作品タイトル不明
還す者
「なにが・・・あるって言うんだよ? その祭りに」
ゴクリと息を飲んでジェイドが尋ねる。
「・・・・・・・・・」
さて。
スッと言っちまっても構わねぇと言えば構わねぇんだが、そうすると逆に質問攻めにされて、説明に入るまで時間を取られそうなんだよな。
かといって、なんでそうなったのか。なんつー来歴から話のもそれはそれで面倒なんだよな。
どうしたもんか?
「――なんのことはない。ただ公開処刑がされるというだけだ」
俺が悩んでいるうちに、呆れたように爺さんがバラす。
「「「公開処刑⁉⁉」」」
俺と爺さんを除く全員の声が被る。
「そうだ。この年越しの時期の祭りには色んな意味があってな。さっき話していたこの地の奪還や解放も、少しずれてはいるがこの時期の事だった」
この辺りの土地を帝国から奪い返したのは確か、秋の暮だったか。
「本格的な冬を前にして、私達は急いで事を成した。冬本番となれば、皇国軍も動けなくなると考えたからだ。まず初めに敵の架けた橋を落とし、兵糧を焼き、一斉に蜂起することで混乱を招いた。そうすることで皇国軍の突撃を誘ったのだ。結果として、思惑通りにそれが功を奏し。この地の奪還は成り、解放へと至った。皆が喜び、土地を奪われた者たちも帰り着き、復興への道のりを踏み出す間際に。戦勝祝いとして・・・祭りが行われた」
そして。
その祭りこそが、今も尚。受け継がれている。
くだらない習慣として、目も当てられない慣習と共に。
「始めは本当にただの戦勝祝いだったのだ。喜びに声を上げ、歌い、踊る。食料も少なく、荒れた土地を耕さなければならないのに、それでも出来る限りの贅を尽くした。涙を流して、勝利を噛み締めた」
兵糧も焼き払い、補給路も潰した後だ。
碌なもんはなかっただろうが、それでも。
確かな喜びがあり、それを実感するには十分な事だったんだろう。
「だがそこで、私と同じように帝国の捕虜となっていた者がこういったのだ。”今、死にたい”とな」
いったい誰が言い出したんだろうな? そんなこと。
その言葉を。気持ちを咎める気はねぇけど。
それが原因で、現在まで。胸糞の悪い慣習を引きずることになっちまった。
「なんでだよ⁉ 折角生き残ったんじゃねぇのか⁉」
「生き残ってしまったのだ・・・・・・私を見ろ。目も見えず、自由に動き回ることも出来ん。こんな体で、なにが出来る?」
勝利の栄光の中で。これ以上ない喜びの中で。
苦しみのない最後を求めたんだろう。
魔法でも治せない怪我や病気は存在するし、領地を奪還したとはいえ、まだ戦争は終わっちゃいねぇ。むしろ奪われたもんを、ただ奪い返しただけだ。なにかを得られたわけじゃねぇ。
それに、もう一度奪われる可能性だって考えたはずだ。
そうなった時に、自分達は足手まといでしかなく。
そうでなくとも、これからの復興ですら満足に手伝うことが出来ない。
その不甲斐無さや心苦しさ。なにより、今後の生活を考えて”死にたい”という答えに辿り着いたんだろう。
「そう言ったのは確かに1人だった・・・だが次第に。その声は多く、大きくなり。身体の機能を一
部でも失った者のほとんどが名乗り出ることになった。そして、それを叶えたのも。ダンデ・L・グラーニンという男だった」
「そんな、ことが・・・」
爺さんの話を聞いてケイトがこっちを見る―――が、その表情はなんか誤解してるな。
自分の自殺未遂に俺がすっ飛んでいった理由を知った! みたいな顔だが、そうであったならどれだけよかったか。
ここで話が終われば美談で済む。
だが・・・そうじゃねぇから質が悪りぃ。