作品タイトル不明
情け、なし
「力を見せろって⁉ この状況で? ふざけてやがるのか⁉」
ジェイドはすぐさま俺の胸ぐらを掴んで吠える。
「なんだよそれ‼ じゃあなんだ⁉ 俺様だけじゃ2匹同時は受けきれねぇってことかよ‼ だからお前の実家の‼ 精鋭とかいう軍人を使わせるのかよ⁉ ああ⁉⁉」
あぁ、そう思われたか。
確かにそうだな。
いざこれからって時に呼び戻されて、標的を逸らされたうえで不意打ちするなら今だ‼ って言われたなら。
俺だってキレる。
いや、誰だってそうだろう。
安心して見ていられないから盾は別に用意した。
そう言われているようなもんだからな。
だが、違う。
「そうじゃねぇよ。信号を出したのはお前らに問題があったわけじゃねぇ」
別に不安も不満もなかった。
直接見ていなくても、大丈夫だろうと思えるぐらいには信用していた。その程度の実力はあると、信頼していた。
ただ――
「――俺が。助けてほしかっただけだ」
それを聞いたジェイドの目が丸くなる。
ゴルドラッセを相手に、マッターという荷物を守りながら戦うのは難しい。
ましてや、その部下100人が追加されたら、それはもう無理だ。
「それなら、さっきの言葉はおかしいのでは? ”見せてみろ”ではなく”見せてくれ”ではないでしょうか? 先生?」
リミアが悪戯っぽく笑い、
「そうね。誠意は見せて欲しいわよね? 折角だもの」
エイラがそれいいわねと続く。
「いいえ? そこは”見せてくれ”じゃありませんわ! ”見せてください”とお願いしてもらいませんと‼ ですわよね?」
キューティーが面白がって要求を上乗せしては、
「それは、幾らなんでも・・・かわいそう。頭を、下げるくらいでいい」
振られたケイトが降りる振りをしながら、乗って見せた。
「散々な言われようですね? 先生。どうするんですか?」
それを見て、楽しそうにヨハンが聞いてくる。
どうするか?
掴みかかったままだったジェイドの手を優しくほどき、
「頼む」
頭を下げる。
そうしろというのなら、
「お前らの力を――」
そうさせるのが冒険者だ。
「――見せてみろ‼」
頭を上げて偉そうに、上から目線で笑って言った。
「ッハ‼ 結局ッそれかよ‼」
けれど、ジェイドも。
それでいいと言わんばかりに笑って答えた。
「それで? 結局どうしろっていうんだよ? 魔法で攻撃するだけなら、俺様なんかはやることがねぇわけだが・・・」
「そうだな。つっても、この状況で近付く意味はねぇ」
わーわーという叫び声が聞こえてくる先には暴れまわるニアラプターとそれに翻弄される軍隊の姿が有る。
国防を司るこの国の精鋭軍人とは言えども、基本的に想定している敵は人間だ。だからこそ、モンスター相手の動きは冒険者のそれ程良くはない。
演習などで掃討任務を行うこともあるが、そういう場合も隊列や役割をきっちり決めた上で、だ。
こんないきなり、整列すら出来てない状態で戦い始めたりはしないし、なにより。最初から狂乱状態にある大型モンスターとの戦闘は想定外だろう。
それでも、ゴルドラッセを筆頭に。そんな常識を覆すような人物も見て取れる。
そいつらが指揮を執り、徐々に立て直していく様は流石としか言いようがねぇ。
放っておいてもそのうち2匹とも処理してくれるだろうが、それじゃ困る。
「いっそ。全員で魔法を撃ってみたらどうだ?」
「全員でって言われてもな。俺様の魔法は・・・」
「適性が風だったか」
「・・・そうだ」
風魔法はちょっと特殊だ。
攻撃より補助や援護の魔法が多く、単一で威力を出す方法が乏しい。
そういう性質のせいかジェイドは魔法に熱心じゃねぇ。
「お前の憧れの自由騎士も風魔法が得意だったんだが・・・」
「あれは別物だろ! ちょっとやそっとでどうにかなる次元じゃねぇよ‼」
「それでも、やる理由はあるじゃねぇか」
「やってねぇわけでもねぇよ‼」
つーことは、
「なにが使えるんだ?」
「・・・・・・エアボムとウィンドスライサーぐらいだ」
予想通りの攻撃魔法か。
エアボムはほぼ初級魔法だ。風の球を飛ばし、爆発させて衝撃を与える。
ウィンドスライサーは風を集めて対象を切り裂く魔法だが、この言い方から出せるのは1本か2本が精々ってところか。
それじゃぁ確かに、火力としては使い物にはならねぇな。
「仕方ねぇから今から教えてやるよ。こうなったのは俺の都合だしな」
「今からでどうにかなんのかよ⁉」
「それはお前次第に決まってんだろ?」
「じゃあ出来なかったら・・・」
「指くわえてそこで見てろ」
「ッ‼ 上等だ‼ 一番強い魔法を教えろ‼ 吠え面かかせてやる‼」