作品タイトル不明
手が出せない
「今は・・・これ以上、出来そうにないね。けど、どうしよう?」
「その罠を借りといて、今のうちに魔力を込めてから、明日の朝にでももう一度試してみたらどうだ?」
ケイトにそう言いながら、ヨハンに罠を貸しても大丈夫か? と確認する。
「それはいいんですけど・・・」
聞かれたヨハンは了承しながらも、
「それより先に、その共鳴魔法・・・? でいいんでしたっけ? それは試さないんですか?」
と、核心を突く。
「そういえば、そうだった。これが共鳴魔法に関係・・・してるなら、私達は共鳴魔法が使える・・・?」
言われてケイトもハッ! と顔をあげるが、
「つっても。さっきの本にも、共鳴魔法のやり方なんざ書いてなかったんだよな。スイとの実験も雰囲気でしかなかったし・・・」
共鳴魔法のやり方など知りゃしない。
共鳴というからには、なにかを合わせるんだろうぐらいの感覚でしかなかった。
こう考えると、スイとの実験は失敗して当然だったんだなと思う。
「ゼネス、さんは・・・誰かの魔力とか関係ない、よね?」
「そうだな。最初からそうだったし、その罠に込められてたっ魔力はヨハンのだろ?」
「はい! 昨日の夜に充填し直してた奴ですね!」
一応ヨハンに確認を取ってからケイトを見る。
それを聞いたケイトは一つ頷き、
「それじゃあ・・・私が魔力を込めるから。試してみても、いいかもしれない」
共鳴魔法を試みる算段をつける。
なるほど。
ケイトは自分の魔法なら罠から回収できる。
俺は誰の魔力でも関係なく回収できる。
だから、ケイトを優先して俺が合わせる形で、お互いに罠を通して繋がる感覚が持てるかを試してみようってことか。
それはいい―――が、
「その後はどうする?」
「どう・・・って?」
「失敗したならそれまでだが、成功した場合は中途半端に繋がった感覚だけが残るんだぞ? 目的もなく魔力を共有したとして、その後は? 共鳴魔法が使えるわけでもねぇし、目的もねぇじゃ嫌な間が出来るだけだろ?」
お互いを見合ったまま、お互いが魔力を通じて深く認識した状態で。
なにをするでもなく、ただもじもじする・・・なんざ時間の無駄もいいところだ。
っつーか、この年でそんな空間に耐えられる気がしねぇ!
「上手くいった場合、その後も続けてなにかを試すべきだ。そこまで決められねぇなら、実験自体を先送りにする方がいい」
地獄だからな。
「じゃあ・・・綱引き、でもいい?」
「それなら、周りへの被害も考えなくていいな」
「そう。それに魔力の移動、が確認できれば・・・共鳴魔法のルールもわかる、かもしれない」
つまり、ケイトのみが込めた魔力を共有した上で、俺だけが魔力を引っ張ってこれれば、魔力操作の練度で共鳴魔法の指揮を執れるかも知れねぇってことだ。
逆に、ケイトだけが魔力を回収できれば、込めた魔力量でなにかが変わる可能性がある。
そして、ちょうど半分だった場合には―――・・・込めた魔力量も、魔力操作の練度の高さも関係なく、お互い、あるいは共有した全員に、均等な負荷や責任が与えられるんだろうってことがわかる。
「あの、綱引きって・・・なんですか?」
「魔力の回収を2人で同時にやろうってだけだ」
また1人乗り遅れたヨハンに説明している間に、ケイトが罠を仕掛け、数歩下がる。
俺も同じだけ罠から距離を取り、ケイトを向かい合う。
互いに分かりやすいよう、右手を開いて前に差し出し、感覚を伸ばす。
細い糸が伸びて結びつくように感覚が繋がる。
その瞬間に、ケイトの存在が強く、浮かび上がる。
その存在、驚愕の感情、魔力を回収しようという意識、果ては指先の動きまで・・・手に取るように感じられた。
だがしかし、
「悪いな? 魔力はいつもで足りてなくてなぁ」
「別に、大丈夫・・・でもやっぱり悔しい、かも」
手を抜くわけにはいかねぇんでな。
俺はケイトの意識を感じ取ってから、それより早く、魔力を罠から吸い上げた。