軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side―エイラ

焦ってるわね。

追いかけるジェイドの背中を見て、感じる。

そういう時って大体、つまらないことでミスをするのよね。

なにか起きたりしないように、私がしっかり見張ってなきゃ!

それこそ、蟻の時みたいになるのは嫌だもの。

でも・・・どうして今になって焦ってるのかしら?

やっぱり今回の試験のせい?

けど、それならもっと早くから意識しててもおかしくないのよね。

なにかに気付いた?

それともなにかを思い出したのかしら?

今日までのことを。ゆっくりと、なぞるように思い出してみる。

そうして引っ掛かるのは、やはりB級冒険者という言葉。

一人前になるということの意味。

「・・・ああ。気付いちゃったのね」

遅れて零れていく言葉。ジェイドの考えそうなことに心当たりがあった。

どうせ。ゼネスさんに認めさせたいとか、そういうことなんでしょうけど。

一人前になってしまったら、もう一緒に居てはもらえない。

だから、認めてもらえなくなる。

そういうことね。

それに、さっきの視線。

ヨハンにも思うところがありそうね。

私が声をかけるまで、ボーっとしているようで、視線だけはヨハンに釘付けになってたのよね。

なにか引け目でも感じてるのかしら?

確かにヨハンはゼネスさんに、私達より早くから教えてもらっているし、蟻の時も最後まで連れて行ってもらってた。

この間だって、ケイトを挟んでの間接的な方法とはいえ、1人だけ特別に魔法を教えてもらってたっけ。

それでかしら? 負けてられないとか思ったってこと?

まったく・・・本っ当に男って面倒くさいわね。

そのくらい直接言えばいいのに。

ヨハンにだって、ゼネスさんにだって。

思ってることを直接伝えれば、もっと関係だって変わるでしょうに。

ま、あのジェイドがそんなこと出来るわけないって、わかってるけど・・・。

昔に比べて、というとまた語弊があるけれど。

学園時代と比べれば、最近のジェイドは角が取れたというか、高慢さが削れた。

その理由は、蟻の時やダンジョンで見たゼネスさんの姿だと思っている。

間近で見てもなにをやっているのかわからない曲芸のような強さを、平然と笑顔さえ見せながら披露して。

かと思えば、絶対に敵わないであろう相手にさえ、歯を食いしばり、なお笑って戦う強さも見せた。

普段はそれほど大したように感じないのに、ここぞという時の迫力や風格は、皇都にいる他の誰よりも強烈だった。それこそ、皇族なんかより、ずっと。

それに魅せられてしまうのは無理ないわ。

学園時代は無駄に持ち上げられてばかりで、自分より上なんてものはなくて、目標を持とうにも持ちようがなかったんだもの。

そんな意固地になってたジェイドが、今ではもっと昔。小さな子供の頃みたいに、誰かの背中を追いかけて、認めてもらおうだなんて。可愛くなったものよね。

私と出会ったころなんて、臆病さも抜けきってなかったのに。

使用人の後ろに半分隠れて、でも少しだけ偉そうに話しかけてきた時のことを思い出して、笑みがこぼれる。

身体ばっかり大きくなったと思っていたけど、意外とちゃんと成長していたのね。でも、やっぱりあんまり変わってないかしら?

まぁ、仕方ない。私がシャンとしてあげないとね。

追いすがる傍ら、私は気持ちを締め直す。

出来ることを1つでも多く。

ゼネスさんからも、そう言われていたんだもの。

『私が指示を出すの・・・?』

『可能なら、な』

『それってリーダーの仕事じゃないかしら?』

『そうでもねぇよ。リーダーはまとめ役、コマンダーとは違う。それに、あいつは戦闘中一番前にいるだろ? 背中に目がついてるわけじゃねぇんだ。全体の把握なんて、そう簡単には出来ねぇ』

『それを言うなら私だって一番後ろじゃないんだけど・・・』

『つっても、他に任せらるか?』

『・・・・・・それはちょっと・・・』

『だろ? ケイトは今でも手一杯だ。あいつは考えることが多すぎる』

『考えすぎなだけよ。悪いことばかりじゃないけど』

『まぁな。逆にキューティーは考えなさすぎだ』

『なんであれでうまくいくのかしらね? 羨ましくもあるわ』

『勘がいいんだろう。あいつは考えるんじゃなく感じるタイプだ。なろうと思ってもなれるもんじゃねぇぞ』

『言われなくても、よくわかってるつもりよ』

『後の2人は・・・』

『出来る出来ないじゃなく、やらせたくないわね。なにかあった時に責任を取らせるわけにはいかないもの』

『ジェイドの奴が指示を聞けるかって問題もあるしな。距離的にも、心情的にも』

『そうね。そう考えると、私しかいないのよね・・・』

『他にも理由はあるが、大体そんな感じだ』

『一応。その他にも、っていうのを聞いておこうかしら?』

『俺と同じポジション・・・っていやぁわかるか?』

『なにかが出来ないとクビになる・・・ってことね』

『そういうことだ。俺はそれでもクビになったがな』

『ワンダーゴーレムと1対1で戦って勝つ人をクビにする方がおかしいと思うのだけど・・・?』

『あれはまぐれだ。2度とやらねぇし、やりたくねぇよ。お前の場合は魔力にも余裕があるし、大丈夫だとは思うがな』

『幼馴染、だったかしら?』

『クライフとはな。学園時代からの付き合いだった。”これ以上無理して怪我をするところなんて見たくない”とか言われんだぜ? 断れるかよ』

『それは・・・・・・そうね。泣きたくなるわね』

『だろ? そのためには、1つでも出来ることを増やすしかねぇ』

『それじゃ、魔法の練習に付き合ってもらえるかしら? もっと効率的にしたいのだけど』

『そういうのは慣れだって、言わなかったか?』

『そのための練習、でしょ? それとも、さっきの話は嘘だったのかしら?』

『ったく、仕方ねぇな。次の薪をくべるまでだからな』