだよ? なんか、不穏な言葉が聞こえた気がするけどな」
捕虜を解放したジェイド達がこっちへ合流する。
「気のせい・・・だったら良かったんだけどな。まぁ、そんなことはわかっちゃいたが、存外しつこくてな」
「らしくねぇな? さっきのもそうだ。手加減してても再起不能には出来ただろ?」
「出来るわけねぇだろ! あんなのでも国境線を守る軍の精鋭兵士だぞ? 戦えなくするわけにはいかねぇんだよ」
「そういうことかよ・・・っていうか、それなら先に言っとけよ! あいつら気絶させちまったじゃねぇか‼」
まとめて縛り上げられている兵士を指差して吠えるが、
「あれぐらいなら丁度いい薬だろ。子供に負けたからもう戦えません。なんて、言えるわけもねぇからな」
「まだ子供扱いかよ‼」
「歳の話だ。別に子供扱いするつもりはねぇよ。あったら人質救出なんざさせるかよ」
「それならいいけどな!」
その反応こそが子供じみてるよな・・・とは思うが、ここでは言わないでおく。
「それで? どうすんだよ?」
「さぁな。・・・どうしたいんだ? ゴルドラッセ!」
俺としては戦意を喪失させたところで適当に話をつけてお開きにする予定だったんだが、その作戦はゴルドラッセにより阻止された。
敵を前にして軍は止まれない。
そういう正義を掲げているからだ。
だったら、どうやって決着をつけるのか・・・それを選べるのは相手だけだ。
俺達に出来るのは、皇国の戦力だ。などという事実は無視して殲滅するのみ。うんともすんとも言えなくなれば、もちろん否とも言えねぇからな。
だが、それで困るのは領民や国民、あるいは軍そのものだ。
信用、信頼、安全にかかわるからな。
「では、我々は指揮に徹する。というのはいかがでしょう?」
「はぁ⁉」
驚愕の声を上げるのはジェイドだ。
「こいつらに戦わせる事の意味は?」
「先程ゼネス様がおっしゃった通り。子供に負けたままでは終われないでしょう? そうであるならば、軍が負けることがあっても、折れることはない。あなた方が気兼ねする必要がなくなるというわけですな」
俺じゃなくジェイド達が相手となれば、負けた理由を油断に出来る。つまり言い訳ができ、兵士共を鍛える名目にもなるってわけだ。
俺としてはどっちでもいい。
最悪この手でぶちのめしたとしても、怪我さえさせなきゃそこまで大きな問題にはならねぇと思ってる。
だが、軍という巨大な個は珍しく得難い敵だ。なにより、ジェイド達には皇都周辺で起こした蟻の件もある。似たような存在として、戦闘を経験させておくのは悪いことじゃねぇ。
どうする? と視線を送ると、
「俺様は構わねぇよ。負けるつもりもねぇ」
「ジェイド様がそうおっしゃるのなら、私に異論はございませんわ!」
「これも経験になるのかしらね」
「不思議と、不安は・・・ない」
「先生の指示で戦えるなら、僕は嬉しいです!」
「そうですね。素晴らしい指揮に期待しましょう」
全員が直ぐに軍隊を敵として見据えていた。