作品タイトル不明
熱電波
「その、提案・・・なんだけど」
しばらく考え込んでいたケイトが答えを出したようだ。
「どうした?」
「ニアラプターに止めを刺す役を代わってほしくて」
「まぁ、無理にとは言わねぇが。代りは誰にするんだ?」
「それは・・・・・・」
ケイトは名前を言う代わりに視線を送る。
「私、ですの?」
「・・・うん」
視線を受けたキューティーが確認がてら聞き返す。
「どうしてもというのなら構いませんが、なにか理由がありまして?」
「私達が逃げる直前。あの時、キューティーがなにかしようとしてたから。あれって、魔法を使うつもりだったじゃないかなって」
「ええ、まぁ。そのつもりでしたけど・・・それだけですの?」
「うん。だって、今のうちに色んなことを試した方がいいんじゃないかと思って・・・」
そういいながら今度は俺に視線を向けるケイト。
「俺から言うべきことなんざ特にはねぇけどな。大丈夫なのか?」
「そうじゃないんだけど。そういう意味なら大丈夫。たぶん。キューティーの魔力量は多いから」
そうじゃないってのはどういうことなのかわからねぇが、今はいい。
「本人はどうなんだ? 出来ると思うか?」
「可能か不可能かときかれたなら、可能ですわ! と言わせていただきますけれど・・・」
「なら後はお前ら次第だろ。パーティーとしてはどうなんだ?」
「どうでもいい。俺様が倒せるんじゃないからな。誰が倒しても同じだろ」
「僕もいいと思いますけど?」
「私も、それ自体は構わないんだけど。ケイト? あなたはどうするの?」
男2人は自分の立ち位置が変わるわけでもなしと気にせず、ただしエイラがケイトに聞く。
「私は拘束役をするつもり」
「待って。それじゃぁ――‼」
「うん、わかってる。だから、キューティーの補助をリミアちゃんにやって欲しいの」
「私、でしょうか⁉」
2人だけで分かり合った後に、唐突に名前を出されたリミアが慌てふためく。
拘束役になると思っていた自身のことで一杯だったのか、と止め役じゃなくなったことで話に興味がなかったのかはわからねぇが、会話の外にいたリミアにはあまりにも急な展開だったようだ。
「あの、なぜ私なのでしょう? ケイトさんやエイラさんの方がキューティーさんのことは詳しいはずですよね? それとも、私が拘束魔法を得意としていないからでしょうか?」
「ううん。そうじゃなくて・・・あっ⁉ でも、どうしよう?」
ケイトはリミアになにかを言おうとして、しかし思い出しようにキューティーへ振り向く。
「構いません。私自ら説明して差し上げますわ!」
キューティーが一歩前に出て話す。
「私は、恥ずかしい話なのですが。魔法があまり得意ではありませんの! なんというのでしょうか? こう、手加減が出来ないのですわ‼ なので、威力はあるのですけれど制御が出来ず、魔力も注ぎすぎてしまうため、魔法を放った後は動けなくなってしまいますの」
「あぁでも! 魔力量は多いのよ? だから、威力だけなら本当に学年1だったわ。そこだけはケイトよりも評価が高かったくらい。ね?」
「それは、本当。もったいないぐらい」
取り繕い、励ますように2人が続けるが、
「ですから、そう言われなくて済むように! 私は剣術の鍛錬に励んだのですわ‼ 運の良いことに私はそちらでも才能が有りましたので、高い魔力量も魔法盾で活かすことにしたのですわ‼」
キューティーとしてはそれも気に入らないのか、被せるように弁明する。
「それならなぜ、今さら魔法を?」
「それは・・・あの時。ニアラプターとの戦闘で自分に、不甲斐無さを感じたからですわ‼ 無力だと思ったからですわ‼ 役に立たない自分になど、嫌気が差してしまうのですわ‼」
「で、ケイトがこんなことを言い出したのは、それを後ろから見てて気付いたからね。私達、結構付き合い長いもの」
地団駄を踏むようなキューティーの醜態に、エイラは肩をすくめるようにして笑う。
「だとしても、私である必要はないのでは?」
「私とキューティーは相性がいいから。エイラもそう」
「相性がいいなら尚更、私でなくても・・・?」
頭の疑問符が取れないリミアに、ケイトがううんと首を振る。
「今回は、逆。キューティーの魔法を制御するために、上手く力を抑えて欲しいの。私達にはそれが出来ない。それに、魔力の操作は私達よりリミアちゃんの方が得意だと思うから」
「そう言っていただけるのは嬉しいですが・・・私はほとんど水の魔法しか使えませんよ? ケイトさんの方が色々な属性が使えるのでは? 魔力操作だって・・・」
「私が使えるのは雷、火、風、土。一番が雷でそれ以外は同じぐらい。使える魔法もそんなに多くない。キューティーが使える魔法は火と光だけだから・・・」
「私も回復魔法や強化魔法以外だと、まともなのって光魔法くらいしか使えないのよね。ギフトのせいかしら?」
「それに、なにかあっても大丈夫。いざという時は・・・」
なにやら言いながらチラチラこっちを見てやがる。
あぁ。さっきのそうじゃないってのは、なにかあった時のケツ拭き役ってことか。
確かに。そういう役回りだけどな。
「今しか、出来ないことだから」
念を押すようにそう言うケイトにお願いされて、リミアが受け入れ。夜が更けるごとに、作戦はどんどんと決まっていった。