作品タイトル不明
相見える1
「ジェイド‼」
「わかってる! けどよ‼」
「中央の奴は気にしなくていい。両脇を味方に挟まれてるんだ。急にすり抜けて来たりはしねぇよ! 後、剣の扱いが雑だ! 折角ならもっと上手く使え‼」
「上手く・・・ってどうやんだよ! 剣の使い方は教わってねぇぞ‼」
「あぁ、そうか。悪かったな! とりあえず今は突きだけ使う意識でいい。左側を警戒しつつ右側の奴と1対1になるように闘え! そうすりゃ真ん中の奴は見なくても一緒だ!」
「それより外の奴は⁉」
「視界に入ったなと思った瞬間にさがれ! 前線で敵に囲まれるってのは、自分が敵と近付き過ぎた時に起きることだ。さがっても追ってくるなら、追って来なくなるまでさがればいい。その時には敵の陣形は崩れてるからな」
一瞬、逃げようかと迷ったジェイドを諫める。
負けて死ぬぐらいなら逃げた方がマシだが、前線を作る盾役が多少の不利如きでその場を放棄してちゃ前線は崩壊する。そこから仲間は危機に陥る。
そして、そんなことはジェイドにもわかってるから、迷いもほんの僅か。俺が名前を呼んだだけで踏み留まることが出来た。
少々不格好だが、疑似的な1対1にも持ち込めている。これならしばらくは持ちこたえられるだろうし、盾役としては十分な働きだ。
理想としてはもっと周りを、特に仲間の位置まで見られればいいんだが・・・敵の数が多くなるほど敵味方の識別や認識は難しくなる。今、急には出来なくともいずれ出来るようになればいい。
「キューティー‼ 無闇に敵を散らばらすな! 目先の敵だけじゃなく、全体を見て目的を持て‼ 突っ込むだけが能じゃないぞ!」
「目的・・・ですの? 敵の数を減らせばそれでよいのではありませんの?」
「敵が混乱すれば無理な突撃をしてくる確率が上がる! そうなった時、一番被害を受けるのはジェイドだぞ‼」
「それはいけませんわ‼ ですけれど、これだけの敵がいる中で目的なんて、どうすればよろしいのですか⁉」
「敵の数が多かろうが役割ってのはある。わかりやすいので言えば前衛と後衛とかな。敵を散らすならそこだ! そこで分断できれば相当有利になる! 魔法盾の展開も上手く使って引きはがせ!」
単に隙を見つけては、縫うように切り込んでいたキューティーに狙いを与える。
この人数の中に切り込んで行けるのは大したもんだが、下手に敵を分散させると個に判断をさせる機会が増える。そうなっちまうと、統一された指揮や指令から外れた行動に出る敵が現れる。
その予想外には随時、誰かが対応しなきゃならなくなり、その回数が増えるほど負担は大きくなる。それが綻びとなるのを避けるために、敵の思考や作戦を利用する。
されたくないこと、邪魔になること、嫌がらせってのは的確であるほど意味がある。
キューティーにはそれを見極められるようになって欲しい。敵を掻き乱せるだけの力を持っているからだ。
「敵の狙いは聞いていましたね? では、そこを迎え撃ちなさい‼ 軍人として、なめられたままでいることは許しませんよ‼」
まぁ。デカい声で指示を飛ばしてるんだから、お互いに作戦は筒抜けだ。
当然ながら、ゴルドラッセは直ちに修正をいれる。
だが、その命令を即座に遂行するなんざ不可能だ。
ぶつかり合ってたかが数分といえど、隊列は乱れ、分断され浮いた兵士もいる。そのそれぞれが、各自に判断を迫られるからだ。
全員の能力は平等ではなく、判断には差があり、行動にも違いが出る。
それこそが大人数による弊害でもあり、俺達が付け入るべき隙だ。
だから、
「エイラ‼」
「いつでもいいわ‼」
そのための仕込みはエイラに頼んだ。
あんまり人数差があるんで強化は俺が行った。それはゴルドラッセにも認めさせた上での助勢。
そのことで、
『いきなり役目を奪われたんだけど?』
とかエイラに言って来たんで、代わりにその役をってことだ。
普段とはかけ離れた動きになるだろうが、今日のこいつらなら・・・問題なくこなせるんじゃないかと。そう思わせるだけの強さを感じた。