作品タイトル不明
忘れないうちに、落とさないうちに
「いきなり呼びつけて悪いな、2人共」
目的地の要塞都市へは、まだもう少しというところでの野営中、ヨハンとケイトに声をかけた。
「別に、大丈夫だけど・・・」
「でもなんで僕達2人なんですか?」
「ヨハンには約束してただろ? 必殺技・・・っつーにはちょっと大げさだが、使える魔法を教えてやるって」
「え? あ! そっか‼」
B級昇格のどうのこうのですっかり忘れていたようだ。
「私は一応、それを手伝ってたから・・・ってことで呼んだの?」
「それもあるにはあるんだが。お前には別に聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと?」
「ああ。魔法のことをな」
「そんなの、私よりゼネスさんの方が詳しいんじゃ・・・?」
「俺は冒険に使う魔法以外、ほとんど知らねぇよ。魔法自体は生きるために覚えただけだしな」
ケイトの率直な疑問を否定する。
そもそも俺は自分の魔力量が少ないことを自覚している。
だからこそ効率だのなんだのと色々調べはしたが、それでも。好きから来る探求心ではなく、義務感から仕方なしにっつー具合で。
そうなるとやっぱり、面倒なことはなるべく調べない。関係がなさそうなことは特に。
例えば――共鳴魔法だとかな。
「そう? まぁ・・・私にわかることだったら」
「助かる」
納得してくれたのか頷いてくれた。
ケイトはどこぞの変態ほどじゃねぇだろうが、魔法が好きで、魔法について詳しくなりたくて色々と調べまわってたらしいからな。協力してくれるのはありがたい。
だがまずは、
「ヨハン。ケイトに教えてもらったことは忘れてねぇよな?」
先に取り付けていた約束の方からだ。
「はい! ” ビックリ箱(プレゼントボックス) ”のことですよね?」
「そうだ。本命の魔法を別の魔法で隠す小技だな。お前の場合は、中級程度の魔法を初級魔法で包むって感じだが・・・もう無理なく使えるのか?」
「はい! ケイトさんに教わりながら凄く練習したので、大丈夫です!」
「嘘は、言ってない」
確認の為にケイトに目配せをすると大丈夫、という答えが返ってきた。
「なら、後はその2つの魔法を1つにするだけだな」
「2つの魔法を、1つに?」
「ケイトはもうわかってるよな? 俺がヨハンになにを教えたいか」
「 変化魔法(ヴァリアブルマジック) 、だとおもう」
「正解だ。いつからわかってた?」
「一番最初・・・話を聞いた時に。たぶんそうなんじゃないかな? くらいだったけど」
初めから、か。
やっぱ、ケイトの魔法知識についてはなかなかのもんだな。
これなら共鳴魔法についても、なにかわかるかもしれねぇ。
「それで、変化魔法――・・・って、なんですか?」
「そのままだ。変化する魔法。途中で形や効果が変わる魔法のことだな」
「途中で・・・。それって”ビックリ箱”とはなにが違うんですか? 2つの魔法を1つにって言ってましたけど」
「単純に使える魔力量が増える――っつーと、ちょっとややこしいか。勘違いしないように言うなら、お前が使えるようになった”ビックリ箱”の初級魔法は使い捨てだったが、変化魔法はそれを使い捨てずに形を変えれる分、魔力の消費効率がいい」
総使用量は同じでも、役目を終えたら消える目隠しの魔法が必要なくなるんだから、その分魔法の威力は上がるっていう、本当にただそれだけの話だ。
「それって・・・」
「ああ。俺もよく使ってたごまかしの1つだが・・・嫌だったか?」
「そんなことないです! 嬉しいです! でも・・・」
「でも?」
「僕だけ色んなことを教えてもらって、リミアに怒られないかな? って」
必殺技って言うには、期待外れだったから落胆したのかと思ったが、そんなことか。
確かにあいつには始めに魔法を教えてから、ついこの間、祈祷の触りしか教えてないが・・・まぁいいだろ。ああいうタイプは放っといても勝手に強くなる。俺の昔の仲間がそうだった。
「なら、後でお前から教えてやればいいさ。これは俺とお前の、約束だからな!」
「ッ‼ はい‼」
これも俺がよく使うごまかしの1つ、勢い。で押し流そうとするが、
「その割に・・・私もいるんだけど?」
ケイトには効果がなかった。