作品タイトル不明
十分すぎる
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「あー・・・・そろそろ限界だな」
突然の闖入者にバタバタとしていた軍隊が、規律を取り戻し、隊列を整理し、徹底した指揮の下でモンスターと対峙し始める。
これ以上時間をかけると止めを持ってかれちまう。
「準備はいいな?」
集まり、向き合っていたジェイド達に確認する。
「いいわけねぇだろ‼ っていうか、本当に好きにやっていいんだな⁉」
「構わねぇよ。最悪、不発でも周りの誰かしらがなんとかしてくれるんだ。下手に気負わずやればいい」
「もしそうなったら、アンタどうすんだよ・・・」
「笑ってやるよ」
「ふざけやがって! 見てやがれよ‼」
ブツブツと文句をたれながら、魔力を集め始める。
風魔法は一見、自由で形がなく他の魔法を支えているように見えるが。その実は逆で、形がないからこそより強く想像しなければならず、その力で他の魔法を振り回しているに過ぎない。
そういう基本的なことをこの短時間でジェイドに理解させた。
重要なのは我が儘であることだと。
後はジェイド次第だが・・・まぁ、自分のことを俺様と呼んでるなら大丈夫だろう。
「リミアとエイラも気負う必要はねぇからな。そっちは上手くいけば儲けもん程度に思っておけよ」
「そう言われるとそれはそれで癪ですね。絶対に成功させて見せましょう」
「そうね。頑張らないとね。私は特に。他にやることがないんだし・・・」
気を使って気にするなと言ったにもかかわらず、2人して意気込む。
リミアは普通に攻撃魔法に参加してからだし、エイラにも強化魔法っつー役割があるはずなんだが、それだけじゃ不満ってことなのか?
こっちの2人には祈祷を教えておいた。
祈祷は人、者、魔法を問わず対象に力を与える魔法で、呪術だとか法術だとか言われることもあるが、歴とした魔法だ。
じゃぁなんでそんな別の呼び方をされるかって話だが・・・手短に言えば、教会やその周りに祈祷ってもんを特別に見せようとしている連中がいるってことだ。
それによりどうなるか、は長くなりすぎる。
祈祷のコツは風魔法のそれとは裏腹に相手を慮ること。真摯に向き合うこと。
冒険者にとって祈祷を覚えることは利点が多いが、最大の利点は魔法の威力を強化できること。
強化魔法や融合強化でも魔法の威力は多少なりとも強化できるが、どちらかと言えば魔力の消費を抑えたり、発動までが早くなったり、補正が効いたりが主だ。
祈祷は魔法そのものに力を与えることが出来るから、大幅な強化に使える。
だから、ジェイドへ風魔法のことを教える傍ら2人にはコインを渡して、お互いに表が出るように魔力を込めて祈り合うように言っておいた。
祝福は一番簡単な祈り。つまり祈祷だ。
そして2人は問題なく祈祷を発動させた。
だから後は、強化魔法や攻撃魔法の感覚で魔法に祈るだけだと伝えたが、10分程度じゃこんなもんだろ。
「それよりも! 本当によろしいんですの?」
「なにがだ?」
「危なくはありませんの? その、あちらの方々は・・・」
「確実に、巻き込まれる」
「そうですわ! 何度も言いたくはありませんけれど、本当に。私は魔法の手加減が出来ないのですわ!」
「それでも、大丈夫・・・?」
キューティーとケイトが最終確認のように聞いてくるが、
「その程度で倒れるなら国防の要たる軍人じゃねぇってのが、あいつらの言い分だ。気にすることはねぇ。全力で行け!」
その程度で倒れるな‼ が口癖になってたゴルドラッセが率いる軍団だ。その練度は信頼するべきだろう。
それに、任務中の責任を取るのは指揮者たる軍団長ゴルドラッセだ。賠償だとかそういうことにもならねぇ。
なにより、優秀な救護班もいるしな。
「であれば、問題ありませんわ! ジェイド様? そちらの準備は大丈夫でしょうか?」
「ああ‼ 始めるぞ‼」
合図と共に、辺りの風が逆巻く。
「じゃあ、行きますね‼」
ヨハンが天に向かって影を飛ばし、昼に暗闇を作り出す。
一切の光源をいきなり奪われた奴らは慌てふためく。
そこへ、一筋の稲光が走る。
それを皮切りにしたかのように水が滴り落ち、一筋だった稲光は空を砕いたひび割れの様に枝分かれして降り注ぐ。
誰もが空を見上げる中、這い寄る赤は何者よりも輝いていた。
『テンペスト‼‼』
重なる声すらかき消すように。
大地を貫き吹き上げる灼火、逃げ惑う諸共を突き刺す紫電、癒しの雨は煮え滾り、燃え爆ぜる大気が生命を一薙ぎにした。