作品タイトル不明
熱、視線
言ってしまったからには、その責任も取らなきゃならねぇわけだが、
「まぁ冒険者にもし、なんてもんはねぇと言ってきたのも事実だ。だったら当然、2匹同時に相手する場合の作戦ぐらいあるべきなんだが・・・その前に、だ」
一番重要なことがまだ解決してねぇ。
「ニアラプターをどうやって倒すか。まずはそこを決めとくべきだな」
当たり前のこと過ぎるが、話を前に進めるためには、なぜかまだ明確な決着がついてねぇこの話をしなくちゃならねぇ。
「1匹なら倒せる。それは間違いねぇ。だが、どうやって倒すのか? それをまだ聞いてねぇ。リミアの言った通り。例え休んでろと言われても、仲間の死にそうな声が聞こえてきたら寝てなんざいられねぇはずだ。そして、今日と同じやり方をすれば、やはり同じように乱入されることになる」
そうなる理由は単純に時間をかけすぎているから。
「偶然2匹を同時に相手することになったなら不運で済むが、最初からそうなるとわかってる状況で戦うのはただのバカだ。無駄なリスクを背負う必要はねぇんだからな」
「そうね。どうしても同時討伐をしたいのなら仕方がないのかもしれないけど、私達はそうじゃないんだし・・・」
「ああ。それで、原因はわかってるよな?」
「私のせいでしょう? 先生がいつも言っていた火力不足」
エイラの相槌とリミアの自責が続く。
「そうだな。気にするな・・・と言いたいところだが、止め役が止めを刺せなきゃ作戦も戦術も意味がなくなる。だから、今回はニアラプターに合わせて止め役を変える必要がある」
一応、リミアの魔法が弱いということではないと断っておく。
問題は、ニアラプターの体表、外皮が分厚く、硬く、魔法で突き通すのが難しいということだ。
「じゃ、じゃぁ物理的な手段で倒すってこと?」
「それは余計に難しいですわね。不甲斐無くなってしまいますのであまり言いたくはありませんが、私の細剣では首どころか指も落とせそうにありませんわ」
「じゃあどうするんだよ⁉ 今の俺様は盾しか持ってねぇんだぞ? 止めを刺したくてもなにも出来やしねぇ‼」
「そうなるとやっぱり魔法になりますね。だったら、リミアの代わりにケイトさんが止めを刺せばいいんじゃないですか? それなら二人の役割を入れ替えるだけで済みますし」
「わ、私が⁉」
「私はそれで構いません。拘束系統の魔法は得意ではないですが・・・」
「私も、それでいいと思うけれど。ゼネスさんはどうかしら?」
答え合わせのようにエイラが話を振る。
正直に物理じゃ無理だと答えたキューティーも、端から自分には無理だぞと釘を圧すジェイドも偉いもんだ。出来ないと口に出すのは怖いことだからな。
ケイトが自分から名乗り出れないだろうと代わりに提案したヨハン、悔しいだろうに文句も言わず承諾するリミア、全員の意見を待ってまとめようとするエイラ。パーティーらしくなってきたんじゃねぇか?
ケイトにしても、無理だと突っぱねて、役目を放棄しようとしたりはしてねぇしな。
「いいんじゃねぇか? 今回重要なのは威力ってよりは狙いと相性だしな」
「ね、狙いと相性・・・?」
「そうだ。ニアラプターの外皮を貫くのが無理だってのはもう試してわかってるんだ。だから、次は別の場所を狙う。そういう時の相場は決まって体内だ」
「「「体内?」」」
「ああ。ニアラプターの場合は、あのデカい口だな」
どれだけ硬い体表を持とうが、内側からなら関係ない。
「そこで重要になるのが属性の相性だ」
「属性の相性・・・ということは、私の水では相性が悪いと?」
「相手によって変わるのが相性だ。今回はたまたまそうだったってだけだ。同じ水系統でも、毒が使えりゃそれでもよかった」
「毒ですか。確かにそういうのは私には無理ですね」
「動物型のモンスターには悉く有効だから、覚えておくと便利だぞ?」
「考えておきます」
かなりインチキ臭いが最悪、住処の近くにある水場に毒を巻くだけで終わる依頼もある。生態系を狂わせる可能性があるせいで推奨はされねぇけどな。
「私の雷だと、なにがいいの?」
「熱だ。体内のあらゆる器官は熱に弱い。放火の罪が重い理由だな。雷なら炎の魔法と比べて速度も確保しやすいのも利点になるな。逆に、雷は炎より制御は効きにくいし熱の効果も薄い分、正確性とタイミングが肝だ」
「正確性ってことは、狙う場所が重要?」
「そうなる。口の中ってよりは、喉奥にぶち込む感じだな。炎魔法ならかなり大雑把でもいいんだけどな」
「どうして?」
「炎はなにかを燃やせば煙が上がるだろ? 煙も熱を持ってるからな。そっちを大量に吸わせるだけでもいいんだよ。それで喉から中が爛れれば、口は開きっぱなしになるし、タイミングも気にする必要がなくなるってわけだ」
「そう・・・」
ケイトは一瞬だけ視線を外してから、俯いて考え始めた。
もしかすると、炎の魔法を試すのかもしれねぇな。
視線を一瞬キューティーに向けたのも、なにか協力して欲しいことがあるからとか、そういうことか?