軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

転換

「書類の提出はギルドでも出来るように口利きしておく。準備はいいな? 始め‼」

火蓋を切って落とすかのように、両者の間を手刀で切り裂く。

「よぉおし‼ 誰か‼ 依頼はねぇか⁉ なんでもいいぞ‼」

男は周囲に声を張り上げながら連れの女へと近付くが、

「アタシはギルドに行ってアンタの代わりに試験で必要な書類を集めたりしとくよ。それぐらいはいいんだろ?」

女はシッシと男を追い払いながら聞く。

「構わねぇよ。あいつらの分は俺が用意するしな」

「大変だね? アンタも」

「そっちほどじゃねぇよ」

「ははっ! そうかもしれないね!」

名前も知らねぇ他人の女を連れて歩く趣味はねぇが、ギルドまでは送ったほうがいいだろうと、そのまま2人で歩き出す。

ジェイド達の方はあの男のように大手を振ったりといったアクションはなかった。

だが、全員で集まり、なにかしら相談はしているようで。

離れゆく俺にチラリとも目もくれない辺り、どうやら期待はしてもよさそうだ。そう思った。

ギルドまで女を送った後。

「―――っつーわけで、対抗戦式B級昇格試験を行ってる。よほどのことでもなけりゃぁC級以下の依頼については、ギルドでは受けねぇようにしてやって欲くれないか?」

「あい。そういうことなら、わかったよ。まぁ、そういっても・・・元々そんな依頼もないけどねぇ」

カウンターで婆さんに事情を説明して協力を要請した。

「それで、森への侵入許可なんだが・・・」

「それなんだけどね? ちょっと難しいかもしれないよ?」

「どういうことだ?」

「最近この辺りにはゴロツキがうろついているらしくてね? そいつらが森の中にいるんじゃないかって言われてるんだよ。そのせいで軍人さん達が森への出入りを制限しててね」

ゴロツキってのはたぶん、皇都の泥棒共だよな? 匿うには打って付けと言えるかもしれねぇが・・・それにしても。森の中に、ねぇ? 随分と気合が入ってるじゃねぇか?

荊棘の庭園と呼ばれているこの辺りには、荊の森が広がっている。

”荊の森”と聞くと薔薇の茎が絡まっているような絵が浮かぶかもしれねぇが、ここでいう”荊の森”とは。幹や枝から棘を生やした木々が群生した、そのままの意味での森だ。まぁ、実際には鉄みたいに硬い薔薇も生えてるし、その茎が絡まってる場所もあるんだけどな。

ただ、ここに生えている木は根まで鋭い棘が生えている木で。ガルバリオ皇国内でも、ここにしか生息してねぇ変わった木なんだが・・・その性質上、他の生物を寄せ付けない。

人はもちろん、モンスターもだ。

そのせいで、荊棘の庭園と呼ばれるこの地域で活動できるモンスターは強力な個体が多い。

なにせ、鋭い棘に負けねぇ体表か、そんなモンスターを食料に出来る奴しか生きられねぇんだからな。

そんな森の中に拠点とは、かなりの手練れなのか?

だとしたらあいつらが入るのは・・・つっても、許可は取るって言っちまったしな。

「そいつらがどこの所属か、わからねぇか?」

荊棘の庭園は皇都とグラーニン辺境伯領の丁度間に位置する王領だが、5つの町の内の3つにグラーニン辺境伯家は命令権を持っている。

それが、今俺達がいる鉄の町とグラーニン辺境伯領に近い、ここより北にある棘の町と東にある枝の町。

このうちのいずれかであれば、最悪俺の名前でどうにかできるはずだが・・・。

残りの2つ。王都に近い南にある花の町と西にある茎の町だった場合は、ちょっとばっか面倒くせぇかもしれねぇな。

こっちの2つは皇都軍が命令権を握ってる。

皇都での泥棒騒ぎが軍内の裏切者主導だったんなら、俺の嘘報告も気付いてるだろうし、許可を出してはくれねぇだろう。僅かばかりでもいいからと邪魔をしてぇと思うはず。

どっちだ・・・――? と、賭けに出ている俺の心など知らず。

「それがねぇ・・・? どうも要塞の方からいらっしゃってる軍人さん達みたいでねぇ?」

まさかの事実が飛び出した。