作品タイトル不明
変な奴2
「どういうこと?」
1人言葉の意味が理解できない6歳の甥が首を捻るが、
「なんでもねぇよ。気にするな」
頭の角度を物理的に戻して終わる。
危惧した通り、教育への悪影響が見え隠れしているが・・・仕方ねぇ。
「お前はこんなところへ、なにしに来やがった?」
前置きは無しに本題を切り出す。
目的によっては大幅に軌道修正しなきゃならねぇからな。
だってぇのに、
「そんなの。なんでアンタに教えなきゃいけないのよ? っていうか誰よアンタ! 後そっちの子供も‼」
この能天気女! くだらねぇこと言いやがって‼
「どうだっていいんだよ! んなことは‼ それとも、このまま。なんにもわかんねぇまま死にてぇのか⁉」
「なにいってんのよ‼ 私が死ぬわけないでしょ‼ 私が誰だか知らないからそんなことが言えるのよ‼」
「知らねぇし、興味もねぇよ‼ お前は帝国人で、帝国人は敵だ! ここでは敵を処刑すんだよ‼ それが決まりだ‼ お前がどこの誰でも関係ねぇ‼ 早けりゃ明後日には処刑台へ送られて、こいつに首を落とされるんだよ‼ お前は‼」
声を荒げていたからかバロンはビクッとして、さらには嘘でしょ⁉ みたいな目で女に見られたせいか、半分俺の後ろに隠れる。
「そ、そんなわけないじゃない! 私がなにしたっていうのよ‼ 私はただ――」
「だから言っただろ。敵は殺す。戦争してんだ。当たり前だろ」
「戦争なんて! 昔のことでしょ‼ 今は平和じゃない‼」
「表面上はな。だがそれはお互い直接干渉してねぇってだけだ。東の国では代理戦争が起こってる。両国に隣接する東の国が南北で真っ二つになってるのを知らねぇわけねぇよな?」
「知らないわよそんなの! じゃあ本当にアタシは殺されるっていうの⁉」
こいつがここに捕らえられてから、それなりに長い時間が過ぎているはずだが・・・そんなことも想像できなかったのか?
そこまでの箱入りか、はたまたお花畑か。
どちらにせよ、
「それが決まりだからな」
答えは変わらねぇ。
女はその答えを信じられず、しばらく『嘘なんでしょ⁉ ねぇ⁉』などといっていたが、取り合わないでいると。ようやく本当だと悟ったのか消沈したように肩を落として俯いた。
「で? なにしに来た?」
「・・・・・・停戦の協定を結びによ。悪い?」
「ああ。頭がな。敵国に単身で乗り込むような理由じゃねぇだろ」
「・・・だって。みんな無理だっていうだけで、誰もやってみようとしないんだもの。それどころか笑う奴まで・・・。そいつら全員、見返したくて。それで1人で来たの」
「その結果捕まって、1カ月以上こんな部屋に押し込められて、挙句の果てには処刑されるってんだから。見返すどころか、いい笑いもんだな」
「・・・? なに言ってんのよ。ここに入れられたのはつい数日前よ。それまではちょっと狭いだけの普通の部屋にいたわ。行動は制限されてたけど、客人くらいには見られてたはずよ。それがなんで急に処刑なんてされなくちゃいけないのよ!」
どういうことだ? 聞いてた話と違う。
確かこいつは、来てすぐ捕まって牢屋に――って流れだったはずだが?
「バロン。どういうことだ?」
「僕にもわからないよ。少なくとも僕が聞いた話では牢屋に入れられたって・・・」
「誰に・・・ってのは聞くまでもねぇか」
どうせ兄上に違いない。違いないんだろうが・・・。
だとしても、なんでそんな嘘を?
可能性としてあるのは、俺の帰還に合わせてバロンに悩みを作ることで、俺との交流を含めてバロンの成長を促そうとした。とかだが、それにしたって手が込みすぎだろ。
そもそも俺とバロンが出会ったのが俺の部屋。俺の行動を予見してなきゃそこへバロンを送り込むなんざ不可能だ。いくら兄弟っつっても、兄上と過ごした時間はそれほど長くはねぇし、それほど波長が合うわけでもねぇ。
しかもその上で、今の時間に見張りを退かしたり、あまつさえ帝国との関係悪化の危険を冒してまで、客人として扱っていた人物を牢屋に叩き込むかと言われりゃぁ、ありえねぇよな。
だとしたら――
「--誰が、」
と口に出したのは俺じゃねぇ。
「誰が決めたのよ‼」
そう言ったのはさっきまで項垂れていた何処ぞの誰ぞだ。
「なんの話だ?」
「アタシを殺すのは決まりだからなんでしょ⁉ だから、その決まりを作ったのは誰かって聞いてんの‼」
さっきまでは打って変わって、怒り心頭といった表情で睨みつけてくる。
どうやら、これまでの自分顧みても。自分に殺されるほどの非がないことに気付いて、今度は怒りが芽生えたらしい。
「そりゃぁ領主だろ」
「ダンデ・L・グラーニン・・・‼」
「そう。我らが御父上だ」
燃える瞳は丸く開き、色が戻ることにはハッキリとわかるように敵と浮かび上がっていた。