作品タイトル不明
失せ物はなんだ?
「あれ? なんというか・・・簡単、ですね?」
とりあえずやり方を教えてからしばらく。
ヨハンはそれほどの苦労もなく変化魔法を習得した。
「そりゃぁ”ビックリ箱”を基に効率よくなるように作られた魔法だからな。前提の”ビックリ箱”を使えたなら、それほど苦労することもねぇだろ。っつーか、そのために段階を踏んで教えたわけだしな」
「だけど、吸収させる感覚は・・・ちょっとなれない」
当然のようにケイトも変化魔法を習得。
そして、その一番の難関である変化部分の根幹に苦言を呈す。
「まぁそうだな。他で使うことがねぇ感覚だからな」
だがしかし、それは仕方ないと言える。
なにせ吸収系の魔法なんてほとんど使い道がねぇからな。
精々、生命力の小さい虫よけにライフドレインを使うぐらいで・・・後はまぁ避妊とかか? 一部では生活に必要なほどの魔法らしいが、冒険者にはそうじゃねぇ。
とはいえ、
「一応、その感覚を馴染ませれば、自分が出した魔法を自分で吸収して魔力に戻せる。対人戦でしか使えねぇ小技だが、相手の魔法や魔力障壁で消されたかのような演技をすれば、より少ない魔力消費で一方的に魔力を使わせることも出来る」
完全に使い道がねぇっつーこともない。
ただ――
「確かにおもしろい、かも・・・・・・でも、そう簡単に騙せる? 魔力反応、とかの感覚で気付かれそう・・・だけど? それに、自分の魔力を戻している、とはいえ・・・魔力の回復には違いないから、魔力酔い、にも注意しないといけないんじゃ?」
「ああ、全く持ってその通りだ。よっぽど舐められてる状況でもなけりゃ、使えて1~2回ってとこだな」
ケイトの指摘通り、いつでも、どこでも、誰相手にでも使えるような代物じゃねぇし、相手によってはそもそも通じなかったりもする。
後なにより、モンスターにはやるだけ無駄なんだよな。
アイツらの体力や魔力は人間とは比べ物にならねぇから、それについては耐久戦の考え自体が端から間違ってるって話だが。
「そこまで考えて使うのは、難しそう・・・」
「そうでもねぇよ。なぁ? ヨハン」
「僕ですか⁉」
話を振られるなんざ考えてなかったのか、一心不乱に教えたことを飲み込もうと練習していたヨハンが驚く。
「俺との模擬戦の時。”ビックリ箱”に見せかけた初級魔法だけを使って見せたお前なら、1度きりのこけおどしだって上手く使えるよな?」
「えぇ⁉ い、いきなりそんなこと言われても・・・⁉ あっ! でも‼ 先生の期待なら、応えられるように頑張ります‼」
「脅しは、よくない」
「人聞きの悪りぃ。脅してなんかねぇだろ?」
「じゃぁ・・・強要?」
「大して意味変わんねぇよな? それ」
クスクスと笑っていたケイトだったが、
「そんなことより、――」
はぁ、と一息ついた後にバッサリと話題を切り捨てる。
「私に聞きたいこと・・・って、なに? 魔法のことだって言ってたけど」
ああ、そうだったな。
パチパチと焚火の爆ぜる音が、揺れる影を躍らせる。
俺はこの後も見張りがあるが、こいつらは寝かさなきゃならねぇんだった。
「その前に。ヨハン! 罠は今持ってるか?」
「え? はい! ありますよ?」
「ちょっと貸してくれ」
「どうぞ!」
ヨハンが取り出した筒状の罠を受け取り、
「とりあえず、これを見て欲しいんだが・・・・・・」
そう言いながら、俺は罠を適当に仕掛け――
仕掛けた罠から魔力を吸収して、解除して見せた。