軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

慣習と観衆

翌々日。

1年が終わりを迎える今日この日、このグラーニン辺境伯領では年越しの祭りが執り行われる。

そして当然、その中にはくだらない慣習も含まれており。

「「「殺せぇええーー‼‼‼」」」

「「「敵を許すなぁああ‼‼‼」」」

「「「帝国に裁きを‼‼‼」」」

朝も早くから頭の悪い叫びが聞こえる。

そう。今日の処刑台に運び込まれたのは―――。

「ホント、失敗したら許さないから・・・」

帝国軍、戦線指揮南端総司令官・及び帝国貴族の息女カーナ。

手に板状の枷をはめられ、簡易的な檻に見世物のように乗せられ運び込まれる。

両脇を屈強な兵士に抱えられ、檻に入れられたまま処刑台へ。

処刑台は周りから見えやすいようにそれなりに高い位置にあり、中央には首を固定する枷が取り付けられている。

その隣に佇むのは斧を持った兵士と、処刑執行人たる我が甥のバロン。

処刑台の周りにはどこから湧いて出たのか広場を埋め尽くすほどの領民。

台の足元には兵士が並び防壁の役割を果たしているが、声を上げ、手を上げ、前に前にという領民の動きに押しつぶされそうになっている。 前に居ようと後ろに居ようとただみにくいだけだろうに、必死になる様はあまりにも滑稽だ。

なにが楽しくて年の瀬にこんな押し合い圧し合いの中で処刑なんぞを見ようと思うんだか、俺には理解出来そうにない。

階段を踏みしめ処刑台へと昇る途中、少し離れた位置にジェイド達を見つける。処刑台を斜め後ろから見る関係者席というか、兄上が側に侍らせている。

若い男女を周りにおいて義姉上が怒らねぇのかと見渡してみたが、その姿はない。疑問にはなったが、別に好んで見たいもんでもねぇだろうし居合わせなくても不思議はねぇかと流す。

同時に。思い出すのは同じ階段を登った時のこと。

誰が言い出したのか”学園へ入れるのなら、その前に経験を”っつー提案を御父上が受け入れて、俺の時から7歳を迎える前の年に執行人として壇上に立たされることになった。この甥っ子は俺への当てつけのとばっちりってところだ。

兄上が同じ立場になったのは10歳の時だったと聞いたことがある。兄上は学園へは通ってなかったからな。そこの違いだろう。まぁそれでも人の命を奪うには十分早いが。

善も、悪も、誇りさえもなく。

ただ義務として斧を振ったことを覚えている。

あの時から、この”かんしゅう”は変わらねぇままだ。

そんなことを考えている間に、この足が頂上へと達する。

「これより、処刑の執行を宣言する」

であれば、俺は俺の役を担わなければならない。

「尚、見届け人はこの私。ダンデ・L・グラーニンが次男、ゼネスが行うものとする」

騒ぐ観衆に聞こえるように告げる。

すると、

「「「なんでお前が‼‼‼」」」

「「「グラン様はどうしたーー‼‼‼」」」

「「「引っ込め加護無しーー‼‼‼」」」

予想通りの・・・っつーにはちょっと違うが、予測範囲内の罵詈雑言が飛んでくる。どれも若い連中の声だ。それ以外は静かに聞いている。

分布的に言えば、前がうるさく後ろが静かだ。まぁ、周りを押し出してでも処刑を見ようなんてのは血の気の多い奴のやることだしな。その結果ってことだろう。

「対象者は帝国軍戦線指揮南端総司令官を名乗る女。執行者は――バロン・P・グラーニン」

俺は観衆の声など無視して、斧を手に持っていた兵士から受け取り、バロンへと差し出す。

「罪状はない。だが、敵にかける情けもない。この行為は貴様の正義を証明するための儀式に過ぎない。そのことを胸に留め、決断し、遂行せよ」

差し出された斧を受け取るバロンは力強く頷き。

身体に見合わない斧を片手に首枷へ固定された女の前へ。

その隣に立ち、重たい斧を両手で持ち、振り上げ、そして――

――降ろした。