軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ゴルドラッセ2

「どうする・・・ねぇ?」

「もしや、お考えでないので?」

そんなことはないとわかっていても聞かなければなりません。

これは交渉ですから。

「そんなわけねぇだろ? アイツには消えてもらうさ。こんなところに居られちゃ迷惑だからな」

「それならば、処刑してしまっても同じではありませんか?」

「だから迷惑だっつってんだよ。俺はそれを正義だとは認めねぇし、それで調子に乗られんのも嫌なんだよ。うぜぇからな。自分ではなにもしねぇくせに、安全圏から口だけ出してくる奴らが!」

その辺りは昔から変わりませんな。

なぜ見たこともないはずのものを否定するのか、なぜ知りもしないはずなのに肯定するのかと。憤っていた記憶があります。

「であれば・・・どちらへお消え頂くつもりなのでしょう? まさか皇国内へと匿うわけではありますまい?」

「そこまでは俺の知ったことじゃねぇよ。本人次第だ。曰く、時間の問題だとよ」

時間の問題・・・というのであれば、救助が来る?

チラリと崖向こうを視界に納めますが、どうにも不審な物言いですな。

それに、例え。迎えを寄こしたとして―――この直立する跳ね橋をどうするおつもりなのでしょうか。

制御は監視塔で管理しておりますし、動作には大掛かりな魔法道具を動かす必要があるのですが・・・。

しかし、問題はそこではありませんね。

「――つまり、あなた様は敵を逃がすと? この地に攻め入ってきた敵を?」

これは好機。

いくら戦意を挫かれたからと言って、軍人であればこの言葉に聞き捨てならないでしょう。

奮起させるには打って付けの言葉。

思惑通り、ゼネス様に叩きのめされ萎えていた20人からも、僅かながら翻意が立ち上り始めます。

ですが、それがわからないゼネス様ではないはず。ならば、これはわざとということになりますな。まだ何か企んでいらっしゃる? いやはや、なんとも・・・どこまでも底をお見せにならないお方だ。

まるで、遠い日のお父上のように。

「攻め入ってきた? 迷い込んだの間違いだろ? それとも、ここの連中は丸腰の女1人に篭絡されるほどの馬鹿なのか? あるいは、女1人の武力にも及ばない腰抜けか。どっちにしろ大したもんだな?」

「相手は1人といえど、その任は敵軍大将。警戒するのは当然でしょう? その首を討つのは必然ですらあります」

「単身で乗り込んできた頭が幸せな女を、か? 冗談はよせ。そんな簡単な話じゃねぇだろ。お互いに」

お互いに――というのは、皇国と帝国のことですな。

あの捕虜は出自も立場も役職もちぐはぐですから、そのことを気にしているのでしょう。下手を打てば面倒になると。

ですが、

「だから、なかったことにすると? それでは都合が良すぎるのですよ。ただでさえ、戦時の意識が薄れているのです。今一度、立場を明確にするべきでは?」

「そんな一方的な行為は利用されるだけだ。言いがかりをつけられ、証拠をでっちあげられる。その後は泥沼の水掛け論。どうやって折り合いをつけるつもりだ?」

そんなことは小さな問題です。

「戦争というものは――・・・勝てば終わるのですよ」

どんな言いがかりをつけられようとも、完膚なきまでに勝利を重ねれば、どんな声でも届きはしない。

不安も、不満も、犠牲でさえも、結果を前にしては誰もが口を閉ざすのです。

「この地から出たこともねぇくせに、どうやって勝つってんだ? どこぞの大英雄様がいた時ですら! この地を取り戻すのがやっとだったんじゃねぇのかよ‼」

えぇ。確かに、その通りですよ。

彼の日のダンデ・L・グラーニンをもってしても、この地に居座る帝国軍を撃ち滅ぼすのがやっとでした。

しかし、なぜでしょうか?

今ならば!

ゼネス様、あなたならば‼

私には、そう思えて仕方がないのです。